仕事で活きる「アタマの良さ」は○○で作れるんです | 勝間和代さん
さまざまなシーンで活躍しているビジネスパーソンや著名人に、ファミコンにまつわる思い出から今につながる仕事の哲学や人生観についてうかがっていく本連載「思い出のファミコン – The Human Side –」。
今回ご登場いただくのは、経済評論家の勝間和代さん。さまざまなメディア出演や著述活動の一方で、大のゲーム好きという一面もある勝間さんは、東京・五反田にゲームカフェ「ウィンウィン」を自らプロデュースするほどゲーム愛にあふれている。そんな勝間さんのゲーム遍歴から、ゲームを通じて磨かれるビジネススキルについてお話を伺ってきた。
<勝間和代さん プロフィール>
1968年東京生まれ。経済評論家、公認会計士。
早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。
19歳(当時最年少)で 会計士補の資格を取得し、大学在学中から監査法人に勤務。
アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。
『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』『断る力』など著作多数。
2015年最高位戦日本プロ麻雀協会プロ試験に合格。
2016年自身がプロデュースするボードゲームカフェ「ウィンウィン」を五反田にオープン。
じつは小さい頃からバリバリのゲーマー
―― 子どもの頃からゲーム好きだったとか。
私の実家は母親がすごくゲーム好きな人だったんですよ。だから小さい頃からよく母親とボードゲームやトランプや花札なんかを一緒に遊んでました。テレビゲームは任天堂の「カラーテレビゲーム15」が最初でした。
―― オレンジ色の筐体で、ツマミのコントローラーを操作して「ピンポン」とか「テニス」で遊べるゲームですね!
任天堂のゲームはそのあとの「ゲーム&ウォッチ」シリーズも、「オクトパス」とか「ポパイ」とか、たくさん持ってました。その後ファミコンが発売されましたが、その頃は中学生で、「ドンキーコング」や「マリオブラザーズ」といった最初期のカセットから遊んでましたね。パソコンもPC88シリーズを早くに買ってもらっていたので、PCゲームも併用してプレーしてました。「ウィザードリィ」とか「ウルティマ」あたりのRPGにハマりました。
―― そんななかでも特に思い出深いゲームはありますか?
私、高校の修学旅行にファミコンを持って行ったんですよ。ただ、自分一人で全部持ってくるのは、荷物が大変になるし嫌だったので、「あなたはACアダプターであなたはカセット、あなたはテレビとの接続に使う工具ね……」って感じで、5人くらいで手分けして。当時大人気だった『スーパーマリオブラザーズ』を泊まり先でずーっとみんなでやってました。
でも、その時に友だちと遊んでビックリしたのが、私はわりと早くに8-4までクリアできるようになっていたんですけど、ほかの友だちは1-1すらろくにクリアできないってところ。「あ、ゲーム慣れしてない人ってこうなんだ」「普通の女子高生はほんとにゲームしないんだなあ」、と。
ほかに、ものすごい時間をかけてやりこんだのが、「ダービースタリオン」シリーズ。ファミコンで初めて登場してから、歴代の先品はほぼやりこみました。実際の競馬もダビスタで覚えたと言って過言ではないですよ(笑)。
計画力、判断力、リスクマネジメント、効率化…
すべてゲームから学べる
―― 一番多感な時期にさまざまなゲームに触れられてきた勝間さんですが、今思い返すとその経験が、その後のビジネススキルや仕事観につながったようなことってありますか?
まずは、とっさの判断のためのスピード感覚が身につきますね。ゲーム展開からシナリオを読み解く力も磨かれますし、何より指先が器用になります。ですから私はそもそもゲームはスポーツと同等な趣味だと思っています。
そしてゲームって、基本的にゴールがあって、攻略法を考えるじゃないですか。攻略法を誰にも聞かず何にも頼らずに、全部自分で考えるとものすごい時間かかりますよね。そしていつまでたってもうまくならない。それだったら、最初からデキる人にコツを聞いてしまったほうが早い。そういったダンドリって、ゲームに限らず勉強とか仕事でも同じことだと思うんです。
たとえば私は公認会計士試験をわりと早くに受かったんですけど、それができた理由というのは非常に簡単で、大学3年とか4年で合格した人に勉強法のコツを聞きにいったんですよ。そうすると丁寧に教えてくれますから。
―― ゲームをクリアするための攻略プロセスは、いろいろな場面で応用できると?
