マンション管理をどう見抜く?購入前の確認と管理会社の選び方
マンション購入前には修繕積立金額の妥当性や値上げリスクを確認
家は買って終わりではありません。購入後に、建物をしっかり管理していくことで快適な暮らしを実現でき、資産価値を維持・向上できます。
特にマンションを購入する前には、管理の要ともいえる大規模修繕工事が本当に行える状況かどうかをチェックしましょう。具体的には、修繕積立金の「金額の妥当性」と「値上げリスク」です。
積立金額の妥当性として参考になるのは、国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」があります。この中で、マンションの階数や延べ床面積に応じた標準的な積立金の㎡単価が示されています。
例えば、12階建て・延床面積9,000㎡のマンションで、専有床面積が70㎡の住戸の場合、修繕積立金の目安は「14,140円/月」となります。多くの事例が収まる価格帯としては、「9,800~18,550円/月」ということもわかります。
実際のマンションごとに事情は異なるため、この目安が絶対正しいというわけではありません。しかし、まずは大まかに目安をチェックし、安すぎたり高すぎたりする場合には不動産会社にその理由を聞いてみましょう。
積立金が将来値上がりする計画がないか確認。一時金の徴収にも注意
積立金の額が妥当であっても、徴収金額が将来値上がりするリスクも考えなければなりません。
まず、修繕金の積み立て方式には、毎月同額積立する「均等積立」と、年数が経過するにつれ毎月の積立金額があがる「段階増額積立」の2種類があります。多くの場合で、「段階増額積立」が採用されています。いつ・いくら増額される予定であるか確認し、無理のない生活ができるか確認しましょう。
また、均等積立であっても、長期修繕計画が見直され、毎月の徴収額が上がる可能性があります。中古マンションを購入する場合には、仲介業者に最新の長期修繕計画を取り寄せてもらい、この計画が少なくとも5年以内に作られているか(見直されているか)チェックしましょう。
さらに、購入時にまとまった額の「修繕積立基金」を徴収したり、修繕時に一時金を徴収したり、金融機関から借り入れたりすることを前提とした積立方式を採用している場合もあります。
将来の値上げや一時的な積立金の徴収があるマンションは、計画通りに値上げできず大規模修繕が延期される事例もあります。
今や2割以上のマンションが積立金不足に陥っているという国交省の調査結果もあり、計画通りに修繕できるかは積立額が極めて重要です。その意味では、積立金の妥当性や値上げリスクの他にも、滞納の有無や額を確かめることも忘れてはなりません。
管理会社は、会社名や規模だけで選ばない。担当者の質や不断の見直しが重要
マンションの共用部分は、一般的に外部の管理会社が管理しています。購入後、管理の質が悪いと思えば、(マンション所有者で構成される)管理組合の合意があれば、いつでも管理会社を変えられます。
とはいうものの、管理会社の提案書や見積書をみても、大きな差がない場合や、提案内容が似たり寄ったりで違いがよくわからないこともあります。知名度や会社の規模だけで判断していいものでもありません。
管理業務は、担当者の経験や担当物件数などによってサービス品質が大きく変わります。まずは、実際の担当者の経験が十分あるか、できれば「管理業務主任者」や「マンション管理士」の資格を持ち、担当物件数が10以下であることが望ましいと考えられます。
また、能力が低い場合は担当者を変更してもらえるような約束をあらかじめ管理会社側と取り付けておけば安心です。“ハズレ”の担当者にあたっても、他の担当者に変えることで状況改善が見込めるためです。
さらに、建物管理の要である「長期修繕計画」を1~5年を目安にきちんと見直す会社を選びましょう。一度立てた計画をそのまま放置するケースもあるため、要注意です。加えて、法改正や、国交省の定める「標準管理規約」が改訂された際に、直ちにその報告と提案を申し入れる会社であるかのチェックも重要です。
例えば、共用部分の著しい変更を伴わない場合の大規模修繕については、区分所有法改正によって特別決議(3/4以上の賛成)ではなく普通決議(1/2以上の賛成)でよいこととなり、標準管理規約もそのように変更されています。
1人で1/4超の住戸面積を持つ所有者がいるなど、議決権に偏りがあるマンションの場合、少人数の意向によって必要な大規模修繕工事が円滑に進まない事例がある一方、一度決めた管理規約をそのまま放置しているマンションもあります。機動的で確実な修繕実施のためにも、不断の見直しは極めて重要なのです。
管理会社は組合のサポート役に過ぎない。所有者全員の当事者意識がカギ
管理会社の選び方としては、その他にも多くのチェックポイントがあります。しかしそれより大事なのは、所有者自身が積極的に管理に関与することです。
管理会社は、あくまでも管理組合のサポート役に過ぎません。主役は管理組合です。実務を担うのが管理会社、それを監督するのが組合ともいえます。
管理組合の役員は所有者が交代で就任し、その任期はせいぜい1~2年程度です。しかも、マンションの管理業務について専門知識を必ずしも持っておらず、管理会社に業務を丸投げしたくなるのも分かります。総会に参加せず、委任状を提出する所有者も少なくないかもしれません。
しかし、管理会社がそれを見透かせば、うまく組合を丸め込んで、高コストで低品質なサービスを提供したり、不要な工事を高い費用をかけて行ったりする恐れもあります。
管理会社変更など重要な変更の時には、課題の整理など、初期段階からマンション住人全員にアンケート用紙を配るなど全員参加で決め、所有者全員が当事者意識を持ち、全体で合意形成を図ることが望ましいでしょう。
現状の問題点や会社変更の理由などを共有すれば、納得感が生まれマンションの連帯感も増します。住人全員の管理意識の向上につながり、ひいてはマンションの資産価値も向上するでしょう。
(加藤 豊/不動産コンサルタント)
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