「あの人デキる…」と言われる人は「目標設定力」が秀逸だった

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第31回目は「間違った目標設定と正しい目標設定の違いとは」についてです。

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あなたの周りに、どんどん夢を実現していく人はいますか?

私がまだ営業担当だったころ、理想の1日をイメージするワークを受けたことがあります。朝9時に電車に乗り、毎日数字に追われて、家にたどり着くのは、23時ごろ。

そんな毎日を送っていた40歳の時に書いたことが、次の夢です。

「朝、目覚めてメールのチェックをすると、担当者から『また増刷しました!』という連絡が入っている。執筆と講演が本業の私にとって、とてもうれしいお知らせだ。

夜はいつものように講演へ。今日は200人くらいの会場が満員御礼だとのこと。講演が始まると聴衆は真剣な眼差しで、反応もとてもいい。講演が終了すると、次々にサイン待ちの列ができた。握手をすると、口々に『今日の講演、とても感動しました!』と言ってくれる。

毎日、人の人生が変わるお手伝いができるかと思うと、とてもうれしい。充実感あふれる日々に感謝!」

このように、「将来こうなったらいいなあ」ということを、丁寧に書き出しました。

いつかは、自由になりたい。時間に縛られない生活ができたらいいなあ

「講師として、独立できたらどんなにいいだろう」

「何か書くことで生活できたら、どんなに素敵だろう」

「好きなことでお役に立てるようになれたらいいなあ」

そんな夢を持ちつつ、これから3年後に独立して、45歳で出版し、講演やセミナーが本業になりました。

ふと気がつくと、40歳のときに書いた夢物語が、現実になっているではありませんか。あのときには夢でしかなかったことが、すべて叶っていたのです。

なぜ叶ったのかというと、潜在意識に深く刻まれる目標設定の技術を使ったからです。

潜在意識とは?

私たちの行動は、意識的にやっていることと、無意識でやっていることの2種類に分類できます。ほとんどのことを意識的にやっているようで、実は無意識でやっていることが9割を超えます。この無意識でやっていることを司っている部分を、潜在意識といいます。

たとえば、朝起きて、歯を磨く。この一連の作業を、初めて歯を磨く子供に教えようとしたら、膨大な情報が必要です。

歯ブラシを左右どちらの手の、どの指で握るか。歯磨き粉のキャップをどの指でつかみ、どちらへ回転させるか、どれくらいの圧力をかけて、適量を絞り出すのか。

あなたが、何も考えずに毎日毎日、歯を磨けるのは、潜在意識が全てコントロールしてくれるからです。

そもそも目標を持っていますか?

このように、いろんなことを自動でやれるようにしてくれているのが潜在意識です。

潜在意識は、とても優秀な機能です。あなたをどんな場所にでも連れて行ってくれる、いわばドライバーのような存在です。ところが、あなたの目標が不明確だと、せっかくの優秀なドライバーも、なすすべがありません。

