梅雨~夏はホップの季節なのか!?/ビアエッセイストが新作6本レビュー
鳥取県大山町在住のライターでビアエッセイストの矢野竜広が、梅雨から夏にかけての新作ビールをレビューしました!
不快指数の高さを新作ビールで下げてしまおう!
本格的な夏が近付いている。
春が到来する前に寒い冬が必ずあるように、盛夏の到来前には長雨で蒸し暑い季節がどうしても付きまとう。こういう不快指数が高い時期には、新作のビールを楽しむことで乗り切るのが矢野(@beeressayist)流。
さて、今回ランダムにチョイスした6本はこちら!
・横浜ビール ブルーベリーブロンシュ
・グランドキリン 梅雨のエキゾチック
・サントリー ザ・モルツ サマードラフト
・サッポロ 麦とホップ 夏空のホップセッション
・KIRIN一番搾り 夏冴えるホップ
・軽井沢ビール クラフトザウルス
一本ずつ実飲していくことにしよう。
横浜ビール ブルーベリーブロンシュ
東京に住んでいる頃、ブルーベリーという果物は全く身近ではなかった。ところが、縁あって移住した鳥取県の大山町というところはブルーベリーの名産地だった。それゆえ、こちらでは「ブルーベリー狩り」なんて娯楽も楽しんでいる。今年はまだ行ってないけど、町内ではもうブルーベリー農園が賑わっていると聞く。
横浜ビールのある神奈川県では、小田原がブルーベリーの産地のようである。なんと300年の歴史がある農園の逸品を使用したブルーベリーブロンシュをいただいてみた。
グラスに注いでびっくり、かなりブルーベリーカラーが出ている!香りはホップが支配的。頑張って嗅ごうとするとほのかなブルーベリーの香りが感じられる。では……
実飲!
飲むとブルーベリーをしっかり感じる。美味い!「ブロンシュ」(白という意味)ということは小麦を使っているということで、それって簡単に言うと「苦みが弱いよ!」ってのが一般的なのだけど、これは意外と苦みが感じられる。で、後味がスパイシーな印象。やっぱり女子におすすめしたい一本だ。
ブルーベリーに加えて、小麦も地元産であることがラベルからわかる(もちろん水も)。こういうのは「クラフトビール」より「地ビール」の方がふさわしい。今って一周まわって「地ビール」が新しいと僕は思う。
※季節限定ビールなので、無くなり次第終了。※7月中旬~下旬ごろ完売の見込み。
詳細は公式情報を
http://www.yokohamabeer.com/ [LINK]
グランドキリン 梅雨のエキゾチック
これまで「梅雨」を前面に出したビールなんて存在しただろうか?
グランドキリンの新作、その名も「梅雨のエキゾチック」。
「エキゾチック」という商品名そのものもそうだけど、「さわやかにして不思議な奥行き」というキャッチ、「ベルジャンインスパイア―ド」というスタイルといい全てが曖昧模糊としている。雰囲気系全開のビール、果たしてどんな味なのだろうか?まずグラスに顔を近付けると…グ、グランドキリンの香りがする!(わかる人はわかると思う)
実飲!
かなりどっしりしている。アルコール度数は5.5%なのだけどミディアムボディのようなコクがある。飲みごたえがあって美味しい!味わいとしてはブドウやオレンジのニュアンスを感じる(ブドウはラベルの紫色から影響を受けただけかもしれない)。ベルジャンにインスパイア―ドされた部分は、副原料にコリアンダーシードを使用している点。確かにスパイシー。炭酸も強く、ハジける感じがあるがこれが「梅雨の雨を表現している」と考えたら深読みになるだろう。
どうでもいいのだけど、僕は「エキゾチック」というワードに黒っぽさを感じる。だから、液色も「もうちょっと濃い方がいいのになあ」と思ってしまった(僕だけ?)。
詳細は公式情報を
http://www.kirin.co.jp/products/beer/grandkirin/index.html [LINK]
サントリー ザ・モルツ サマードラフト
続いてはこちら。コンビニ限定!という触れ込みで登場したモルツの新作、サマードラフト。
注ぐと色はめっちゃ普通。香りは…お、かなりホップの香り!グレープフルーツ系の香りだ。「シトラ」というホップを使用しているのだとか。人によっては「シトラスの香りだ!」と思うのであろう。さて、
実飲!
香りからもわかるようにかなりホップが強調されている味わい。穏やかな酸味もあって、確かに「夏の爽快な飲みごたえ」という感じがする。美味!でも、よくよく考えてみるとこの商品はモルツ。英語のmalt(麦芽)から来ているはずなのにほとんどモルトを感じない。スピンオフの形態を採った方がブランドパワーに頼れるのだろうけど、「ブラックIPA」みたいに矛盾している(Pはpale、意味は薄い)気がしなくもない。
ただ、「ビールなんて“サマー”とか言ってるだけで結局全部一緒でしょ?」と思ってる人は驚くだろう。普通のモルツとは全然違う。ぜひ飲んでいただきたい!
