食べずにはいられない!? 世界の「へんな肉」が大集合
旅の楽しみが、「食」と言う人は多いでしょう。その土地ならではの味は、旅の思い出を一層鮮やかなものにし、忘れがたい記憶として心に残るものです。
世界の100以上の国や地域を旅して、あちこちで珍しい動物の肉を食べたという著者の白石あづささんは、本書『世界のへんな肉』の中で、そのきっかけを次のように述べています。
「国が変われば食材や調理法が変わるため、市場で珍しい野菜や果物、香辛料を見かけて驚くこともしばしば。しかし、一番衝撃を受けたのは、その国で食べられている肉や魚でした。(中略)ペットだと思っていた動物が市場で干物にされて売られていたり、”生き物”だと思っていたかわいい動物が、現地のレストランで”食べ物”としてメニューに載っていると、『かわいそう』と思いつつも、いつしか『もしかしたら…すごく、おいしいのかも』と、ついチャレンジしたくなったのです。」
イランで出会ったかわいい女子大生が勧めてくれたサンドイッチは、ヒツジの脳みそがコッペパンに挟んであるもの。うろたえながらも、意を決して一口食べてみると、意外にもふわふわっとした白子のような味で、「なぜ日本では食べないのかしら?」と思ってしまったとか。
ケニアでサファリツアーに参加した時は、チーターがインパラを襲って食べているのを見て「不思議なもので、一心不乱に肉をむさぼるチーターたちを見ているうち、『かわいそう』とついさっきまで思っていたのに、だんだんインパラが旨そうに思えてくる」と、さっそくナイロビのレストランでインパラの肉を注文します。その感想は、「肉の塊を一口かじると、ウシのように歯ごたえがあり、ウシのように赤身と脂身のバランスがよく、ウシのように飽きのこない癖の少ない味…って、これ、まるで牛肉ではないか!?」調べてみれば、インパラはかわいいバンビのような姿をしていても、実はウシ科の動物だと分かり、チーターのグルメぶりを思い知るのです。
他にも、グアテマラでアルマジロのブラウンシチューに舌鼓を打ち、スウェーデンではトナカイの赤身のカルパッチョに思わずツバをごっくん、などなど、美味しい思い出もあれば、中国・福建省のアモイで遭遇したカブトガニには苦い記憶も。「日本では繁殖地が天然記念物に指定されているほど貴重な生き物なのに、こっちでは食べ物なのか」と驚きつつ食べてみたものの、カニの味がしないと首を捻ります。後日カブトガニはカニではなく、クモやサソリに近いと知り、「あれは海鮮料理ではなくて、クモの卵炒め。これは知りたくなかった」と一言。
「さまざまな肉にチャレンジするきっかけとなったのは、現地の人たちとのたくさんの出会いや交流があったからです。(中略)旅のおもしろさは、いい人も悪い人も、動物も食べ物もひっくるめて出会いなのだと思います。私が今も旅を続けている理由はそこにあるのかも知れません。」(本書より)
本書には、明るくたくましく生きる庶民の姿がコミカルなタッチで、生き生きと描かれています。「へんな肉」をめぐる人種や宗教を越えた人間同士の触れ合いに、ほっこりとした温かさを感じる一冊です。
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