『お酌は女性がやる』もの?「残念すぎる職場」が正直しんどい…【働く女性相談室】
「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」という理念のもと、キャリア支援やコンサルティング、現在では結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さん(川崎さんの記事一覧)。
人材コンサルティングの経験と、女性経営者ならではの視点から、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた川崎さんが、「“働く女性”に立ちはだかるさまざまなお悩み」に、厳しくも温かくお答えするこのコーナー。
第五弾の今回は、「“女性がお酌”が当たり前の空気になっている職場」に悩む女性からのご相談です。
<今回の相談内容>
「女性のお酌」が当たり前の職場にモヤモヤしています。
私のいる営業部は月末に打ち上げをするのですが、積極的にお酌をしている先輩の女性社員がいて、女性のお酌が当たり前のようになっています。その先輩は、後輩である私たち女子にもやってほしいと考えているようで、「○○さんのグラスが空きそうだから、お代わり頼んであげて」と言われたりします。
先輩を見習って立ち回ってはいますが、正直、会が進んだら、みんな自分でやれば良いと思いますし、お酌も気が付いた人がやればいいのでは?と思ってしまいます…こういうのって、どうしたらいいんでしょうか?(25歳・営業)
回答者:川崎貴子
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。
女性のお酌が当たり前の職場・・・。思わず、「昭和か!」と、心の中のちゃぶ台をひっくり返しました。
会社の飲み会って、仕事なんだか仕事じゃないんだか、よく解らなくて悩ましいものですよね。上司が部下と飲むのを禁止する規則を作った会社がいくつかあるのですが、上司から誘われる飲み会が業務の一環なのか否かはっきりしないからであると説明を受けました。日本企業ですが、外国人の登用に積極的な会社ばかりなので、その辺りをきちっとしておく必要があるのでしょうね。
また、会社の飲み会には色々な人が参加しています。偉い人、中堅どころ、新人、男女、その場を楽しんでいる者義務で来ている者、無礼講を良しとする者そうでない者・・・。中には酒を注がれたい派と注がれたくない派まであり、ビールや日本酒が若者に人気がイマイチなのは、糖質や味だけの問題じゃなく、注いだり注がれたりの飲みコミュニケーションの作法がめんどくさすぎるからではないかという、穿った見方まで私は今しています。
これ(会社の飲み会では女性社員がお酌をするべし)が、会社のルールだとしたら完全たる均等法違反。現代日本においてその会社は相当香ばしい訳で、他の事も諸々時代錯誤&男尊女卑でしょうから、転職を考えるなり、上司に掛け合うなりできる事は無限に広がります。
しかし、この件に関しては、相談者さんの所属している部署特有の「社風」じゃなくて「部風?」的なものが「女性たるものお酌をしなさい。」と強制してくる。
相談内容を読むと、先輩女性だけが作っている「マイ女性社員ルール」にも一見見えますが、女性社員だけがお酌して気を回しているのを見ていて何も言わない男性社員も、同じようにその空気を作っている構成員です。本来ならば先輩営業マンたちの、客を接待する際の華麗な「お酌芸」をお披露目いただきたいぐらいなんですけどね。って、その場にいたら確実に言ってしまいそうな自分が怖い。
文面から、相談者さんが飲み会に出る意義を理解している事も、お酌をすることもやぶさかじゃないという思いも伝わってきます。先輩女性に対しても、「相談者さんの評価を落とさないために指導的な意味でも言ってくれているのかも」とうっすら思っている事も。
ただ、もやもやするんですよね。「女性だからやりなさい。」と暗に言われることに。なんで皆、自分でやらないの?とモヤモヤするんですよね。
大切なのは、将来、相談者さんが先輩や上司として後輩に同じ思いをさせないこと