詳細は公式情報を
http://www.suntory.co.jp/beer/themalts/summerdraft/?fromid=beer_portal [LINK]
サッポロ 麦とホップ 夏空のホップセッション
続いては、「安価なのにビールに近い味わい」で人気を集める「麦とホップ」の新作、「夏空のホップセッション」。以前リリースされた「魅惑のホップセッション」に続く一本と言えるだろう。
開栓するとホップの香りがかなり周辺に漂う。アメリカンホップの代名詞とも言える「カスケード」とモルツのサマードラフトにも使われている「シトラ」、2種類のホップを投入している模様。期待が高まる。さあ、
実飲!
これは美味い!!(僕がホップ好きということもある)
「魅惑のホップセッション」のときも思ったけど、大手メーカーがホップを大量投入するビールを安価に美味しく作ったら、マイクロブルワリーってかなり厳しいのではないか。「麦とホップ」と知らされずにブラインドテイスティングしたら、ビール通を自称する人も「ん?どっか西海岸のビール?」と思ってしまいそうだ。
途中で飲み疲れするかな?と思ったけど、最後まで美味しい。つ、ついに出てきおったな…という印象である。
詳細は公式情報を
http://www.sapporobeer.jp/news_release/0000021612/index.html [LINK]
KIRIN一番搾り 夏冴えるホップ
続いてもホップ系ビール、KIRIN一番搾りの夏冴えるホップ。
これに使われているのは「ヘルスブルッカーホップ」だそう。もはや「イソプロピルアンチピリン配合」といった具合に「よくわかんねえけどすごそう」という領域に足を踏み入れている気すらする。
例によって谷川俊太郎さんの詩がパッケージに。
「ビールのラベルに詩を書いてくれないか?」というオファーは、書き手にとって人生の上がり仕事だと思う。僕もいつかそんなオファーが来ることを夢見ながら…
実飲!
おお、実に繊細な印象。ホップの香りはあるけど控えめ。フルーティーな感じがドイツはケルン固有のスタイル、ケルシュを思わせる。それでも一口目はそれなりにホップを感じるのだけど、2口目以降はそれほど感じなくなり、飲みやすさが高まる。
こちらも商品名こそ「一番搾り」だけど、中身は全く定番アイテムと異なる。これってくくりこそ東京都なんだけどいわゆる“TOKYO”要素はなく、それぞれ個性豊かな伊豆諸島にどこか似ている。それゆえ、僕は「伊豆諸島系ビール」と名付けたい(異論は頭の中だけで留めてください)。
詳細は公式情報を
http://www.kirin.co.jp/products/beer/ichiban/products/natsusaeruhop/ [LINK]
軽井沢ビール クラフトザウルス
最後はこちら、ビール好きなら絶対に気になるであろうヤッホーブルーイングの新作。軽井沢ビールとしてリリースされたクラフトザウルス。
これ、「天地を突き抜ける衝撃のホップ香を体験してください」と煽りに煽っているのだけど、確かにかなり強烈なホップ香がする。系統的にはグレープフルーツだけど、ラベンダーのようなフラワリーなアロマもある。味はどうなのか。
実飲!
うん、美味い。かなりホッピーなよなよなエールといった印象。ただ、不思議なことにものすごくホップが強いのに苦みが強いわけではない。ホップから苦みを抽出せず、香りだけを引き出しているのだろうか。いずれにせよ、この「ホップ強」「苦み弱」を両立しているビールって案外珍しいと思う。
ただし、妻に飲ませてみたところ、「え?これはこれでじわじわ苦いよ」と言っていた。なるほど、自分のようなホップ馬鹿には感じにくい苦みはあるようだ。ちなみに、このクラフトザウルス、ヴィンテージエール(スタイルはバーレーワイン、アルコール度数10%)もあるそう。月並みな表現だけど、ヤッホーブルーイングから目が離せない!本当に。
詳細は公式情報を
http://yohobrewing.com/%E6%96%B0%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%80%8E%E8%BB%BD%E4%BA%95%E6%B2%A2%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%B6%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%80%8F%E3%82%927/ [LINK]
おしまいに……
いかがだっただろうか?
今回は結構、「伊豆諸島系ビール」(このワード、流行らないだろうな)が多かった。それとホップに個性があるという傾向があった。夏とホップ。実は両者はかなり相性がいいのかもしれない。夏好きであり、ホップ好きでもある僕には最高の季節だ。
では、また!
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(執筆者: 矢野 竜広) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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