本当は「出世したくない」と思っているのかもしれない

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コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第33回目は「間違った目標設定と正しい目標設定の違いとは(3)」についてです。

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自分が立てた目標を、なかなか達成できない。がんばっているのにうまくいかない。やればやるほど空回りする。

この悩みの理由は目標設定の方法が間違っているからです。

3回にわたりご紹介してきましたが、一番根っこの部分をお伝えしましょう。

頑張っても達成できていないという目標は、実は、自分の潜在意識(無意識)の深い部分では、「その目標を達成してしまうと困る」と思っているのです。あなたの心では、本当は達成したくないのです。

「いや、それは絶対ない!達成して、豊かになりたいのは間違いがない!」

このように思ったのは、あなただけではありません。私もこのことを学んだときは、「いや、達成したくないなんてことは絶対にない!」と思いましたから、あなたの憤りはよくわかります。ではわかりやく説明していきましょう。

「本当は目標達成したくない」が意味することとは?

私が営業をしていたころ、「売れる営業になる」という目標を常に持っていました。NLP心理学のコミュニケーションスキルを学んでから、いきなり全国1位になりました。その後、上位グループに入れることも多くなりましたが安定しませんでした。

いつもなら自分が上位になれるような数字を叩き出したのに、会社全体がそれ以上売れてしまって平凡な数字になってしまったり、いつも上位の人がみんな調子を崩しているというチャンスに、自分も売れなかったりということが多かったのです。

もちろん、前々回の記事でも紹介しましたが、これは主体的な目標ではありません。自分だけでコントロールできる要素以外について考えてもしょうがないわけです。

「個人的な数字を追いかけることが、心の平安を保てる」ということを、当時は知りませんでした。

ですが、目標設定の技術を学んで、自分が目標を達成できない根本的な問題があることがわかりました。

目標を達成できない理由の一つ、「その目標を達成してしまうと困る」という状態をNLP心理学では、「二次利得」と呼びます。

二次利得とは?

「売れる営業になりたい」「お金持ちになりたい」

当時私が、このように願い続けていたのに、なぜ達成できなかったのでしょうか?

前回お伝えしたとおり、潜在意識は、五感を使ってイメージしたものは、イメージに近づけるようどんどん引き寄せてくれます。このことは知っていたので、売れる営業になったときの状態を常にイメージしていました。

また、「お金持ちになったら、車を買って、家を買って、海外旅行に行こう」と、カタログやイメージ写真を集めたりもしていました。でも、いずれもなかなか達成しませんでした。

それらの理由は、NLP心理学を学び目標設定をした際に明らかになりました。

「目標を達成していないことで得ている、肯定的な要素は何ですか?何が止めていますか?」

こんな質問をされて驚きました。

「いや、トップ営業にならないことで、得ていることなんてないですよ。トップになったら尊敬されるし、昇進できるし、給料も上がるし、生活が豊かになります。売れてない状態で得られているプラスなんて、何一つないですよ。ですから止めているものもないですよ」

こんなふうに返事をして、それ以上深く考えることはできませんでした。

そこで講師の方が質問を続けました。

「売れてしまったら、失うもの、不利益になることは一つもないですか?」

「うーん、そう言われたら、ないこともないです」

「どんなことですか?」

「売れるようになって昇進したら責任が増えます。上司みたいに土日出勤もしなきゃいけない。上司の中には正月以外は休んだことがないという人もいます。管理職は、プライベートはほとんど犠牲にしてるんです。売れないみんなで上司の悪口を言いながら飲むのが恒例行事だけど、今度言われる側になってしまうという怖れもあります」

責任が増える。休日返上が増える、ストレスがたまる。身体も壊すかもしれない。悪口を言われるかもしれない…。

このように、突き詰めて考えてみると目標を達成した後の不利益が出てきました。

つまり、「昇進することで責任を増やさない。休日出勤をしない。ストレスをためない。身体を壊さない。悪口を言われない」という利益を、目標を達成しないことで得ていたのです。

表面的には見えない利得ですが、このように隠れている利益のことを、「二次利得」と呼びます。

「お金持ちになりたい!」と願い続けていても、いつもお金に困っている人がいます。それは、本当はお金持ちになりたくないのです。なぜなら、お金持ちになったら、不利益があるからです。

「お金があると、いろいろと考える事が増えてめんどうくさい」「お金持ちは性格が悪いと陰口を言われる」「嫉妬される」「金の亡者と言われる」などなど。

すると、お金持ちにならないことで、次のような二次利得を得ています。

「お金のことを考えなくてもいい」「悪口を言われない」「嫉妬されない」「金の亡者と言われない」などです。

あなたが達成したことを達成できないのなら、その裏側にある二次利得を明らかにしましょう。

二次利得を維持する

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二次利得を明らかにしたら、次の段階です。

目標を達成したあとに、二次利得をどうやって維持できるかを考えます。

「売れる営業になって昇進しても、責任が増えないようにする。休日出勤をしない。身体を壊すまで仕事をしない。上司になっても悪口を言われないようにする」

このような維持をできるかどうか考えたところ、いくつかの案を思いつきました。

昇進するときには、休日出勤については上司に明確に嫌だということを伝える。責任についても、どこまでやれるかを話し合う。身体を壊すほどのストレスが高い仕事は可能な限り引き受けない。悪口を言われないように、コミュニケーションを欠かさないなどです。

こうして、「売れる営業になってもいい(昇進してもいい)」ということを、深い部分で受け入れたところ、すぐに翌月に結果が出ました。

全国で1位になったのです!「お客様のところに行けば売れてしまう」という感覚でした。

潜在意識の深い部分と同意ができると、潜在意識は望み通りの現実を用意してくれるのです。

目標を達成して不幸になる人は、周囲との調和を考えていない

目標を立てる上で、もう一つ大事なことがあります。

「周囲との調和を考える」ということです。

私の上司たちは、世代的にも家庭をないがしろにしている人が多かったです。

休みをほとんど返上して、家のことはほったらかし。

こうした状態だと、いくら成功してお金を家に入れたとしても、家庭がうまくいくことはないでしょう。

「家族にいい暮らしをさせたい。妻の喜ぶ顔が見たい。子供に充分な教育を受けさせたい」

そもそも、こういった動機から、「仕事をがんばろう!」と思ったはず、ですがいつしかその動機を忘れて、仕事のみに没頭してしまい、家庭が崩壊するという例は、枚挙にいとまがありません。

そこで、「しばらくは収入を上げるために、一緒にいる時間がとても少なくなる。だけど、1年で昇進するから、そこまでは目をつぶってくれないか」などと、パートナ−としっかり合意をしておくことをおすすめします。

周囲との調和を考えておくことが、目標設定ではとても大事なのです。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)

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「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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