最近、大手企業のCMが度々炎上しましたが、そのほとんどが女性を年齢的、役割的に、ステレオタイプに表し(言い方は悪いですが)無邪気に垂れ流したものばかりでした。日本だけではありません。元々ジェンダー問題に敏感な先進国の間では更に厳しく、先日もイギリスの広告基準協議会(ASA:Advertising Standards Authority)は、「男女の役割を押し付けるような広告を、さらに規制する必要があると判断した」と発表しました。
広告や教育がステレオタイプを押し付け無くなれば、これから育つ子供たちは「私作る人、僕食べる人」(*昔、ハウス食品工業が流して問題になり、2か月で終了となったCM)なんて価値観は次第になくなってゆく事でしょう。会社にもそんな新人たちがたくさん入社してくる筈です。その時、相談者さんが先輩や上司として彼女達をモヤモヤさせないことが大切で、今回の事も相談者さんの将来に向けた、貴重な学びの機会であったのではと私は思います。
今回、私は周囲のあらゆる職業の男女に「女性社員のお酌」に関してリサーチしてみたのですが、
「女性社員にお酌させるとか、そんなダサい会社の社長と思われたくない。」(IT社長男性:38歳)
「体育会出身だから、目上の人にはいまだに反射神経でお酌をしてしまう。」(編集者女性:45歳)
「お酌をきっかけに話ができて、上司と距離が縮まった経験があるから、親しい後輩にもやった方がいいと指導している。」(営業女性:32歳)
「目の前の人のグラスがカラになったら注ぐようにしているが、女性社員だからと指導を受けたら反発する。」(広報女性:35歳)
などなど、他にも肯定否定の色々な意見を頂戴しました。それを聞いて解ったのは、この「女性社員のお酌問題」が今は未だグラデーション期であるという事。「女性だからお酌すべし」という訳では決して無いものの、「でも、やらないことで気の利かない人間と思われるのは避けたい」という“なんとなくの空気”が女性達の中にうっすらと漂っている事でした。
そのモヤモヤに立ち向かい、人生のスキルアップを目指すべし!
私は最初にこのご相談を拝見した時、「そんな会社やめちまいな!」と間髪入れずに思いました。
私自身、営業ウーマン時代に役員の偉い女性から「そろそろバレンタインデーなので、女性営業は全員、お客様(男性限定)にチョコレートを配るように」と指示されて頑なに拒否し、上司と先輩と同僚を凍り付かせた経験を持っているからです。最後はジェンダー論までぶちかましたのですから、「相当めんどくさいやつ」認定されていた事でしょう。
その後も長い事私は、この「バレンタインデーの乱」についてずっとモヤモヤしていました。(拒否したくせに)
そして、こんなモヤモヤを社員に感じさせない為に、独立後には色々なルールを作って会社を回していきました。お茶は自分で入れる、コピーも自分で取る、お酌はしなくていい、接待は役員以上が必ずついていく、重いモノを運ぶのも皆で協力してやる、会社主導の業務外イベントはやらない・・・など、社員達も喜んでくれたのでモヤモヤしたことも役に立つものだと思ったものです。
そして、今や私も大人になり相当狡猾になりました。
今の私が相談者さんの立場だったら、きっとその先輩女性に相談しますね。後輩に指導する際に「なぜ女性社員だけなんですか?」と聞かれたらどう答えればいいかと。あくまでも先輩女性側に立っているというポジショニングで。
今、企業CMも「女性だから○○」に炎上するじゃないですか、私が迂闊な事言ってネットに書き込まれたりするのも困るし、どのように伝えるのがいいのでしょうか?と。
それをきっかけに、先輩の後輩時代をヒヤリングし、共感してすり寄っていきながら最後に尻子玉を抜き取りますね。ふふふ。
ま、先輩もきっと「そういうものだから~」「私も先輩にそう言われたから~」と思考停止しているだけだと思うので、これをきっかけに先輩や他の女性社員と変なルールを改正できるように話し合い、皆で一揆をおこせば、社風は少しずつ変わっていくのではないでしょうか?多少めんどくさいし、少々めんどくさい人だと思われるかもしれませんが、
正義と自由はいつだって与えられるものではなく、勝ち取ってゆくものなのです。そしてその経験は全て「人生のスキルアップ」につながります。
モヤモヤを素通りできない勇者のキミを陰ながら応援しています。 →川崎 貴子氏の記事一覧
→川崎 貴子氏のプロフィール
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