やってはいけない「励まし方」、効果的な「励まし方」
▲「先輩、実は相談が…」どうやら仕事で大きなミスをしてしまったらしい…あなたならどうやって励ましますか?
「私ったらいつもよく考えずに行動して失敗ばかりで…本当にダメだわ…」
「また部長に怒られてしまいました。この仕事に向いていないみたいです…」
このように同僚や後輩が落ち込んでいたら、あなたはどんな風に励ましていますか?
1.「この場合は、こう考えればいいんだよ」とアドバイスをする。
2.「がんばれよ!」「お前なら大丈夫だよ!」と明るい声で励ます。
3.「いやいや、俺なんてもっともっとひどかった」と自分の話をして励ます。
4.「よし、ストレス発散にカラオケでも行こう!」と気を紛らわす。
5.「この前、すごくいい仕事をしたじゃないか!あれはすごかった」と明るい話題で励ます。
励まし方は、この5つのうちいずれかでしょう。
このような励まし方をしている方は多いのではないでしょうか?
しかし、これらの励まし方は、相手にとってあまり意味がありません。実はやってはいけない励まし方なのです。
このような励まし方をしてしまうのは、特に男性に多いようです。
なぜ悪いのかを、説明しましょう。
1.アドバイスしてしまう
特に男性は、悩み事や愚痴を言われると、「解決してあげなくちゃ」と思います。
しかし、相手はアドバイスや励ましの言葉がほしくて、あなたに悩みや愚痴を言っているとは限りません。
相手が女性ならなおさらです。ただただ、自分の気持ちや境遇に共感してほしいだけのときのほうが、圧倒的に多いのです。
あなたがよかれと思って言ったアドバイスは、実は相手にとっては「内容も把握していない、ピンとのずれた余計なお世話」になっている可能性が高いです。
2.「がんばれ」と励ます
本人は本人なりにベストを尽くした結果、うまくいかないから落ち込みます。「がんばれ」という言葉は、「お前はがんばってない。やることをやってないぞ」という意味を感じさせてしまう危険をはらんでいるものです。
3.自分の話を例にして励ますパターン
一見すると相手を思いやった励ましをしているようですが、話ドロボウをした挙句、結果的に自分の自慢ストーリーになってしまうことがほとんどです。
4.気を紛らわすパターン
飲みに行っても、カラオケに行っても、悩みの根本解決にはならないことは明白です。
5.明るい話題で励ますパターン
「この前、すごくいい仕事をしたじゃないか!あれはすごかった」と、成功体験を引き出す励まし方は、この5つの中ではもっともいいです。ですが、あることをしないでいきなりこれをやると、心のバランスが保てません。
このように、ほとんどの人は、5つのどれかで励まします。
では、落ち込んでいる同僚や後輩を前にしたときに、どんな対応をするのがベストなのでしょうか?
まずは心のバケツの泥水を吐き出させてあげよう
相手が落ち込んでいるときに大切なのは、その心にたまった泥水を捨ててもらうことです。
相手が悩み事や愚痴を他人に打ち明けるときというのは、心のバケツに泥水がたまって溢れている状態です。
心のバケツがいっぱいの状態では、きれいな水を受け入れる余裕がないということです。
どんなアドバイスも励ましも、受け取れる状態ではないのです。
まずは心の中の泥水を、すべて吐き出させてあげることが大切なのです。
そのために必要なのが傾聴です。
「なにがあったの?」「どうしたの?」「どうしてそう思うの?」と、話を促しながら、とにかく聴くことです。
あなたのアドバイスや励ましは、その時点では不要です。
誰かに聴いてもらうことでしか、心のバケツにたまった泥水を吐き出す方法はないのです。
「あなたの話を聴いていますよ」ということを示すのに有効なのが、オウム返しです。
たとえば、後輩が
「また部長に怒られてしまいました。この仕事に向いていないみたいです・・・」
と言ったら、「そうなんだ、部長に怒られたんだ…」とだけ返します。
そしてそれからは、相手の言葉を沈黙して待ちます。
そうすると相手は、こちらが話を促さなくても、いろいろ話し出してくるでしょう。
その話を、相槌を打ちながら、とにかく聴きます。
途中でアドバイスや口出しをしたくなっても、ぐっとガマンです。
話を聴くというのは、それだけで相手の心を癒す行為です。
心の悩みを解決する仕事といえば、カウンセラーでしょう。
カウンセラー養成講座で最初に教わるのが、聴き方の技術です。
カウンセラーの仕事は、9割が聴く仕事と言ってもいいでしょう。
それぐらい、人の話を聴くことは大切なのです。
しばらく話を聞いていると、そのうち相手が「なんか悩んでいるのがバカらしくなってきたなあ」「なんだかスッキリしてきました」と言ってきたら、あなたは相当の聴き上手です。
相手の心は、どんな偉い人の励ましを受けたときよりも、晴れやかになっていることでしょう。そこを目指しましょう。
相手を成長させる魔法とは?
人が育たない。
このように嘆く管理職は多いです。
それは、ある失敗をしているからです。
部下や後輩から仕事についての質問があると思います。
そんなとき、すぐアドバイスをするのはNGです。
その時の対応は、先程の悩み相談と同じく、聴くことを中心にすることで、人を育てることができます。
こう言うのです。
「そうだなあ…君は、どうすればいいと思うの?」
このように問えば、相手はまた自分の考えを語りだすでしょう。
もし間違っていても、いったんは、それに「とってもいい考えだね」「なるほどね」と賛同してください。
次に、「自分だったら、こうするかなあ。どう思う?」と尋ねます。
このような伝え方なら、押し付けがましさがありません。
部下のやる気に火をつけて、自発的な部下に成長させていきます。
簡単にアドバイスをすることは、人の成長を妨げます。
人の自発的な行動を引き出して、成長させるためにも、聞き方と質問を駆使していきましょう。
松橋良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家
1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。
約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。
著書
「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)
「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)
「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)
「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)
「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)
公式サイト http://nlp-oneness.com
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