住み続けながら家を現金化できる“リバースモーゲージ”。老後の資産活用の選択肢になる?

住み続けながら家を現金化できる“リバースモーゲージ”。老後資産活用の選択肢になる?

政府は推進したいのに、なかなか広がらないのが「リバースモーゲージ」だ。老後資金のひとつの選択肢でありながら、なぜ広がらないのか、全国住宅産業協会(全住協)が、住宅ストック維持・向上促進事業の一環として調査した結果を見ながら、考えてみよう。【今週の住活トピック】

「既存住宅ストックによる市場の好循環を促す品質の維持・性能の向上・評価・金融・流通の一体的仕組みの開発・周知・試行事業」調査結果を公表/(一社)全国住宅産業協会

認知度がまだまだ低い、リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、住宅ローンの逆バージョンで、自宅を担保に借りたお金を使っていき、利息のみ毎月返済するが(※)、最後に自宅を売却して元金を返済するもの。

※利息は元本に組み入れて一括返済するものもある。

まず、リバースモーゲージについてどの程度知っているか、一般生活者の認知度を見ていこう。<調査1>出典:(一社)「住宅所有者等への維持管理と対処状況に関する調査」より編集部にて作成 <調査2>出典:「住宅所有者への老後生活に関する調査」より編集部にて作成

<調査1>出典:(一社)全国住宅産業協会「住宅所有者等への維持管理と対処状況に関する調査」より編集部にて作成<調査2>出典:「住宅所有者への老後生活に関する調査」より編集部にて作成

<調査1><調査2>ともに、「知らない」が6割以上と、リバースモーゲージ自体への認知度が低いことがわかる。より老後資金に直面していると思われる<調査2>の対象者では、<調査1>の対象者より認知度がわずかに上がるが、認知度が低いことに変わりはないようだ。

リバースモーゲージやリバースモーゲージの新商品の利用意向度は?

リバースモーゲージが広がらない要因は様々ある。全住協は今回の調査で、既存のリバースモーゲージを改良した新商品案(自宅を担保に住宅ローンを借りるところからスタートしてリバースモーゲージに移行でき、住宅ローン同様に建物価値も担保とし評価されるもの)も提示し、一般生活者にそれぞれの利用意向を聞いている。

調査項目として提示されたリバースモーゲージと新商品案の説明は、それぞれ次の内容だ。

調査で提示された既存のリバースモーゲージの説明●リバースモーゲージとは?

・自宅を担保にして、銀行や自治体から老後の資金を借りることができるローン

・自宅の資産価値に基づいた借り入れが可能

・自分の死後に自宅を売却することで一括返済する仕組みで、存命中は自宅に住み続けられる

・タイプによるが、存命中の月々の支払いは使った分の利息だけとなり、元本分は支払う必要がない

・生活資金だけでなく、旅行や趣味、医療費など、幅広い用途で利用できる

新商品案(リバースモーゲージ移行可能型ローン)の説明●リバースモーゲージ移行可能型ローンとは?

・住宅ローンを、自分の好きなタイミングで「リバースモーゲージ」に切り替えられる

・切り替えた場合、リバースモーゲージによって借り入れできる金額から住宅ローンの残高を差し引いた金額が、資金として受け取れることになる

・現在のリバースモーゲージは、建物の価値はほとんど加味されず、土地の価値だけが自宅の資産価値とみなされることが多いが、『リバースモーゲージ移行可能型ローン』では、建物の価値を加味して自宅の資産価値を算出する

・そのため、建物の検査やメンテナンスを定期的に行っていることが求められるが、それによって建物の価値が上がり、その分リバースモーゲージで借りられる金額も上がることが期待される

リバースモーゲージ移行可能型ローンの利用意向を見てみよう。

30~60歳の首都圏の持ち家居住者:「どちらともいえない」47.5%、「利用したい※」が27.3%。

50~75歳の首都圏の持ち家居住者:「どちらともいえない」39.5%、「利用したい※」15.5%

※「利用したい」は「とても」と「どちらかといえば」の合計

既存のリバースモーゲージの利用意向と比べると、30~60歳の対象で利用意向はわずかに上がり、より老後に直面する50~75歳の対象では横ばいだった。既存であれ新商品であれ、利用意向がまだ低い点が問題だろう。

なぜ利用意向が低い?リバースモーゲージの課題は?

では、リバースモーゲージが生活者に広がらない理由はどこにあるのだろうか。

リバースモーゲージは、住み続けながら家を現金化できるが、契約者が死亡した後で家は売却されるので、遺族に家を残すことはできない(契約者が死亡したのち、配偶者が契約を引き継げる商品もある)。これがネックなのかというと、そうでもないようだ。

<調査2>で、資産を遺族に残したいと思うかどうか聞いたところ、「A:家族に残したい」を選んだのは27.5%で、家を遺族に残すことにそれほどこだわりがあるようには見えない。

ちなみに、住宅事業者のリバースモーゲージに対する期待度は高い。

全住協の会員事業者に対する調査によると、リバースモーゲージは「お客様のニーズがある」という回答は、「とてもそう思う」で17.9%、「どちらかといえばそう思う」で48.1%と期待の高さがうかがえ、実際に「お客様に案内している」事業者は5.7%、「検討中である」は36.8%だった。

期待は高いものの生活者に広がらない理由は、使い勝手が悪いということに尽きるのだろう。

リバースモーゲージは、取り扱う金融機関がまだ少ないうえに、首都圏など一部の地域でしか利用できない。また、土地に対する評価額で借入額を決める場合が多く、マンションが対象とならない場合も多い。さらに担保価値の満額を借り入れられるわけではなく、土地の評価額がかなり高額でないとまとまった金額を借りられないということもあるだろう。

リバースモーゲージは住宅ローンと同様に、金利上昇リスクが伴う。これに加え、定期的に担保価値が見直されるので、地価の下落による担保価値の下落=借入額が減少するリスク、契約者が想定以上に長生きするリスクもある点が見逃せない。

金融機関から見れば、返済期間が定まっている住宅ローンに対して、長生きリスクなどを伴うリバースモーゲージは、借入額を低く設定せざるを得ない。結果として、豊かな老後を過ごせるための借りたい額と、金融機関のリスクを加味した借せる額が折り合わないということがあるわけだ。

建物価値を評価してもらえるというのが新商品案のポイントではあるが、長生きリスクなどを回避できない点が課題といえよう。

とはいえ、自宅に住みながら現金化できる点は大きな魅力。老後資金の選択肢のひとつとして、検討する価値はあるはずだ。それには、生活者に仕組みや適切な借入額などを説明できるアドバイザーの存在が、必要となるだろう。
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