“大きな成果”を出す人は、やっぱり「お願い上手」
あなたは人に頼むのが得意ですか?人に物事をお願いするのはスムーズにできますか?
「ビジネスでうまくいく秘訣を、ひとつ教えてください」と聞かれたら、「人に頼みごとやお願いをするのがうまいこと」と答えたいくらい、頼み方やお願いできる能力は重要です。
人に頼めない人、お願いするのが苦手な人は、人生で大きな損失をしていきます。
では、なぜ人に頼めないのでしょうか?
頼むことで、相手に迷惑がかかるし、嫌われてしまうと思ってしまうのでしょう。また、人に頼ることは、「自分には能力がない人間だ」と思われてしまうという怖れもあります。そういった怖れがベースにあると、人には物事を頼むということができません。なぜなら、「自分は人に比べて優秀だ」というアピールをするためには、他人の力を借りてしまったら台無しですから。
常に、自力だけで結果を出すことに執着しがちです。
こういった人ほど、「ろくな人材がいない」と嘆きます。
職人気質を発揮して、専門性を磨き上げるのはいいのですが、部下や後輩に委ねることができない気質なので、いつまでたっても人が育たないということになります。
その一方で、大きな結果を出している人ほど、次のようなことをおっしゃいます。
「いや~、私なんて何もできないですから。周りのみんながよくやってくれて、この大きな成果を出せたんです。ほんとに、みんなに感謝です」
このように、結果を出す人ほど、「自分はできないけど周りに恵まれた」とおっしゃいます。成果を出す人ほど、お願い上手です。
だから、たくさんの協力者に囲まれているのです。
苦手なことは自分でやるな!
人に頼むことは、思いのほかたくさんのメリットがあります。
1つは、仕事の効率や能率がアップし、スピードが上がるということ。
人間ひとりでできる仕事は限られています。どんなに能力があって、頭の良い人間でも、不得意な分野というのはあります。そこを全部ひとりでカバーしようとしたら、どうなるでしょう?とても手間や時間がかかってしまいますね。
私の主な仕事は、文章を書いて、講演をすることです。独立したばかりのときに、自力でホームページを作り始めました。バナーの制作にチャレンジしたことがあります。
画像を組み合わせて、文字を入れて、数週間かけてようやく仕上げたものの、何が悪いのか、とてもダサい感じがして、悩んでました。
そんなときに、デザイナーと打ち合わせをする機会があり、相談したら、「ちょっと待って下さい」といって加工し始めたら、5分もしないうちに、すばらしいものに出来上がりました。
「どうしたら、そういったことをいとも簡単にできるようになるのか?」と尋ねたら、
「美術学校を卒業して、10年くらいやってますから、あたりまえですよ」
このときに決めました。
「自分が苦手なことは、やってはいけない。得意な人に頼むべきだ。苦手なことを克服しようとする時間は、とてもムダなことだ」と。
世の中にはいろんな人間がいます。あなたがとても苦手だと思うことを、すんなりとやり遂げてしまう人はたくさんいます。それなら、自分の得意なことは自分でやる。自分の不得意なことは、得意な人に任せる。
そのほうが、効率よく物事が進みます。
頼られるとうれしい心理
人は、人から頼られると、うれしいものです。なぜなら人は、「人の助けになりたい」というプログラムが組み込まれているからです。
「持っている知識や経験を誰かに伝えたい」
「自分の能力で誰かを助けたい」
そんな欲求を潜在的に持っているのです。
あなたが誰かを頼ってお願いをすることは、相手の承認欲求を満たします。迷惑などころか、相手を喜ばせることにも繋がります。
男性を動かすのがうまい女性は、自分ができる簡単なことでさえも頼みます。
「ねえ、あそこの電球が切れたんだけど、交換してくれる?」
そして、交換したら、
「すごい~!頼りになるわ~」
この一言で、男性はドヤ顔です。
特に男性は、常にヒーローになりたいのです。誰かの役に立っていることがうれしい心理を考えれば、頼まない方が失礼といってもいいくらいです。
人にお願いをするときのコツとは?
