宇宙特集:映像作家・山田健人(dutch_tokyo)インタビュー/Kento Yamada Interview

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yahyel、KANDYTOWN、SuchmosのMVを初期より手がけ、宇多田ヒカル“忘却 featuring KOHH”を機に気鋭の映像作家として名を馳せている山田健人。作品内での光や質感でのスペーシーな表現に留まらず、彼がものづくりをするうえでの考え方や共通認識の作り方に至るまでに天から地を眺めるような「高い視点」が組み込まれている。


——中学の頃からゲームを作ったりしていたそうですが、理系だったんですか?

山田「いや、どちらかと言えば文系でしたね。面白いゲームがないから自分で作りたいという目的が先あって、後付けで作り方を学んでシューティングゲームを作ったんですよ。そういえばあのゲームの舞台が宇宙でした(笑)。
docomoのiアプリで、言語で言うとjavaっていうやつで作っていて。友だちに配って遊んでもらうと誰かがバグとか見つけてくれるので、そのフィードバックをもらってさらにヴァージョンアップして、というのでVol.3まで作りました。Vol.2で、当時のアプリストアのダウンロード数全国20位までいったんです。最初は作りたいだけだったけど、やるうちにもっと多くの人に届けたいと思い始めて。20位以上はアプリストアのトップページに載るので、絶対そこに入ろうと改良に改良を重ねて、作り始めてちょうど1年後くらいに達成しました。
わりと僕は目的が先に立つタイプで、そのために足りないものを埋める作業をしていく。元々パソコンに強いわけじゃないけど、プログラミングのためにはパソコンの基本的なことをわかっていなくてはいけない。やったことがなくても勉強する。映像も、全部そうなんですよ」

——以前からもの作りが好きだったんですか?

山田「はい。絵を描いたり、レゴもよくやっていて。授業でいうと図工のクラスが好きでしたけど、彫刻とか決まった素材でしか彫っていくことができないものはあまり興味がなかったです。0から100でなんでも作って良いというのが好きでした。
ソフトウェアは無限のことが起きる。ある意味、パソコンの中の宇宙で、材料や制約がないですからおもしろくて。でも高校ではゲーム作りはやめていて、ハードウェアにハマっていたんですよ。アンプを作ったり、ゲーム機を改造したりという電子工作をしていて。そうやってソフトウェアからハードウェアまでいったけれど、ソフトウェアはパソコン一台あれば頑張し次第でなんでもできるのに比べて、ハードウェアは資材を買わないといけないからお金がかかるんですよね。それで結局出来上がったものを買ったほうがいいという結論になったけど(笑)、勉強したおかげでハードにも強くなれました」

——高校ではアメフトもやっていたんですよね?

山田「身体を使うのは好きだったので、ずっとスポーツはやっていました。中学時代も水泳とテニスをやっていて、高校から大学ではアメフト部で。スポーツもそうですけど、最初から全部ノリでできたわけじゃないんです。勉強もちゃんとしていたし、部活もやって、ゲームもなんでもやりたいとなったら努力をして目的を達成してきたという自負はあるし、その経験がいまも活きています」

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——細部にまでこだわる、非常にロジカルな作り方をしているのもそうした経験から来ている?

山田「そうですね。作品毎にコンセプトはあり、イス一脚とってもなぜそうなのかという理由付けが絶対にあります。後付けもあればこじつけもあるけど、毎回A4の紙に3、4枚分コンセプトを書いて臨んでいるんです。
MVは音楽家のためのものであるから、極論、MVはいらないのではという自問自答と毎回戦っていて。音楽家が作った曲だけで100%の表現だから、なにを撮ったとしても別の意味がつく。それを120%にするか、80%にするかの話だから、120%にするためには曲のこともアーティストのこともわかっていないといけない。とりあえずフォロワーの多いモデルを使うとかギミック寄りの技術がすごい動画、縦型動画はやらない。それは1週間はニュースサイトに載るけど、10年残るものにはならないから。基本的にいまの音楽業界はお金をかけずにニュースサイトの1行目に何を書けるかで勝負しているけど、それはアーティストの音楽を消費して無駄にしていると思うんです。僕はミュージックビデオとビデオミュージックという考え方を持っていて、ミュージックビデオだから曲の世界を大事にすべきなのに、ビデオのための音楽にされてしまっているものが多い。マスが求めているものを作ることを否定はしないし、もの作りは他者より自分との戦いなのでそこを意識もしないけど、僕なりの信念を持っていたいと思います」

——さしつかえない範囲でこれまでの作品のコンセプトを聞かせてください。

山田「それは個々が受け取るものだから僕はあえて何も言わないほうがいいと思います。僕は想像することが人間の原動力にあると思っていて。普段映画でなく本ばかり読んでいるのも、想像したいからなんです。映画業界も4Dなどでどんどん五感の再現をしようとしているけど、2Dの映画は絶対残るはずで、五感の一部を制限して想像を与えるということは絶対になくならない。再現の限界は来ても、想像力は尽きないから、映像という表現の中でも僕はそうしたいんです」

