口腔崩壊から見える親から子への負の連鎖 どうすれば断ち切れるか?
口腔崩壊から浮かび上がる社会の根深い問題
「口腔崩壊」、このテーマは口腔内の健康が子供の将来に影響をもたらすといった問題に止まらず、経済格差、失業、ネグレクトなどといった社会の根深い問題を抱えています。
それに対し、社会的に行政的には様々なスキームで解消を図っているようですが、ここで一つ疑問がわいてきます。
それは、行政や社会がいかに口腔内の健康の大切さを訴え、講演会やセミナーなど開催しても、その問題に対して意識の高い人々は集まりますが、本来、聞いてもらいたい当事者の人たちには、その意識の低さから情報が伝わらないのではないのか、という疑問です。
また、仮に伝わったとしても、経済的な理由などで聞く時間が無いということで、ほとんどの対象者が参加しないのではないかという疑問です。
これについて、ネグレクトあるいは親不適格者については言わずもがなです。
要は、行政や社会の努力が肝心の当事者である子どもたちに届いていないのではないかという疑問なのです。
社会通念上、あるいは法的にも子供については、その親が親権者であり責任をもって管理監督をすべきといった意識があります。
しかし、今やこの親頼みの考え方が子供救済の壁になっているのではないでしょうか。
この場合の親は意志の有無にかかわらず、責任を果たすことが出来ないのです。
その親に対する様々な啓蒙、働きかけに意味、意義があるのか、疑問を感じざるを得ません。
親ではなく子どもに直接働きかける方法が有効なのではないか?
この様な話があります。
口腔崩壊している子どもの親もほとんどが口腔崩壊しているということです。
崩壊しているのは、口腔だけではないと思います。
私はこの「口腔崩壊」という現状を通し、子育て全般において「世代間での負の連鎖」が連綿と続いていると感じています。そして、この「負の連鎖」を断ち切れるのは、もはや親世代ではなく子ども世代ではないのでしょうか。
私は現在、小学生を中心とした「学習と能力開発の教室」を運営しています。
特に、能力開発の指導では、解らない出来ないことに対し、他人に頼ることなく自分で考え悩むことを習慣化し、「問題解決の基礎力」である思考力育成を目指しています。この考えに賛同いただいた保護者の方々が子どもたちを私の教室に通わせているのです。
もちろん、教室に通う子どもたちの保護者は子どもに対する意識、関心は高く、子どもを意識することが出来ない程の経済的な困窮からもほど遠い方たちです。
しかし、小学生が自ら考え悩み、苦労して問題を解決することの重要性を感じ、教室に子供たちを通わせ続けているのです。
例え小学生であっても、自分で問題点を見出し自分で考え問題を解決へ導く可能性がある、と私は思います。
すなわち、親を飛び越え子どもに直接働きかけることも有意義な手段ではないかと思うのです。
例えば、学校等で学習として社会や自分を見つめ直す機会を与えます。
そして問題があれば社会や行政のスキームや取り組みなどの選択肢を示し、子ども自身でより良い解決策を見出す指導があっても良いのではないでしょうか。
もちろん、専門家や指導者のサポートは必要です。
そして、特別な事として生活や経済に困窮した子どもだけでなく、大多数の子どもたちに対し自分をを守り助けるためのスキームや取り組み、情報の存在を積極的に伝えることは将来にとっても有意義なことであると思います。
但し、そこには課題があります。
子どもから見ると当たり前の生活文化、環境、あるいは考え方、生き方そのものが、社会一般的に見て否定されてしまう可能性、そして大人でも自分の置かれた状況、不遇に違和感を感じながらも、社会に対し「助けて」「SOS」が言いづらい現状の中、子供の気持ちをいかに感じ取り、引き出す事が出来るか、非常に厳しい場面が想像されるということです。
慎重かつ繊細な指導が期待されます。
社会が子どもたちの潜在力を信じ、自身で考え悩みながらより視野を広げ、より良い選択を可能にすることで、この取り組みが功を奏し、一人でも多くの子どもたちがこれまで逃れることの出来なかった「負の連鎖」から自力で脱出出来る事を期待して止みません。
(増本 真一/)
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