結局、「ミスをしない」が“最強”のビジネススキル――マンガ『インベスターZ』に学ぶ
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第9回目です。
『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「つまり投資とは・・・いかにミスをしないか、だ」
(『インベスターZ』第2巻credit.14より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
「点を取る」よりも大事なこと
土曜日。財前は投資部のキャプテン・神代(かみしろ)に会いに学校の寮を訪ねます。神代はちょうど、運動のためにテニスの壁打ちをしているところでした。唐突に「ただの壁打ちではなく、実際にテニス部の部員と戦って勝つ自信がある」と言い出す神代。
財前に「屋内コートの窓から自分たちの試合を見ているよう」に告げると、テニス部員に試合を申し込みます。これを見れば、なぜ神代が「投資に失敗しないのかがわかる」と言うのです。
試合が始まると、テニス部員は素人の神代を力と技でねじ伏せようとして、かえってミスを連発。ミスがミスを生む展開となります。一方、神代は、球はゆるいながらも確実にセンターに球を返し続け、宣言通りにテニス部の部員に勝利してしまいました。
信じられないという表情の財前に対し、神代は「大事なことは、極力ミスをしないこと」だと身を持って示したのでした。
投資の神様が胸に秘めた「投資のルール」とは
この話は、テニスを例にしながら、投資をする際に大切な要素を巧みに描いています。
多くの人は、投資をする際にいきなり「どうすれば稼げるか?」と考えます。しかしその行為は、まさにテニス部員が点を取ろうとしてミスを重ね、負けてしまったようなものではないでしょうか。
「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、「投資において絶対に守らなければならないルール」として、このように述べています。
ルールその1:損をするな
ルールその2:ルール1を忘れるな
投資におけるミスとは、まさしく損をすることです。バフェット氏はかつて、投資を「三振のない野球」にたとえています。野球はストライクを3回見送ればアウトになってしまいますが、投資の場合は「自分には打てない」と思った球はいくらでも見送ることができます。ひたすら待って、自分にも打てる球がきたときだけ打てばいいのです。
バフェット氏も最初から投資に成功していたわけではありません。これまでに度々失敗もしてきました。たとえば以前、落ち目になった繊維会社や百貨店、強力なライバルのいるガソリンスタンドの株などを買い、手痛い思いをしています。氏は「人間は過ちから多くのことを学ぶ。しかし、自分の過ちよりも他人の過ちから学んだほうがはるかに痛みは少ない」と語っています。
“戦う”前には準備が必要
バフェット氏は、自身が成功した理由として「飛び越えられるであろう30センチのハードルを探すことに力を注いだからであり、2メートルのハードルをクリアできる能力があったからではない」と述べています。これを先のテニスの話に当てはめると、テニス部員に勝った神代がそうでしょう。神代が勝てたのは、無理に点を取ろうとしないで、確実なことをミスなく行った結果でした。
ミスをしないためには、点を取りにいくことではなくて、まずは「ミスをしないためにはどうしたらいいのか?」ということから考えなくてはいけません。つまり攻めるよりも先に「守り方を知る必要がある」ということです。
たとえば日本の武道を習う場合、一般に受け身から習います。それは自分の身を守るためであり、守り方を知らずして敵に戦いを挑むのは危険な行為です。投資で言う守り方とは、「ルールを知る」「ダメな案件を見分ける方法を知る」「マネーリテラシーを高める」などといったことになるでしょう。
私は現在、自分自身の痛い失敗を教訓にしながら、社会人向けにマネースクールを開講しています。世界で活躍する金融専門家チームをブレーンにすることで、私と同じようなミスを他の人たちがしないで済むように、過去の私が喉から手が出るほど欲しかったものをつくっています。
以後、投資はますます身近な存在となる
今回は、投資の話を中心にお伝えしました。投資とビジネスの間には多くの共通点があり、もちろん今回の話もビジネスに通じています。
ところでご注意いただきたいのが、投資とビジネスのすべてが同じということではない、ということです。中でも大きく違うのは、ビジネスは「自分が直接行う」のに対して、投資は「第三者に託す」という点です。そのため万一、判断を誤った場合には発見が遅れる、といった特徴があります。
これからの日本は、投資が個人の資産形成の一手段として、ますます身近な存在になっていくと考えられます。あなたにもぜひ、「インベスターZ」をきっかけに少しでも投資に親しんでいただけたら幸いです。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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