米トイザらス破綻、日本は?
米国トイザらスが経営破たん
9月18日米国トイザらスが連邦破産法11条の適用を申請したというニュースが流れた。負債総額は52億ドル(5800億円)とのこと。3歳の孫を持つ身としては、近所のトイザらスは大丈夫かと頭をよぎり、偵察に行ってみたが、それなりに客もいて子供たちの声が飛び交い、至って普通であった。
ニュースによれば、ネット通販大手のアマゾンの攻勢にあい、顧客を奪われたとのこと。日本でもECサイトは大盛り上がり、なかでもアマゾンの奮闘ぶりは目を引いている。やっぱり、大丈夫なのかとの思いはぬぐえない。
と、ここで、おじいちゃんは経営コンサルタントであったことを思い出し、ロジカルに思いを巡らすことにした。
米国トイザらスの近況を整理 見えてくる戦略
まずは、米国トイザらスの近況を整理することにする。
1. 近年の財務状況等
2013年から5年連続前年割れ
直近の3か年は、営業利益は黒字計上しているものの、経常損益は赤字
EBITDA(注)が一貫して高い値を示し、2006年以降は支払利息が4億ドル/年以上
2. 米国の小売業売上
2015年売上高は、4,697,134百万ドルと前年比1.4%増を計上するも、4年連続前年伸び率を下回る
オンライン・カタログ販売は11.3%と高い伸びを示すが、ディスカウントストアは9年連続前年割れ、デパートも4年連続前年割れ
玩具業界2016年の売上は5%の増
3. アマゾンとの関係
2000年にネット通販契約
2008年10年契約の途中で解消(トイザらスの商品提供が進まないことを理由に、アマゾンは、他の業者をECサイトに招聘、トイザらスはアマゾンを提訴)
ここからトイザらスの市場戦略が透けて見えてくる。トイザらスは、おもちゃの量販店として大規模店舗の拡充路線をひた走ってきた。現在の店舗数は、全米で812店舗、ライセンス店も257店舗を数える。出店の一方で、不採算店の撤退も行っており、それに伴う、除却や利息の支払の負担が、EBITDA値を引き上げてきた。強気の拡大戦略の裏側を財務状況が語っている。
特に、2006年にはLBOによってBrainなどに買収された後は、年間4億ドルもの支払利息がさらに財務を圧迫する。起死回生のはずの、アマゾンとの提携は逆に息の根を止めることになる。拡大戦略は品ぞろえを圧迫した。アマゾンが他社との契約に至るのももっともというわけだ。
日本トイザらスの可能性と期待
日本はどうだろうか、財務諸表を見てみよう、と思ったら日本トイザらスは、2010年に米トイザらスインクの100%子会社になり上場廃止、2017年4月にトイザらス・アジアの傘下に入っている。ということは、今、財務諸表を明かす義務はないのだ。
仕方がないので、最後の財務諸表を見てみると、営業利益+、経常利益は△(玩具業界売上は、3年連続8000億円越え)、米トイザらスと同じような状況であった。2008年の店舗数167、2017年の店舗数は160、新規出店は25、一方で、撤退が18であった。やはり、出店と撤退、除却損と支払利息…。子どもたちに夢をもたらす、陰で苦労している大人たち。トイザらスは、家庭の縮図のようだ。いや違う、我々の家庭がトイザらスの縮図なのだ。
しかし、光もある。日本トイザらスは、ECサイトを展開している。日本のEコマース業界は順調に発展している、アマゾンが筆頭ではあるが、上位20社でのシェアが40%、日本ではアマゾンに嫌われたとしてもいくらでも生き残る道はあるのだ。
といいながらも、株式の100%を保有する親会社の行く末がどうなるのかは、当然、日本トイザらスの行く先が大きな影響を受けることは避けられないだろう。
日本の小売業界についても概観してみよう、2016年は140兆円、前年に比べ0.6%減で2年連続前年割れ、一方で、ネット通販事業は15兆円、前年比9.9%増と堅調である。小売業全体の伸び悩みとネット通販の順調な伸びは、日米ともに同様な傾向となっていて、我が国のEC化率も伸び続けている。
実店舗でウインドウショッピング、ECサイトで注文のスタイルが拡大するだろう。しかし、先に述べたように我が国のEC業界は、アメリカよりずーっと参加者が多い(寡占化が進んでいない)ので、健全に発展する可能性は高いのではないか。
それにしても、宅急便で送られてくるおもちゃをおとなしく部屋で待つ子どもを見るより、色とりどりのおもちゃ売り場を走り回る子供や、時には床にあおむけで駄々をこねる子供を見る方がやっぱりいい。
注)
EBITDA:
純利益+法人税+減価償却費のこと。(会計上の利益である)純利益に関係する税率や借入金利、減価償却費の扱いは国によって異なるため、そのような違いを最小限に抑えた上で、各企業の収益を比較する際の指標。
拡大路線を取るためには設備投資が必要だが、そのためには資金が必要となり「支払い利息」が増加したり、「減価償却費」も増大する。EBITIDAは純利益に対してそれらの数字を足し戻して算出するため、拡大路線を取るとEBITIDAが大きくなる。
(岡部 眞明/)
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