会社に在籍しながらキャリアの幅を広げる~株式会社ウィルゲートの支援制度がもたらす効果
通常、会社に勤務していると、どんなキャリアを積んでいくかは自分の希望だけでなく「会社の意向」にも沿うことになります。ある程度の希望は受け入れてもらえるものの、基本的には配属された部署で、その分野や職種の経験・スキルを積んでいく。そして、ときには、会社の意向に沿って不本意な部署異動や職種転換を強いられることも……。
しかし、企業によっては「社内公募」「自己申告」「立候補」といった形で、自分が希望する部署に異動したり、プロジェクトに関わったりできるようにする制度を設けているケースも少なくありません。そして、本人が望むキャリアデザインを支援する制度を、さらに進化させている企業もあります。
今回、お話を伺ったのは、株式会社ウィルゲート。SEOサービスを強みとするWebマーケティング事業で成長を遂げ、現在はコンテンツマーケティング事業、出版社と手を結んでのメディア事業なども展開している企業です。
「一人ひとりの『will(意志、想い、やりたいこと)』を実現する」という理念を掲げる同社では、社員に対しても、「兼任チャレンジ制度」や「副業許可制度」など、キャリアの幅を広げるための支援制度を設けています。
その狙いと効果について、執行役員の山中 諭さんにお話を伺いました。
3つの部署で同時に働く社員も…「兼任チャレンジ制度」
「兼任チャレンジ制度」とは、社員が「別の部署の仕事も兼任したい」という希望を出せる制度。所属部署と受け入れ先の上長がOKすれば認められ、所属部署の業務を8~9割、兼任先部署の業務を1~2割程度という配分で、複数部署で働くことができるというものです。
四半期に一度、継続の見直しを行っており、約130人の社員のうち、のべ4~5割にあたる50~60人が制度を活用。営業がエンジニアやメディア運営、人事、経理などを兼務したり、エンジニアがメディア運営を兼務したりと、さまざまなケースが生まれているそうです。
「例えば、営業がエンジニア部署を兼務しているケースであれば、営業活動においてエンジニアリングの知識が顧客への提案に活かせたり、営業サイドの要望をエンジニア部署に伝えて改善がスムーズになったり、という効果が表れています。商材が異なる部署を兼務するメンバーは、シナジー効果を生み出せるプランを生み出していますね。そもそも、制度導入の目的は、一つは社員にキャリアの幅を広げてもらいたいということ、そして、頑張っているメンバーにチャンスを与えたい、ということです。経験の幅を広げれば、その人の可能性も広がる。兼任先部署の方が強みを発揮できると判断され、本異動になったメンバーもいます」(山中さん)
実際に、兼任チャレンジ制度を利用して活躍している社員の方にもお話を伺ってみました。
川上千晴さんは、入社3年目に制度の利用を申請。Webサービスの新規開拓営業のチームに所属しながら、エンジニアの部署と、『暮らしニスタ』という新しいメディアの営業と、計3部署の兼任を約1年半続けました。
「会社にどんな価値を提供するかを考えたとき、『私だからこそできる』というものが欲しかったんです。私は営業でしたが、技術がわかる営業は少ないし、営業がわかる技術者も少ないというところに目を付けて、私が両部署の架け橋になろうと思いました。その結果、エンジニアの部署が社内ツールを開発する際、営業がより使いやすい仕様に仕上げてもらえましたし、感度が高いエンジニアたちが使用しているIT・Webツールを営業部署に取り入れ、さらに全社導入へつなげることができました。一方、営業チームのブレストや目標設定の仕方をエンジニア部署へ共有。両部署がお互いの優れた部分を交換し合うことができたと思っています。また、異なる商材の営業を経験したことで、『お客様にはこんなニーズもあるんだ』と視野が広がり、1つのクライアントにトータルで商品を提供できるようにもなりました」(川上さん)
川上さんは今年7月から、メディアの営業を行いつつ、採用広報を任されるようになったそうです。
「複数の仕事を兼任したおかげで、自分が何をやりたいのか、どう役に立ちたいかを深く考えるようになった」という川上さん。生き生きと仕事に取り組めるようになり、その姿に触れた新卒・中途の応募者から「川上さんの話を聞いて入社したいと思った」「川上さんのようになりたい」という声が聞かれたことから、採用広報担当に抜擢されたのだそうです。
「今は、新たな制度を活用しています。『時短制度』です。週3日出社して会社の業務をこなし、それ以外の日は自分が個人的にチャレンジしたい『ヘルスケア』の分野の勉強に取り組んでいます」
「副業」で、自社では経験できない「成長」を手に入れる
ウィルゲートでは、「社外の仕事によって得られる個人の成長が、会社の成長につながると判断できる」など、一定の条件をクリアした場合に副業も承認する制度があり、現在、社員の2割ほどが副業を行っているそうです。
「収入を増やすのが目的、という人はほとんどいませんね。理由はさまざまですが、自分のスキルを高めたい、他社の理念や想いに共感したので応援したい、というケースが多いようです。他社の新規事業のコンサルティングをしたり、Webシステムやコンテンツ制作のお手伝いをしたり。人事コンサルや経営コンサルを手がけているメンバーもいます」(山中さん)
そして、副業を認めていることで、自社にもメリットがあるとのことです。
「他社でメディア運営や新規事業に携わり、それによって得た知識やノウハウを自社に持ち帰って活かしてくれています。でも何より大切なのは、本人が『成長している』と実感できることではないでしょうか。業務を通じた成長機会の提供は最大限行なっていますが、自社にないサービスや役割など、提供できないこともあります。そういった場合でも、一人ひとりの『成長欲求』を満たせること。それが副業の最大の効果だと感じていますし、会社としても支援したいと思います」(山中さん)
副業に取り組んでいる一人が、コンサルティング事業部の福井健太郎さんです。会社では、既存クライアントに対するサポートを担っていますが、1年ほど前から副業として、スタートアップの企業のWebマーケティングの支援を行っています。
「事業を立ち上げた知人から、Web戦略についての相談を受けたのがきっかけです。その事業への想いに共感したので、ぜひ協力したいと思ったんです。創業したてのスタートアップ企業でなら、プロジェクトの規模が小さいからこそ、ゼロから10までの工程を1人で行うという経験が積める。これはチャンスだ、と思いました。包括的な知識とスキルを磨けば、それは自分の部署でも役に立つはずだ、と」(福井さん)
上司に相談したところ、「チャレンジしてみなさい」と快く背中を押してくれたそうです。現在、土日を中心に、他社の事業支援に取り組んでいます。
「自社では『SEO』を中心としたソリューションを手がけていますが、Webマーケティングにおいての課題はもちろんそれだけじゃない。本質的な課題を見極める視点を持てるようになったと思います。事業をより深掘りして、課題を発見する。その重要性に気付くことができました。と同時に、課題に対してどのように解決策を提示するかにおいて、自分の枠にとらわれずにアウトプットするよう、意識的に訓練しています。こうして得られたものを、会社にもちゃんと還元していきたいですね」
山中さんによると、「兼任チャレンジ制度」「副業許可制度」以外にも、社員のキャリアの可能性を広げる施策を取り入れていくそうです。
「会社には週3~4日出勤し、それ以外の時間は自分の『will』に取り組むという制度はすでに運用していますし、今後はテレワークの活用も視野に入れています。家を空けられない人でも、『will』を叶えるチャンスを提供したいですね。人口が減っていく日本で、働く人が1ヵ所に縛られるより、能力を活かしていろいろな場所で活躍するほうがいい。それが日本全体の生産性向上にもつながると思います」(山中さん)
EDIT&WRITING:青木典子
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