負のスパイラルが止まらない 児童虐待はなぜ起きるのか?
減らない児童虐待
児童虐待はなぜ起きるか?ご存知のように児童虐待に関するニュースがあるたびに、「近隣で気を付けていこう」「警察に通報しよう」などの対策の声があがるものの、児童虐待は一向に減りません。しかし、私から言わせて頂くと減るわけがないのです。事例も含めてお話をさせていただきます。
親が我が子を虐待をしてしまう理由
保護者、特に母親は、好きで我が子に手を挙げているわけではないのです。手を挙げることは自分の安全安心を確保しようとして行っていることであり、それ以外でやり方がわからないだけなのだと思います。
誰しも最初から子供に手をかけ、それでいいんだなんて思わないと想います。では、どうしてそのようなことが起こるのでしょう?
そこには、たくさんの要因が絡まっています。大きく影響しているひとつの要因は、ご自身のバックグラウンドです。母親自身が、親に愛情をかけて育ててもらっておらず、褒め方、叱り方がわからないのです。
たとえば、子どもがケガをしそうな行動をする、散らかす。それによって自分の仕事が増え、パニックになる。自分の感情を抑えることができない。そんな時、自分の記憶の中には「親がどう対応すればいいか」というお手本がありません。褒め方も叱り方もわかりません。「子どもを叩けばいうことをきく」「おどせば、黙る」。なので怒る、金切り声を上げる。要するに話し方、伝え方なのです。
子どもに言葉で言ってもわからない年齢2~3歳は特に大変です。年子で兄弟がいたりもします。母親は、周りに協力者がいてもいっぱいいっぱいになる時期です。夫や内縁関係の相手が協力してくれたりと、家族の関係が母親自身に心の余裕を与えてくれる環境であれば、悲劇は減ってくるのです。しかし、大人の勝手な事情で、相手の好意を自分に向けるために、弱者である子どもに攻撃が及ぶことさえあります。
実の親から存在を認められて育っていないまま親になった者たちは、我が子より、自分を認めてくれる方を優先してしまうこともあります。たとえ周りから見たら「何でそんな相手と、懲りないで同じことを繰り返すのか」と思いますが、どんな相手でも自分の存在を認めてくれるものに、すがってしまうのでしょう。母親と女の部分でバランスが取れていないのではないかと思います。
男女での違いはあるにせよ、男親が手をかけるのも自分自身を優先するからではないでしょうか?子どもが言うことをきかずイライラし、言葉の暴力、身体的暴力を掛ければ余計泣いて騒ぐので、だんだんと暴力がエスカレートしてくるのだと想います。
普通に見える家庭でも、無自覚に虐待をしている場合がある
声を上げることができる子はまだ救いの手はあるかも知れません。ほとんどが家の中で虐待は起きます。見た目で気が付かないケースもあります。
一見、普通のどこにでもいるようなお母さん。挨拶もきちんとして、周りの対応も問題なく、ごくごく一般的に見える家族の中でも虐待がありました。椅子に身体を縛り付け、勉強させる、寝ないように長い物差しを背中に差し込み、課題が終わらないとご飯も食べさせず、がりがりの体型の中学生になっている子もいます。我が子が朝、時間に起きないことでイライラして首を絞めたりする親もいます。自分自身のイライラやプレッシャーを子どもにぶつけている親が多くなってきていると、私は感じています。子どもを叩き、自分をまた責める。負のスパイラルです。
そうした親から見ると、「問題のある子ども」として映っているようです。しかし、子供の問題でなく、親の気持ちの余裕やその親自身に問題点が見受けられることが多くあります。最近の相談でも、子どもの問題としてはじめは相談に来るのですが、原因は、親の方にあるのです。
どうすれば防げるか?親の「やり方」でなく、「あり方」を学ぶ機会が必要
何度叩かれようが、子どもはお母さん大好きなんですよね!必死で、すがっている子どもたちを見ていると、「この子が親になった時にどうなるんだ」と、私はいつも思います。
子どもの受けた心の傷は、消えません。忘れよう、無かったことにしようと、心の奥底に気持ちを封印しています。しかし自分が親になり、同じような状況になると、その押し殺した感情が、心の中でくすぶり始めてくるのです。それが、まさに負のスパイラルなんだと私は思っています。
子どもは学校で学びますが、親にも学びの場が必要なんだと想います。初めて親になるわけで、教科書は自分の親なのですから、学校の教科書と同じように改定していかないと、負のスパイラルが絶ちきれないのです。
(大崎 清美/心理カウンセラー)
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