納豆やフランスパンが味噌になる! 私の「アバンギャルド味噌」研究報告【フツーにオイシー】

あらゆる豆で味噌が作れる!?
料理研究家、ライターの下関と申します。
普段は、タイカルチャー料理家として、屋台総菜や、スナック菓子、ファストフードメニュー、バンコクで人気の外国料理など、普通のタイ料理研究家が作らないようなタイ料理(?)を再現し、リトルプレスにまとめてみんなに知ってもらうということをライフワークにしています。

で、今まで掲載した料理数は2冊で300以上!
さらに『メシ通』ではこんなシンプルなレシピを紹介させてもらいました。
「もっとレシピを出し惜しみしなよ、もったいない」と言われるのですが、自分だけで寝かして熟成していても、どうせいずれ誰かが世に出しちゃうんだから「一番初めに紹介した」という称号が欲しい(笑)。
実際、本を執筆していた当時はネットで検索してもまったくヒットもせず、苦労してレシピを作った掲載料理の数々も、今ではレシピサイトやタイ料理教室でもかなり見かけるようになりました。
……と、前置きが長くなってしまいましたが、そんな私がここ数年熟成しているのが「アバンギャルド味噌」。最近、冬になると味噌を仕込む人が増えていますよね。私もだいぶ前に1回仕込んだことがあるのですが、カビをはやしてしまい一時期味噌作りから遠のいていました。
そんなとき、「大豆、黒豆、ひよこ豆」の味噌を作るワークショップに参加して、再び自分の中で味噌ブームが再熱。そこで考えたんです。
ひよこ豆から作れるなら、他の豆からも作れるんじゃないか!?
そこで仕込んでみたのがレッドキドニー、花豆、大手亡、大正金時、十六穀米、うずら豆、レンズ豆(皮あり)、緑豆、青えんどう豆、黒花豆。

1年目は大豆、ひよこ豆をいれて12種類の味噌が完成。仕込みたては、すごくカラフルできれい!
実はチョー簡単な味噌作り
ところで、味噌って仕込むの大変! と思っているかもしれないのですが、ファスナー付き密封袋を使えば超簡単! 材料もお好きな豆、麹、塩の3つだけ。
材料の配合は豆や麹のお店のウェブサイトでいくらでも出てきますが、豆のお店だと豆が多め、麹のお店だと麹が多めの配合の気が(笑)。麹が多いと甘口になります。
私は塩分控えめの定番配合、豆:麹:塩=1:1:0.4。豆を100gで作ると、晩御飯の惣菜を作るような手軽さで味噌が作れるのです。
ではちょっと実演を。

前の晩に、豆を、たっぷりの水に浸しておきます。

味噌作り当日、麹と塩をビニール袋に入れて、もみもみ。これを塩切り麹といいます。

もう1つのビニール袋に、やわらかくゆでた豆を入れます。圧力鍋だと10分ぐらいでゆであがります。これは、黒いんげん豆。真っ黒です。

手近にあったナンプラーの瓶で上からつぶします。

塩切り麹とつぶした豆を混ぜてファスナー付き密封袋に入れ、空気を抜いて閉じます。この袋はMサイズ。存在感としては牛乳瓶1本ぐらいかな。
あとは3カ月~半年熟成。最初の一週間は「おいしくなあれ」ともみもみなじませ、空気が充満してきたら、空気抜きをして完成です。

そして2年目はさらにパワーアップ。ブラックマッペ、とら豆、紅しぼり、サンバルダール、黒目豆、鞍掛豆、ブラックチャナ、赤えんどう豆、そら豆、小豆、レンズ豆(皮なし)、フェジョンプレッド(黒いんげん豆)、コーングリッツ、ポップコーン、おからで仕込んでみました。

これが仕込んで1カ月後。なんとなく、色が茶色くなっているのが分かりますか?
これが熟成しているうちに色が茶色っぽくなり、最終的には下の写真のようなどれも茶色い味噌になるのです。

いろんな豆で作ってみましたが、どれも立派な味噌です!
アバンギャルドな食材で味噌作りへ
ところで、これ何だと思います?

ふふふ。かぼちゃです。
コーングリッツ、ポップコーン、おからあたりでちょっと脱線しかけたのですが、ついに野菜で味噌ができるか!? の実験に。
このかぼちゃの味噌が引き金となってしまい、ついに「アバンギャルド味噌」の世界へ。

白米、フランスパン、バナナ、アボカド、納豆、ヨーグルト、豆腐。そして、ついに禁断のゾーンであるたんぱく質「サバ缶」の世界へ!
あ、念のために言っておきますが、完成した味噌にこれらの食材をプラスする、ということではないですよ。
食材そのもので味噌を作るのです。
はたして結果は!?

あれも味噌、これも味噌、それも味噌、きっと味噌~。
(手前左から、ごはん、アボカド、フランスパン、中央左からバナナ、納豆、サバ缶、奥左からヨーグルト、豆腐)。
ヨーグルトや豆腐あたりは味噌とは言い難い感じもしましたが、フランスパン味噌はほのかにパンの香りがして、でも味噌! という味。
世界最強と言われる納豆菌も麹と合わさってどうなるかと思ったけど、納豆の味がする不思議な感じのおいしい味噌に。
サバ缶味噌はもはや東南アジアの調味料的な感じもしますが、こちらも味噌と言えば味噌。
あらゆる食材に使えて楽しい
全部で37種類。こんなにいろんな豆(や食材)を仕込んだから、味はそれぞれの豆の味がするんじゃないか! と思ったものの味噌やサバ缶、ヨーグルトなど、素材そのものに特徴があるもの以外はほとんど同じ。そう同じなんです。

まぁ「同じ」というのも語弊があるけれど、クラフトビール飲み食べ比べとかイチゴジャム食べ比べとか、そういった感じでもちろん1つずつ味は違うけどどれも味噌だよねという味。
つまり味噌の味って、麹だったのか!?
ちなみにうちでは味噌汁にしたり野菜に付けたり、いたって普通の食べ方です。でも、「手前味噌」といういうだけあって自分で作った味噌は格別!

材料を混ぜて冷蔵庫で寝かせてトースターで焼くだけのお手軽自家製パンに、味噌を練り込んでみたり(焦げたところが香ばしい!)、マヨネーズと味噌を合わせてドレッシングにしたり(大根サラダにおすすめ!)……。
最近は腸活として朝、お湯に味噌小さじ1をとかして飲むことも。味噌汁を作る時間がないときもインスタントコーヒーのノリで作れます。素材にした豆や食材の味がほのかにするし皮や粒が残っていたりして、顆粒だしも具材も何も入れず味噌だけで飲めちゃいますよ。
いろんな豆で作ればフレバーティを選ぶ感覚で、今日はどれにしようかなと楽しめます。
普通の味噌作りは物足りなくなってしまった人は、「アバンギャルド味噌」いかがですか? 楽しいですよ。あ、このネタも、出し惜しみすればよかったかな。
※この記事は2016年12月の情報です。
書いた人:下関崇子(しもせきたかこ)

元プロキックボクサー。在タイ歴6年。タイの屋台料理やジャンクフードなどを日本の食材で再現。本邦初公開レシピ満載の『バンコク思い出ごはん~食べたいタイ料理88レシピ』『暮らして恋したバンコクごはん~タイ料理レシピコレクション』はリトルプレスながら初版完売。タイ料理業界のネタ本として認知されつつある。All About毎日のタイ料理ガイド、一般社団法人日本エスニック協会アンバサダー。
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