タクシーに乗ったときを想像してみてください。「お客さん、どこに行きますか?」と聞かれますよね。

その時に、「いや、どこに行きたいのかわからない」と答えているような状態が、目標を持っていない人生です。

優秀な機能である潜在意識は、わかるように行きたい場所を伝えることで、より能力を発揮します。

それが「目標設定」の技術です。

先ほど紹介した40歳の当時に描いた夢は、達成するまで5年ほどかかりました。

現在は達成のスピードがどんどん加速して、夢に描いたことが数ヶ月で叶うようになってきました。

目標設定の技術を使いこなせれば、あなたの夢もどんどん叶っていきます。

その内の2つをご紹介しましょう。

夢を叶えるためには、肯定的に表現すること

「お金に困らない人生を送りたい」

「病気にならないで長生きしたい」

「今月の目標金額を下回らないようにしたい」

このような目標設定は、夢を遠ざけてしまいます。なぜなら否定的な表現になっているからです。

潜在意識に、お金に困らない状態をイメージしてもらうためには、まずは、お金に困っている状態をイメージする必要があります。

家賃も払えず、旅行も行けず、食べるものにも困る状態を映像で描く。

「お金がない、困った、どうしよう・・・」と嘆いてる声を聞く。

身体が重くなったり、憂うつな気分を感じる。

こうしたお金に困った状態をイメージしてからでないと、「お金に困らない状態」のイメージが成り立たないのです。

「病気にならない人生を送りたい」

この場合だと、潜在意識には、まずは病気で苦しんでいるイメージを築く必要があります。

そこから、そうではない状態をイメージするという手順をふまなければいけません。

このように、否定的な表現は、潜在意識に望まない逆のイメージを植え付けてしまうのです。

大事なことは、欲しくないこと、したくないことを、わざわざ潜在意識に伝えないこと。

欲しいこと、したいこと、起きてほしいことだけを、潜在意識に働きかけるのが、目標を叶えるコツです。

先程の否定的な表現を、肯定的な表現に変えると、次のようになります。

「充分なお金に恵まれた人生を送りたい」

「120歳まで常に健康的でエネルギッシュな毎日を過ごしている」

「今月の目標金額を簡単に達成している」

以上のように、進行形で表現すると、潜在意識に無理なく働きかけることができます。

肯定的かつ、進行形で表現することで、あなたの夢は叶いやすくなっていくでしょう。

主体的な目標ですか?

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目標設定の技術の2つ目は、主体的な目標を立てることです。

私たちがコントロールできるのは、自分の思考と、自分の行動だけです。

しかし、悩みが多い人は、自分がコントロールできないことを気に病んでいます。

「トップ営業になりたい」「上司が厳しすぎる。もっと自分を認めてほしい。態度を変えてほしい」「パートナーが自分を愛してくれない」「もっと給料を上げてほしい」などなど。

これらの要望は、相手が決めることです。

たとえば、「今月、社内100人の中でトップ営業になりたい」という目標は、主体的ではありません。

あなたが過去最高の自己記録を更新しても、あなたよりも売っている人がいればもちろんトップにはなれません。

逆にあなたが過去最低記録を出したとしても、あなた以外の100人の営業担当が、全員調子を崩していればあなたはトップです。

会社にトラブルが起こり、あなた以外の営業担当が全員退社すれば、あなたの目標は叶います。

結局、「トップになる」とか「一位になる」という目標は、他の人との比較であり、自分がコントロールできるものではないということです。

周りの人や環境に依存しないで、自分がコントロールできることのみに責任を持つことが、目標設定のコツです。

したがって、「トップになる」という他人との比較の目標ではなく、「今月1千万円達成する」といった、自分でコントロール可能な目標にすることが大事なのです。

イチロー選手の成功の秘訣とは?

イチロー選手が長期間にわたって活躍できている理由は、常に主体的だからです。

インタビーではこのようなことを言っていました。「打率は四死球に影響されるが、安打数は毎日の積み重ね」だと。

まさに主体的です。自分のコントロールができることのみに焦点を向けているからこそ、偉大な記録を残してきたのでしょう。

また、イチロー選手がマリナーズで5年間1億ドルの契約をした際に、インタビューで「今までの野球生活を振り返ると、やりとげた達成感が実はないです。できるかどうかわからないという状態で結果が出ても、十分な達成感を得ることができない。やりたいことをしっかりイメージして、目標を持って、結果を残したときにこそ本当の達成感を感じることができる」という主旨の内容を発言していました。

様々な記録を塗り替えてきたイチロー選手ですが、イメージをしていなかったことや目標を立てていなかったことがうまくいっても、達成感がないと言っています。

逆に、イメージをきちんとして、準備をして取り組んだときに、達成感を感じるところに、主体性を感じます。

周りがどうであれ、環境がどうであれ、肯定的で主体的な目標を掲げることが、あなたの人生を豊かにしていきます。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)

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「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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