Aya Gloomy『Ennui Ground』Interview
世界のインディーズシーンから一目置かれる原宿のレコードショップ兼レーベル、BIG LOVE。そのサブレーベルとして新たに設立されたSTBO Recordingsの第1弾アーティストとして、ファーストEP『Ennui Ground』を携えて登場したのが、謎多き22歳のニューカマー、Aya Gloomyだ。原宿から世界へ、今まさに彼女は新たな音楽を発信しようとしている。
――まずは自己紹介をお願いします。
Aya「2月14日にファーストEP『Ennui Ground』をリリースした22歳です。音楽のほか、ハンドペインティングとネットでPOMPOM SHOPというヴィンテージ・クローズのお店をやっていて。そこでは、90sものを中心に、私がアメリカで買い付けてきたアイテム、自分が好きなものや自分が普段着ているようなものを売っています」
――音楽を始めたのはいつから?
Aya「中学生の時に私のギター、ヴォーカルでバンドを始めて、高校の時には軽音部に入って、その頃、曲を作り始めました。当初は自分が伝えたフレーズを他のメンバーに弾いてもらうという感じだったんですけど、他の人に気を使いつつも、そのやり方では納得出来るものが作れなかったので、ラップトップを手に入れてからはベースやドラムといった全ての楽器を打ち込んで自分一人で作るようになったんです。そして、そういう経験を通じて、私は一人でやる方があってるんだなって思いました」
――当時はどんな音楽に影響を受けたんですか?
Aya「メジャーなサウンド、プロデューサーがいて、作り込まれた奇麗でクリアな音楽はあんまりぴんと来なくて、理由は分からないんですけど、自分たちで作ったDIYな音楽に惹かれるものがあります。例えば、ChromaticsやGlass Candyだったり、音だけじゃなく、映像もセンスがいいバンドをYouTubeで見つけて、その関連動画から海外のインディーズをあれこれ聴くようになりました。周りにはそういう音楽を聴く友達はいなかったんですけど、私は小さい頃から音楽もそうなんですけど、絵とか写真を全て感覚的に選んできて、特に色味やその組み合わせのチョイスだったり、自分の選んだものには自信があったし、みんなが知らないものを知っていることに優越感を感じていたところもあります(笑)」
――絵やファッションだけでなく、音楽においても使う音色やその組み合わせ、そのバランスも意識されていますか?
Aya「音とか声のバランスがばっちり合ったものは、わ!って思うし、音楽とヴィジュアル、ファッションも自分のなかでは繋がっていて、表現者として、服がダサかったら、全然好きになれないし、見た目を含めて、自分のスタイルがなにより大切だと思うんです。音楽をやっている人は意外と服に興味がない人が多くて、何でだろう?って思うんですけど、逆にファッションの人は音楽に興味がなかったりして、どちらも自分からするともったいないなって」
――では、Ayaさんから見て、その両方を兼ね備えた理想のアーティストは?
Aya「昔のアーティストですけど、スージー&ザ・バンシーズのスージー・スーは音楽とファッションがマッチしてて、私にとっての憧れです。今のアーティストだと、FKAツイッグスかな。彼女はスタイルと音楽が合っていると思います」
――今回のEPのリリース元であるレーベル兼レコードショップのBIG LOVEとの出会いは?
Aya「BIG LOVEに初めて行ったのは、高校2年生の時です。最初の頃は2、3ヵ月に1回の頻度で足を運んでいて、その時は音楽を作って、楽しければいいやという感じだったんですけど、毎日のように通って、仲(真史/BIG LOVEオーナ—)さんと話すようになってから、何が格好いいのか、自分が何をするべきなのかということが自然と分かるようになりました。お店でレコードを買うようになって、まぁ、ダウンロードは楽だったりもするんですけど、レコードを手にすると、その音楽や作った人のことがもっともっと好きになるんです。そんな感じで色々吸収するなかで、仲さんからリリースのお話をいただいたことは、自分にとって大きな出来事でした」
――1曲を除いて全てご自分で手掛けた今回の5曲入りEPは、ご自身のヴォーカルが紡ぐキャッチーなメロディやビートをフィーチャーしたエレクトロニックミュージックでありながら、ダンスフロアでの機能性を意識せず、フリーフォームな構成や歌詞世界が個々の楽曲の個性を色濃く打ち出していますよね。
Aya「私の曲は、ドラムかベースを最初に作ってから、そこに上モノを重ねたものをずっとループで流しながら、シンセサイザーを弾きながら歌って、メロディを考えたり、音を抜いたり足したりしながら、曲を作り上げていくんです。私の曲には歌がずっと入っているので、ダンスミュージックにはならないというか、ダンスミュージックのように盛り上げることを考えたり、構成を決めたりせず、感覚的に作っているので、逆に盛り上がらない曲が出来ちゃったりもするんです」
――Aya Gloomyというアーティスト名にも“憂鬱な”という意味の“Gloomy”という言葉が含まれていますし、今回のデビューEPの作品タイトル『Ennui Ground』にも倦怠や退屈を意味する“Ennui”という言葉が付けられていたり、作品世界にも物憂げな感情が織り込まれていますよね。
Aya「私の見た目はすごく激しいけど(笑)、内面にはダークなものがあって、落ち込んだりすることも多いから、自分の作品ではバランスを取って、その中間でありたいと思っているんですけど」
――では、Ayaさんがイメージする作品の色味についてはいかがでしょう?
