18歳成人法案国会提出へ 問題は無いのか?

18歳成人法案国会提出へ 問題は無いのか?

18歳成人法案に向けて民法改正の動き

この8月の内閣改造で就任した上川陽子法務大臣は、記者会見で、成人の年齢を20歳から18歳に引き下げ、また、結婚できる年齢を男性女性とも18歳以上にするという民法改正案を秋の臨時国会に提出する意向を示したとのことです。

現行の民法では「年齢20歳をもって、成年とする。」と定めています(4条)。また、結婚できる年齢は、現在は男性18歳以上、女性16歳以上とされています(民法731条)。

民法の未成年者の扱いとは?

民法は、私人間のことや家族関係についての基本的なことを定めた法律です。その民法では、成年の年齢に達しない人つまり未成年者は、独立して取引できるだけの判断能力を持っている人とは扱わずに、成年者よりも保護しています。具体的には、親などの法定代理人の同意を得ないで未成年者が何かの取引の契約をしても、未成年であることのみを理由として契約の取消しができるということになっています(民法5条2項)。

また、未成年者が結婚する場合は、父または母の同意が必要とされています(民法737条)。なお、未成年者が結婚した後は、民法上は成人したものとみなされます(民法743条)。

民法改正がされるとどうなるか

法務大臣の会見で言われたように民法改正がされると、18歳・19歳の人については、未成年であることを理由に契約を取り消すことができなくなります。そうなると、この年齢の若者を狙った消費者被害が拡大するおそれがあります。

労働契約については、未成年者に不利な契約を親権者等が解除できます(労働基準法58条2項)。成人年齢が引き下げられると、この解除権で保護される範囲も狭まることになりますので、いわゆるブラック企業の被害も拡大するかもしれません。

また、民法は、基本的な法律ですので、その他の法律での未成年者の基準も引き下げられる方向に順次、法改正がなされていく流れになるかもしれません。

その他の法律での未成年の意義

公職選挙法では既に改正により平成28年6月から、選挙権を有する者の年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられています。この改正の際の附則で、この引き下げとの均衡等を勘案して、民法や少年法等の検討をすることになっています。少年法では、「少年」は20歳未満の者とされています(少年法2条1項)。

この他、多数の法律で個別に成年として扱うかどうか定めた規定があります。たとえば、未成年者飲酒禁止法や未成年者喫煙禁止法で、20歳未満の飲酒や喫煙について禁止されています。また、国民年金の加入義務の年齢が20歳以上(国民年金法7条)とされています。

改正が国民一般のためになるのか疑問

早く成年として扱われるので、これから18歳になる将来の世代には、権利・自由の拡大という面もあるかもしれません。

しかし、未成年者を保護しようという制度で守られる期間が狭まるという不利益があります。若者を食い物にしようという者はいつの時代もなくならないでしょうから、成人になると危険も大きくなることを忘れてはならないでしょう。

公選法改正に端を発し、基本法である民法の成人も引き下げて、さらには特別法の領域でも、若者の負担を増やしていこう、保護の範囲を狭めようというのは、若者を大切にしない亡国への道だと思います。

民法の成人年齢の引き下げは、慎重な議論を重ねてもらいたいです。そもそも成年か未成年かの基準を全ての法律で一律の年齢にする必要はないはずです。

婚姻年齢について

結婚できる年齢について、女性は16歳以上で可能だったのに、18歳に引き上げるのは、結婚を選択する時期を遅らせるという点では女性の権利を狭めるともいえるのではないでしょうか。また、男女平等を理由とする改正なら、男性を16歳に引き下げるとか、両性とも17歳以上にするという制度でもいいのではないかと思います。

この点の改正をするにせよ、成人年齢の引き下げを主目的とした民法改正の口実に使われないようにすべきです。

(林 朋寛/弁護士)

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