イケメンに下った天罰とは!? （犬山紙子のイラストエッセイ）

今日はとあるイケメンの話を書きましょうかね。

あれは去年の秋ごろ。

私とMちゃんで三軒茶屋でご飯を食べ、その後居酒屋に移動したら、偶然にもMちゃんの男友だちがいた。
いかにも、アパレル系の男集団5人組で、そのうちの一人がMちゃんを見るなり
「おう！　Mちゃんじゃん！　一緒に飲もうよ」
と言ってきたので合流することに。

私はそのアパレル軍団をぐるっと見回して
“高そうなサングラスを着こなすやつは信用ならん！”
と意味も特にない、勝手な格言を作っていたのだけど、Mちゃんは普通に口説かれていた。

主に口説いていたのが
「スパイク」
と名乗る革ジャンロンゲサングラスのワイルドな男（もちろん日本人）。

男に口説かれるのに慣れているMちゃんは適当に流していたけど、めげずにずーーっと口説いてる。

中でも印象的だったのが、
スパイク：「趣味は何？　え？　読書？　何読むの？」
Mちゃん：「『疾走する月の秘密』」
スパイクが、それをメモってたことである。

口説き相手が好きな本のタイトルメモるって、結構本気か!?　だって、メモるってその後本当にチェックしようと思ってないとしないじゃん……。

で、もうちょっと観察したくなった私は、その後流れたカラオケにも参加。
スパイクは斉藤和義の『ずっと好きだった』をやたらと上手い声でMちゃんに熱唱。
ずっと好きだったもクソもさっき会ったばかりだろが！　と思ったけど「歌詞をうのみにして突っ込むのも寒いかな」と思い直したりもした。

そして、Mちゃんに向かって「ちょっとちょっと！」と手招きをして呼んで隣に座らせ、聞かれもしていないのに“自分には彼女が半年いない”アピールをし始めた。
どれもこれも、イケメンだからここまで堂々とできるんだろうなーと思う口説き方。

で、友だちとの連携プレイでMちゃんの連絡先をゲットするスパイク。

スパイク：「あれ？　俺の携帯どこいったっけ？　ちょっと鳴らしてくれない？」　
　　　　　↓
友だち：聞こえないフリ
　　　　　↓
スパイク：みんな聞こえてない、しかたないなー、という顔をしながら、「ねえ、Mちゃん電話鳴らしてもらっていい？」の流れ。

やだとは言いにくい。なんか連絡先の聞き方だけコスい。まあ、いいや。
で、連絡先交換した2人。

しかし、1か月後、Mちゃんは「男友だちより立場が上の人だったから連絡先教えたけど、もう交換してからはメールは全部無視してる」と言ってたので、スパイクのイケメンノリの口説きは失敗したようである。

「つってもスパイクイケメンだし、彼女もいないからいいんじゃないの？」
と聞くと（Mちゃんは普通にイケメン好き）
「なんかアイツはいやなんだよねー」
とのこと。

で、その日の夜コンビニにてMちゃんと。

男性ファッション誌の“オシャレ兄貴スナップ”にスパイクが載っていた。

名前
「スパイク・ファンキー」（ファンキーがついてるｗｗｗ）

好きな本
『疾走する月の秘密』

「彼女・いる」

そう。イケメンはウソを吐いたとて、ファッションスナップで彼女の有無がばれるのである……。まあ、うさん臭いとは思ってたけど、やっぱ彼女はいたか。

彼女がいるのがバレたのも超きまずいけど、好きな本で、Mちゃんが言ってた『疾走する月の秘密』を使っているところのほうが恥ずかしい。
タイトルがかっこいいとでも思ったのだろうか。

ププー！　あの時メモッてたのはこれのためか！
本を読まないから、本好きのMちゃんの好きなタイトルをパクッて玄人感を出そうとしたのだろう。
しかし、Mちゃんがとんでもないことをつぶやいた。

「『疾走する月の秘密』って、BL本のタイトルなんだけど…………………」

…………………!!!
そうだ、MちゃんBLも読むんだった!!!
ちょ…………………!!!
スパイクファンキー、好きな本、BL!!!!!

オシャレ兄貴の好きな本、BL!!!!!!

それじゃマジのアニキだよ!!!!!!!!!!!!!

私とMちゃんもー、笑いがとまらない。コンビニで迷惑をかけるほどに大爆笑。彼女がいないといった天罰か。記念にその雑誌は買って帰った。

で、“高そうなサングラスを着こなしてる男はうさん臭い”を“高そうなサングラスを着こなしてる男はBL好き”に変更しておきました。

それにしても、スパイクのオシャレ仲間に、BLって気づかれたら面白いのになあ。

おわり★

※「犬山紙子のイラストエッセイ　負け美女」より転載