【寄稿連載】第四話 ホームレスとアルミ缶

ホームレスのおっちゃんの溜め息

今回は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

第四話 ホームレスとアルミ缶

携帯電話を探しに、公園のおっちゃんたちのいるテントへ向かった。そして俺はそのおっちゃんの一人、黒さんと会ったのである。本当は黒田さんと言う名前らしいが、皆は黒さんと呼んでいた。

よく見ると黒さんは自転車に乗っている。その荷台には大きなナイロン袋に入ったアルミ缶が2つ括り付けてある。自転車の前の籠にも一袋載っていた。
そう、黒さんはアルミ缶を集めて、それを売って生活しているのである。ホームレスが一番やっているのが、このアルミ缶集めといってもいいのではないだろうか。

これは元手がかからない。しかも、その日のうちにお金に換えられる(中には週に三回くらいだけ変えられるところもあるが)。
しかし、この仕事も大変なところがある。黒さんみたいに自転車があれば、広範囲に探しに行けるからいいのだが、最初は歩いて探さなくてはならない。どこでも適当にアルミ缶を探して取ってきてもいいのだが、一人一人テリトリーが決まっていて、勝手に取って来れないところもある。
しかし、やはり基本的には早い者勝ちなのである。

後は時間帯を変える手もある。
大抵の人は夜(特に夜中から明け方にかけて)集める人が多いのである。だから、中には逆に朝から夜に掛けて集めるようにしている人もいる。

その他にはマンションの管理人さんと仲良くなって、アルミ缶の出る日に定期的に取りに行っている人もいる。しかし今は分別回収が進んでいて、所定の業者が回収に来るので集めにくくなってきている。

それに、昔に比べてアルミ缶の値段もだいぶ下がってきているのである。特に北京オリンピックの時などは1キロ170-180円位まで上がったのだが、その後150円くらいまで下がって、リーマンショックの後は1キロ70円位にまで落ちたのである。今は少し回復して110円から120円くらいまで上がってきている。
でも70円位まで下がった時に、アルミ缶集めを止めてしまった人もいたらしい。
それにアルミ缶は、夏は多いが冬は少なくなって、一年を通して安定した収入はなかなか見込めないのである。

黒さんはこのアルミ缶集めを、もう三年ぐらいやって生活しているらしい。黒さんは夜中から明け方まで回って一回で15キロ位集めている。しっかりとしたテリトリーを持っているのだろう。

黒さんは俺をじーっとみながら、ゆっくりと自転車を押してテントの横に止める。俺はしばらくの間黙って見ていたが、思い切って黒さんに携帯電話のことを聞いてみた。
黒さんは俺の話を聞いてないように、黙ったまま自分のテントに入っていく。俺は無視されたのかと思ったが、しばらくすると黒さんは一枚のメモを持って出てきた。

続く

執筆: この記事は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

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