Aya「曲によって色味を変えていて、作品を通じてカラフルな色を表現したんですけど、1曲目の“my eyes”は赤、2曲目の“Drive”は夜の街のネオンとか車のヘッドライトがいっぱい灯ってるオレンジのイメージ。3曲目の“Fade Away”と海について歌っている4曲目の“I Sink”は青、5曲目の“U”はグレーかな(笑)。この曲だけ、Evian Volvikとの共作曲で、彼からサンプリングの素材をもらって、そこに私がヴォーカルを入れて、一夜で作ったんです。その時はすごく辛いことがあって、酔っ払って帰ってきて、気持ちがいっぱいいっぱいになった状態で歌った曲だったりして、この作品は私らしい、そういう色んな色、色んな感情の曲を集めたデビューEPなんですけど、次はコンセプトをもとにした作品を作ろうと思っています」
――今の時代、アイドルのように演じるエンターテインメントやファンタジーを形にする音楽だったり、色んな音楽のアプローチがありますけど、Ayaさんは歌もののエレクトロポップをツールに、自分らしさを表現したい?
Aya「本人がやりたければ、それはそれでいいんですけど、アイドルのように、女の子が作られた可愛らしさを押しつけられたり、媚びを売ったりしているのを見ると辛くなるんです。自分がやりたいことをそのままやればいいじゃんって思ってしまって。表現をするなら、自分がやりたいことをやるべきだし、そういう思いがあったら、それはみんなにも分かると思うんです」
――自分らしい強い意志の主張という意味で、ここ最近はAbra、Princess Nokia、Tommy Genesisといった新世代の女性ラッパーが好きだとか?
Aya「彼女たちは新しいことをやっているし、自分のスタイルを表現している、今の時代に意味のある音楽だと思います。自分でもラップをやりたいと思ったりもするけど、口が回らないので(笑)、自分には出来ないし、出来ないからこそ、格好いいと思う。それに人と同じことをやってもしょうがないし、自分にしか出来ないことをやらないと意味ないなって。今の日本の女性アーティストにはインディペンデントな人があまりいないというか、むしろ、可愛いキャラクターみたいな音楽の国として捉えられているじゃないですか?だからこそ、私としては世界のインディペンデントな女性アーティストたちと同じように見られるというか、東京にはこんなヤバいアーティストがいるって思ってもらえるようにならなければいけないなと頑張っています」
――原宿というと、Kawaiiカルチャーの街でもあるけれど、世界のインディーズ・シーンから一目置かれているBIG LOVE RECORDSがある街でもあるわけで。
Aya「だから、『Ennui Ground』のジャケット写真もホントは原宿で撮りたかったんですけど、たまたま、渋谷の街でパトカーが停まってるところに遭遇して、今しかないって撮影したんです。私にとって、今の原宿は、キッズが安いお店でバンバン服を買うだけのすごいダサい街(笑)。これが日本だと思われるのはすごくイヤなんです。だからこそ、世界でもこんなお店は他にないBIG LOVE RECORDSからインディペンデントな音楽を発信していきたいなって」
photo Riku Ikeya
interview & text Yu Onoda
edit Ryoko Kuwahara
Aya Gloomy
『Ennui Ground』
(STBO Recordings)
http://www.bigloverecords.jp/201702/aya-gloomy.html
https://soundcloud.com/bigloverecords/aya-gloomy-drive-1
Aya Gloomy
https://soundcloud.com/ayagloomy
https://www.instagram.com/aya_gloomy/
https://www.instagram.com/pompomshop_tokyo/
BIG LOVE
http://www.bigloverecords.jp
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
ウェブサイト: http://www.neol.jp/
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