【寄稿連載】第十一話 ホームレスのデモ、始まる

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ホームレスのおっちゃんの溜め息

今回は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

第十一話 ホームレスのデモ、始まる

俺は迷っていた。どちらにつくべきかを。
神さんにつくべきか、黒さんにつくべきか、毎日のように考えていた。そんなことをしているうちにデモの日が来た。俺はとりあえず、デモの集合場所へ向かっていた。

デモをするときは、最低でも二週間前に警察へ連絡することが必要である。そして許可をもらわなければならない。内容によっては許可がもらえないこともある。勝手にデモをやることはできないのである。

俺が集合場所についたとき、もうデモの参加者はほとんど集まっていた。黒さんの姿も見えた。代表者の人がマイクロフォンで、このデモの主旨やルートや時間などを説明している。

そのデモ隊をとり囲むように、機動隊や警察官が多数あつまっている。公安の人の姿も見える。公安の人たちは必死にカメラで写真を撮ったり、ビデオを回したりして、デモ隊に参加した人々の顔を撮っている。これは、今後のデモの参考資料にするためである。そしてデモに出て公安の人に目をつけられると、そのあと知らぬ間に尾行がついたりすることもあるらしい。

いよいよデモが始まった。警察官の先導で行進が始まり、俺は黒さんたちの後ろのほうに並んでついていく。みんな手作りののぼりや横断幕を掲げている。
公安からは、横断幕やのぼりにも注文がつけられる場合がある。今回もいくつかの横断幕やのぼりがNGとなった。

デモ隊は最初に決められたルートを守りつつ進んでいく。その進行について、警察や機動隊が目を光らせている。少しでも変なことをやろうとすると、すぐに注意される。そしてその横を公安や警察官が先回りして、写真やビデオを撮りまくっている。だからデモ隊に参加している人のなかには、マスクをしたりメガネやサングラスをして、顔が分からないようにしている人がいる。

デモ主催者などはデモをやろうとすると、別件でそのデモ前日に警察に連れていかれたりする場合もあるのだ。そのためか、このデモの参加者の半分近くの人がマスクをしていた。俺も人からマスクを貸してもらった。俺は初めての参加なので、ドキドキしながらみんなについていった。

続く

執筆: この記事は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

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