人に何かをお願いをするときは、部下や後輩であっても、単に「これをやってくれ」「これ、お願い!」と伝えるだけでは不十分です。
上司と部下、先輩と後輩の関係であっても、命令したり、単純な依頼をするのは、協力者を増やすことになりません。このような頼み方だと、相手の承認欲求は満たされませんので、あなたのためにしっかりやろうという気持ちを起こさせることにもつながらないからです。
その逆で、仕事ができる人は、相手の承認欲求が満たされるような頼み方をします。
例を挙げてみましょう。次の2つの文を比べてみてください。
A:「この資料を明日までに完成させなければいけないんですけど、手伝ってもらっていいですか?」
B:「この資料を明後日までに完成させなくちゃいけないんです。松橋さんは説得力のあるデータ作りがすごく上手なので、社長もきっと喜ぶと思うんです。手伝ってもらってえるととても助かるんですけど、どうかな?」
あなたが仕事を頼まれる立場だとしたら、どちらの頼み方により好感を抱きますか?
おそらく、Bのほうですよね。
Bは、「あなただからこそお願いしたい」という、相手の能力に対する敬意や尊敬の念が伝わってきます。
このように頼まれたら、多くの人は、「この人のためなら人肌脱ごう!」「協力してあげよう!」と思うわけです。
さらに、相手が頼みごとを引き受けてくれたときは、心から感謝の気持ちを伝えることも忘れないようにしましょう。「ありがとう」という言葉と、引き受けてくれたことでどれだけ助かったかを伝えることで、相手の承認欲求はさらに満たされます。
そして、ねぎらいを込めていいましょう。
「ありがとう!今度、駅前に松橋さんが好きそうな立ち飲み屋見つけたから、ビールおごるよ!」
「また松橋さんの好きなワインが手に入ったら持ってくるね!」など、相手の好きそうなものを考えて、今度それをお礼にするように伝えます。
相手の好きそうなものが特に思いつかない場合は、「松橋さんが困ったときは協力するから、なんでも言ってね!」でもいいでしょう。
人に頼めない人の特徴とは?
人に頼めない人は、しっかり者と周囲から言われるようなタイプ、つまり「真面目でがんばり屋さん」が多いようです。
そういう人の頭の中には、「人に頼ってはいけない」「なんでも自分の力でやりきらなければいけない」という固定観念が染み付いています。これには、親から言われてきた言葉の影響が大きく関わっています。
特に「人に迷惑をかけないようにしなさい」と教え込まれる人が多いようです。するとかなりの確率で人に頼むことをしなくなります。「人に頼むことは、悪いこと」となってしまっているんですね。
しかし、人に頼むことは、仕事を効率化して、さらに相手の承認欲求も満たせる、すばらしい行為なのです。
これからあなたが社会で活躍していくなら、人を頼むスキルはとても大切です。
ウォルト・ディズニーは言います。
「一人の人間が大きな業績を上げるためには、多くの人の手と気持ちと知力が必要になるのです」
ディズニー・ランドの成功も、ウォルト・ディズニーひとりの人間の力ではなく、たくさんの協力者のおかげということでしょう。また、成功哲学の祖、ナポレオン・ヒルは、「“マスターマインド”の協力なしで、偉大な力を発揮し得た人はいません」と言います。
“マスターマインド”とは、ある明確な目標を達成するために、知識や脳力を結集し、完全な調和の精神を持って働く、協力者のグループのことです。
「人に頼むのが苦手」
「なんでも一人でやってしまう」
「なんでも一人でやったほうがラク…」
そんな人は、これからは少しずつでもいいので、周りの人を巻き込んで仕事をすることを心がけてみましょう。
きっと、仕事の質も、人生の質も、さらに良くなっていくでしょう。
松橋良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家
1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。
約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。
著書
「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)
「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)
「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)
「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)
「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)
公式サイト http://nlp-oneness.com
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