——ゲームも8ビットの時代のものが未だに人気なのも足りないものが想像力を掻き立てるから。

山田「そう。僕はアナログ志向というか、CG頼みのことはしない。宇多田ヒカルさんの“忘却 featuring KOHH”のMVでも、ライティングから顔が伸びる演出まで全部現場でアクリル板とか使いながら手作りでやったんですよ。手作業でしか生まれ得ないものがあるが絶対にあって、そうじゃないと心にこない。アナログ感というのは映像でも絶対心にくると信じています」

——手作りもそうですし、自然や身体というフィジカルさが再び大切な時代になってきていますよね。ひと昔前はデジタル一色の未来像だったけれどいまではもっとフィジカルなものと共生しているイメージがあります。

山田「まさに。本当の意味でものを作っている人は絶対にそのことをわかっていると思います。フィジカルで表現するためには大変な努力がいるんだけど、努力でしか結果は得られない。僕の大学はアメフトが全国3位くらいなんですね。高校は受験がないから強いけど、大学では全国からトップをかき集めたチームに圧倒的な能力差で負けてしまうんです。そこを覆すためには努力しかなかった。あと、練習でやっていることの7割くらいしか試合では出せないと監督に言われていたんですが、それも真理だと思います。だから現場に入るまでに詰め切って、あの絵が欲しいというのを再現しにいく。100%再現するために努力するけれど、7割くらいしか再現できない。事前準備を非常に大切にしているけど、逆に現場は手作業なのでかなり流動的です。撮り方が多少違っていても意味さえ残ればいいので、現場のムーブメントを大切にしています」

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——手で作っているけれど、宇宙的な俯瞰の視点をもっているという独特のバランスがおもしろいです。

山田「僕のもの作りは、基本的には自分が経験したことしか作品に還元できないという現象学に基づいています。まず自分の中で意味を付けていくわけですが、人に届けるためには自分のエゴに留まるのではなく、共通の認識を作ることが必要。例えば宇多田ヒカルさんのイントロを観て、ある程度の人が宇宙や生死を想起するようになっているように、みんながわかる共通のものにヴィジュアル化するという作業は自ずとしています。そこではおっしゃるように宇宙的な高い視点を使っていて、それがないと、いいのか悪いのかギリギリになってしまって誰のものでもなくなるので」

——その考え方は、パーソナルを突き詰めると逆に広く共感できるものになるということにも繋がる気がします。

山田「内的な宇宙ですよね。例えば赤くて丸い果物というとりんごが出てくるように、個々の経験をしてきているのになぜ共通の認識が出てくるのかを解いていて、そういう考え方は僕の軸になっています。でも外の宇宙も単純にワクワクするから好きです(笑)」

——(笑)。外の宇宙も、ミラーやラ光の表現で落とし込まれていると思います。高いところからの視点や宇宙的な光というのは観ている人との距離感を演出しやすいですし。

山田「そうですね。どこで止めてもポスターになるような綺麗な絵、そして陰影というのは、意味とはまた別の軸でこだわっているので、美しさやスペーシーとはニュアンスが近くなると思います」

——yahyelの“ONCE”は極端に横長の特殊な比率ですよね。あの視覚の遮られ方も宇宙船のようでした。

山田「あれはかなり特殊ですね。シンメトリーなどかなり視覚的なビデオだから、自分が観ていて気持ちがいいサイズにしています。あとは絵として映したいところを出しすぎず、消しすぎずという。Suchmosの“PINKVIBES”もちょっと削っているんです」

——縦型動画というトレンドの逆をいっているのがいいですね。最後に、今後の活動に関して聞かせてください。

山田「MV以外の表現にそろそろ挑戦したいと思っています。フリーランスになっていまちょうど3年目ですが、これまでとにかくがむしゃらにやってきた。毎回これを最後の映像と思えるくらいの気持ちで作っていて、音楽家のためのものとしてMVを作ってきました。そろそろ次はステージを変えて広告だったり、映画で自分の表現をする方向にも向かっていきたい。
もっと先のことで言えば、政治と法律にも関心があるし、ものを作ることでその領域にまで行きたいんですよね。よいものを作る人たちが、社会に起きている人々の生活に根ざしている何かを動かすというのは社会全体の利益になると思うんです。面白いことを作っている人が何をするのかというが大事で、スヌープ・ドッグがトランプのそっくりさんをMVに出したり、海外だとバンドや若いミュージシャンも自分の主義主張をしているけど、そうあるべきだで。日本の映像分野でも、音楽ですらまだどちらかというとタブーとされているけど、別に政治発言だけじゃなく、いろんなことを主張していいと思うんです。主張するからには映像人として自分がもっと精進してからという轍はありますが、いずれはそうありたいと思います」

山田健人/Kento Yamada
Kento Yamada is a Director/VJ raised in Tokyo. He creates videos and other digital arts.His arts contain phenomenological oils.
Belongs to yahyel as VJ.
http://kentoyamada.com

interview Ryoko Kuwahara

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Edit: Ryoko Kuwahara | Photo Edit : Ryoko Kuwhara | Photography: Akiko Isobe | Hair&Make-up: Masayoshi Okudaira | Model: BO NINGEN

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Edit: Ryoko Kuwahara | Photo Edit : Ryoko Kuwhara | Photography: Shuya Nakano | Styling : Demi Demu  | Hair&Make-up: mahiro | CG : NAKED  | Model: Avu-chan

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