たとえば学校の成績なんかも、すべてにいい成績をとろうとは思っていませんでした。自分の希望する進路に対して最低限必要な科目・単位・評価は何か、それをクリアするのに必要なロードマップを策定して、そのノルマをこなしたら、それ以外の時間は自分の好きに使う。無駄にまんべんなく高い点とってもしょうがないだろうと思っていたので。そういう「超・効率優先」の考え方でしたから、中高生の時もゲームをしたり本を読んだりする時間はたっぷり確保できてましたね。
幸い、私の親はゲームを禁じるタイプではなかったので、もらったお年玉やお小遣いを、惜しみなくゲームに費やせていました。というのも、子供ながらに「今持っているこの3000円の価値は、大人になったら大したものじゃない。だから貯めていてもしょうがない」ってわかっていたので(笑)。
―― ゲームに対してとても肯定的なスタンスですね。
私にとって、ゲームは本とまったく同じ位置づけなんです。私自身、本もたくさん読む子どもだったんですけど、むしろゲームは本をさらにアクティブにした感じ。読書ってわりとパッシブ(受身型)じゃないですか。それに対して、ゲームには何か場が設定されていて、その上に目的があって、いろいろな想像力をかき集めて、実際に手を動かして進めていくわけですから。
ビジネスも含めて、私たちの能力は「無意識にできること」の蓄積なんですよね。人間って考えてできることって、全能力のうちのほんの少ししかないので、いかに無意識に手足や頭が反応できるか、自在に且つ的確に動かせるかということが大事なんです。色んなジャンルのゲームをプレーすることで、瞬間的な状況判断と、対処法、行動にともなうリスクマネジメントの考え方とかを学んでおけば、ビジネスや学業でも活きてくるはずなんですよ。
ゲームで遊んだほうがアタマは良くなる
―― いまだ「ゲーム禁止」という方針の家庭もありますが、それに対してはどう思われますか?
それはゲームの本質を理解できてないんですよ、単純に。私はたまたま、両親ともゲームが好きな家庭環境でしたから、ファミコンをはじめテレビゲームやPCゲームで遊ぶことは特に制限もなく育ちました。でも、ひと昔前の漫画なんかも同じだったんですよね。漫画を読んでない世代の親が、その子どもに対して「漫画を読むな」と制限しているという。幸い最近はようやく漫画も市民権を得ましたけど。
漫画にしろゲームにしろ、「夢中になれるもの」には、なんらかの魅力があるという前提で向き合ったほうがいいんです。もちろんゲームばかりに時間をとられて、仕事や学業がおろそかになるとか、希望する進路が叶わなくなる、生活が立ち行かなくなるとかなれば、害はありますけど。いかにバランスをとるか、落としてはいけないミッションは何なのかを理解した上で、プレーすればいいんじゃないかと思うんですよね。
――むしろゲームは積極的に遊ぶべきだと。
私は、机に向かって勉強するより、ゲームで遊んだほうがアタマが良くなると思ってますよ(笑)。画面の動きに対して、的確に手を動かすって、脳ミソを鍛えるのに最適なんですよ。これゲーマーにとっては定説ですけどね。
そして何より、ゲームは読書やスポーツの仲間だと思ってほしいんです。結局はどれも、多様な経験を積んで、その場で判断をして、アクションを起こすというのを繰り返し行うことですから。でもじつはスポーツって、いざやろうと思っても、仲間と一緒にやらなきゃいけなかったり、道具が必要だったり、すぐにはできないことも多いじゃないですか。その点、ゲームはひとりでどこでもできますし、もっともっと積極的にゲームで遊ぶことが、スキルアップにもつながるんじゃないかなと思います。
取材・文:深田洋介
1975年生まれ、編集者。2003年に開設した投稿型サイト『思い出のファミコン』は、1600本を超える思い出コラムが寄せられる。2012年には同サイトを元にした書籍『ファミコンの思い出』(ナナロク社)を刊行。
http://famicom.memorial/
撮影・編集:鈴木健介
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