「家賃保証」でも家賃が減額?サブリース契約の大きな落とし穴とは
サブリースは通常の賃貸借契約と同じ。契約内容に関わらず家賃減額請求も
2017年2月22日、愛知県の男性がサブリース大手のレオパレス21を相手取り、訴訟を起こしました。
訴状や報道によると、「10年間は賃料が変わりません」というサブリース契約を前提として、2階建て賃貸アパート(20戸)を建てたにも関わらず、6年後に賃料を減額されたというものです。
当初、同社の経営が悪化しているという理由だったため賃料減額に応じたものの、業績が回復しても賃料は元に戻りませんでした。
オーナーとレオパレス21の間での話し合いも決裂、減額分の支払いを求めオーナー側が訴訟に踏み切ったのです。
一般的なサブリース契約は、賃貸アパート・マンションを保有するオーナーから、すべての部屋を一括してサブリース会社が借り受け、その借りた部屋を転貸(又貸し)します。
サブリース会社はオーナーへ支払う家賃と、転借人(又貸しした入居者)からもらう家賃の差額を収益とします。
オーナーからみれば、空室があってもサブリース会社から家賃収入が得られるため、不動産経営に詳しくなくても安心できる契約にみえます。
この仕組みは「家賃保証」などとも呼ばれ、ノーリスクで賃貸経営できるかのような誤解を与えます。
しかしサブリース契約はなんら特別な契約ではなく、通常の賃貸契約とほとんど同じものです。
又貸しを許可するというだけです。
今回も問題となった「家賃保証」については、通常の入居者が毎月家賃を支払うのと同じように、契約中は家賃を支払うという当たり前のことをいっているに過ぎません。
家賃を「支払う」ことを保証するだけであり、「額」は保証しないのです。
仮にサブリース会社が「10年間家賃を減額しません!」という特約をつけていたとしても、借主(サブリース会社)を手厚く保護する借地借家法が適用され、争いが生じた場合にはその特約が無効になる可能性が極めて高いのです。
借地借家法第32条には、地価や経済事情の変動、周辺相場などに照らし合わせ、賃料水準が不相応となった場合には「契約の条件にかかわらず」家賃の増減を相手方に請求できると明記されています。
サブリース会社からの一方的な中途解約も可能。オーナーからの解約は困難
サブリース契約は、サブリース会社からの一方的な解約も可能です。
たとえ契約書中に「中途解約を禁止する」という条項があったとしても、借主の利益を一方的に害する特約として、これは無効とみなされるためです。
一方でその逆、つまり貸主(オーナー)からの解約は簡単ではなく、期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知を出すことに加え、借地借家法の定める「正当事由」が求められます。
このように、通常の賃貸契約と同じく、更新時期などに家賃の減額や解約がなされるリスクが高い契約であり、かつ、オーナーは解約したくても容易にできないという一方的な契約です。
つまり、サブリース契約で「10年間家賃保証!解約しません!」などと書かれていても、事実上、その条文は意味をなしません。
だからこそトラブルになりやすいのです。
もちろん、家賃減額に応じず争うことも一つの方法ですが、サブリース会社から「家賃の減額に応じないなら契約を解約する」という脅し文句を突き付けられる場合があります。
より悪質な場合は、転貸している入居者を、解約前に自社の物件へ移動させ、オーナーの物件を全部屋空室にする手段にでるところもあるのです。
ずさんになりがちな建物の管理。契約が切れたころには物件がボロボロ?
サブリース契約では、入退去時の原状回復工事・クリーニング費用などはサブリース会社が負担をする一方、設備入れ替えや経年劣化による建物修繕はオーナー負担とすることが一般的です。
この場合、サブリース会社は管理費を削減して利益を拡大しようというインセンティブが働き、ずさんなメンテナンスとなってしまうリスクがあります。
例えば10年間のサブリース契約であれば、10年間だけ持ちこたえればいいという方針で管理されてしまう恐れがあります。
ろくにクリーニングもせず、そのまま入退去を繰り返させるのです。
オーナーに不動産が返却されたころには建物が傷んでしまい、その後に大きな修繕費をオーナーが負担しなければならなくなります。
また、リフォーム業者も指定業者であることが少なくなく、その場合には割高な費用が請求されがちちです。
相見積もりが取れないことで、価格競争が発生しないためです。
一度サブリース契約を結んでしまえば解約されにくいことを知っているため、オーナーに不利な内容で契約を取り、収益をあげようと考えるのです。
定期借家で中途解約・家賃減額を禁止する特約を付す。健全な不動産投資を
サブリース契約は、収益を度外視して「賃貸経営をすべて丸投げしたい」というオーナー向けの契約方法といえます。
家賃の水準も保証されず、契約を一方的に解約されるリスクもあります。
逆に、オーナー側から解約したいと思っても一筋縄ではいきません。
それでも尚、賃貸経営の初心者であり当初はサブリース契約としたい場合には、“普通”借家ではなく“定期”借家契約とした上で「契約期間中は、中途解約も家賃減額請求もできない」旨の特約を盛り込みましょう。
定期借家の場合には、(当事者間で著しく不合理な内容となっていない限り)これらの特約が有効になります。
また、期間満了をもって契約は終了し、自動更新されることもありません。
さらに、「転借人(実際の入居者)の情報をオーナーに報告する」などの条文も盛り込み、定期的に転貸状況を報告させるようにしましょう。
万が一、解約される際に入居者をごっそり他の物件に持っていかれることを防ぐ意味合いもあります。
定期借家を受け入れてもらえない場合にはサブリース契約を無理に結ばないことも一つの選択肢です。
そもそも、仮にオーナー自身で賃貸経営を行う場合に不安を感じるならば、不動産投資そのものを行わないことをおすすめします。
ノーリスクでリターンが得られる投資など存在しません。
ぜひとも健全な不動産投資を行ってくださいね。
(加藤 豊/不動産コンサルタント)
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