デキるビジネスパーソンは「名刺交換」が違う
初対面のほんの一瞬で与えてしまった悪印象を、どれくらいの時間でくつがえすことができるかというと、最低でも30分かかるというデータがあります。それだけ初対面のコミュニケーションはとても大事なのです。
その意味で、初対面で必ず行われる「名刺交換」によって与える印象は大きいものとなります。
私は、社会人になってから、見よう見まねで名刺を交換していましたが、30代半ばでしっかりとしたマナー研修を受けたときに、長年にわたってマナー違反をやっていたことに気づき、恥ずかしい思いをしたことがありました。
皆さんは大丈夫でしょうか?
まず、おさらいの意味も込めて、基本的なマナーを押さえましょう。
【名刺を渡すときのやってはいけないマナー】
・よれよれの名刺、折れ曲がっている名刺、汚れている名刺を渡す。
・ポケットやお財布から直接名刺を出す。名刺入れを持ち歩かない。
・名刺を渡すとき、机を挟んで渡す。
・相手が渡してくれるのを待ってから渡す。
・受け取った名刺は、すぐに名刺入れにしまいこむ。
【名刺を受け取るときのやってはいけないマナー】
・相手の名前や会社のロゴの上に指を置いて受け取る。
・同時に名刺を出してしまった場合、先に受け取る。
・受け取った名刺に、相手の目の前でメモを書き込む。
・相手より高い位置で受け取る。
これらを知らずにやっていると、「礼儀を知らない人だな」と、最初から悪い印象を与えてしまいます。
対人関係で大事なことは、まずは「嫌われない」こと。上記のようなマナーは社会人として、出来て当たり前のこととして知っておく必要があります。
さて、実はここからが本題。
さらにもう一歩進んで、「この人と話していると心地いいな」「この人は信頼できる人だな」と思ってもらえるような名刺交換の際のコミュニケーション技術をお伝えしようと思います。
名刺交換をしたときに好感を持ってもらえる人とは?
「名刺交換などしたとき、どんな人に好感を持ちますか?」
こんな質問を研修やセミナーですることがあります。すると、意外にも(いや、むしろ当然なのかもしれませんが…)「名刺の受け渡しがきちんとできる人」という答えは返ってきません。
「こちらに興味を持ってくれて、話を聞いてくれたり、いろいろと質問をしてくれる人」
このような意見が、圧倒的に多いです。
礼儀や作法よりも、コミュニケーション力が重視されているのです。
そのために、名刺の情報を使って、いかに相手との関係を深められるかが、デキるビジネスパーソンです。
名刺には、話を広げたり、場を和ませたりするための情報が載せられています。
たとえば、名前の漢字の読み方ひとつでも、部署名や課名ひとつでもそうです。
デキるビジネスパーソンは、名刺を受け取った後、すぐ本題に入りません。
名刺の情報からいろいろ話を展開していきます。
例を挙げてみましょう。
(例1)
あなた「下のお名前は…なんとお読みすればいいのでしょう?」
相手「“よしのり”といいます。」
あなた「良いに、紀州みかんの紀と書いて、よしのりさんとお読みするんですね!字も素敵ですが、読み方もすごく素敵ですよね!」
(例2)
あなた「“ふれあい支援部”…とは、具体的にどんなことをしていらっしゃるんでしょう?」
相手「実は昨年から新しくできた部署でしてね。うちの会社は、地域の方との関係も大切なので、スタッフと地域の方とのコミュニケーションをより円滑にするために作られたんです」
あなた「いいですね!新しくできた部署なんですね~!」
いかがですか?
ただ名刺交換をして、すぐ仕事の話に入るより、場を和やかな空気に変えますね。
私も会社を設立し、いろんな営業マンの訪問を受けるようになりましたが、形だけの名刺交換をしたらすぐに本題に入る人が多いのです。
私の名刺は、出版した書籍やメディア紹介の実績、ビジョンなど、情報はとても豊富です。それにも関わらず、そこには一切触れずに、自分や自社製品の案内ばかりの営業マンには、ウンザリします。
一方、名刺交換したあとに、私の名刺を使って、さまざま質問してくる営業マンには、ついつい饒舌になってしまいます。
初対面時の雑談のスキルを、書籍に書いたり研修で教えたりしている私でさえ、実際に私に興味を持って、いろいろ話を広げてきてくれる方には、好感を抱いてしまいます。
「この人の話なら聞いてもいいかな」「この人のことは信用してよさそうだ」と思うものです。
名刺交換時は、『相手の名刺の情報から話を広げていく』ことを忘れないようにしましょう。
本当にデキるビジネスパーソンが、名刺交換の前に行っていることとは?
さらに、本当にデキるビジネスパーソンは、名刺交換の前から違います。
出会ってすぐ、名刺交換の前に、
「今日は、いつもお電話でしかお話したことない○○様に、実際にお会いできるのを本当に楽しみに来たんです!」
「すごく良いオフィスですね!特に、入口に飾られている龍の絵には、思わず見入ってしまいました。ホームページにも昇り龍の話が載っていましたが、龍は○○社長にとって特別な意味があるんでしょうか?」
など、相手に出会えたことの喜びや、相手のことをほめて、相手の心を掴みます。
これができると、その後の名刺交換や仕事の話、商談の話が驚くほどスムーズに進みます。
むしろ、名刺交換なんて、特になくてもいいぐらいです。
このような相手の心を掴むコミュニケーションができるようになるためには、日頃から以下のようなことを考えていなければできません。
「いつも電話でしか話していない○○様は、実際はどんな人なんだろう?」
「今日お会いする方に、自分が役に立てることってなんだろう?」
「○○様が困っていることって、なんだろう?」
「○○社が一番大事にしているコンセプトは?」
つまり、自分のアピールや自分がどう見られたいかという自分目線ではなく、相手はどう思っているのかという相手目線で物事を考えているかどうか、ということですね。
相手目線で日頃から物事を考えていると、訪問前に相手の会社のことをインターネットなどで調べたり、相手の業界のことについて勉強したりもします。そこも普通のビジネスマンとの違いに繋がっていきます。
また、観察力もとても大事です。
相手の服装や身につけているもの、話の仕方、オフィスの様子などをよく観察していると、相手が大切にしているこだわりや価値観が見えてきます。
その見えてきたものを伝えることで、「この人はよく自分のことを見ているなあ」「自分に本当に興味を持ってくれているんだなあ」と相手は感じて、あなたに対して好感を抱くようになるのです。
ビジネスは、自分目線だと、成功しません。
相手の名刺から話を広げていくのも、名刺交換の前に相手に喜んでもらう一言を伝えるのも、すべて相手目線にたった行動です。
新入社員ではじめての訪問や名刺の受け渡しになると、「何を伝えるか」に一生懸命になってしまって、相手目線を忘れがちです。
新入社員のフレッシュな時期は、大目に見てもらえることもあるかもしれませんが、本の最初だけです。
「自分が話すことばかりに意識が向いて、相手を観察する余裕なんてなかった…」
こんな悩みを持つ人ほど、自分目線に陥っています。
常に相手目線で物事を考えることを忘れないようにしましょう。
そうすると、形にこだわらなくても、多少一般的な名刺交換マナーとずれていたとしても、「今日はすばらしい人に出会った」と相手に思ってもらえるような時間になるはずです。
松橋良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家
1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。
約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。
著書
「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)
「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)
「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)
「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)
「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)
公式サイト http://nlp-oneness.com
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