やっぱり堅実?30歳以上と違う20歳代の住まいづくりの考え方

やっぱり堅実?30歳以上と違う20歳代の住まいづくりの考え方

住環境研究所(JKK)は、次の10年における住まいづくりの主要層となる20歳代の住まいに関する意識について調査した。それによると、こだわりの部分にお金をかけるメリハリのある住まいづくりを重視する傾向があることが分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】

ミニニュースレターvol.11「20才代の住まいへの意識」を調査/住環境研究所

オーダーメイドよりセミオーダーのほうが魅力?

調査では、現在の住まいづくりの主力層である30~44歳の新築一戸建て取得済み層と、次の10年に主力層となるであろう25~29歳の3年以内に一戸建て取得意志あり層を比較している。

まず、間取りづくりの考え方を聞いてみると、次のような違いが見られた。

20歳代ではオーダーメイドへ魅力を感じている層が71%と30歳代以上と同じだけいるのだが、セミオーダーメイドへ魅力を感じている層のほうが79%と多くなっている。30歳代以上では、セミオーダーメイドよりオーダーメイドに魅力を感じる層のほうが多いので、20歳代は一から自分で決めるよりも自由に選択肢を組み合わせるセミオーダーのほうにより魅力を感じていることがうかがえる。【画像1】間取りづくりの考え方(出典:住環境研究所「20才代の住まいへの意識」ミニニュースレターvol.11)

【画像1】間取りづくりの考え方(出典:住環境研究所「20才代の住まいへの意識」ミニニュースレターvol.11)

住まいの可変性の考え方にも、違いが見られた。

【A】「家族に合わせて間取りや設備を変更しやすい可変性のある住まいにしたい」

【B】「購入・建築時にベストな住まいであれば可変性は特に意識しない」

いずれに近い考え方かを聞いたところ、20歳代は【A】に近いが59%と30歳代以上の50%を上回り、可変性に高い関心を持っていることが分かった。

住まいへのこだわりについても、AとBのいずれに近い考え方かを聞いたところ、

【A】「お金はかかってもできるだけ良い家にしたい」

【B】「できるだけお金をかけずにすませたい」

20歳代では【B】に近いが37%で、30歳以上の27%を上回った。【画像2】お金のかけ方(出典:住環境研究所「20才代の住まいへの意識」ミニニュースレターvol.11)

【画像2】お金のかけ方(出典:住環境研究所「20才代の住まいへの意識」ミニニュースレターvol.11)

また、全方位的かスポット的かについても、

【A】「ムラなく全体的にほど良い家にしたい」

【B】「メリハリをつけて、こだわるところはこだわりたい」

で【B】に近いが20歳代で52%となり、こだわりの部分にお金をかけるメリハリのある住まいづくりを重視する傾向が強いことが分かった。

堅実的でメリハリをつけた住まいづくりを重視?

20歳代は、「ゆとり世代」などとも言われている。ゆとり教育として学ぶ内容の量や時間を減らし、自主性を重んじる教育制度が行われたこの世代は、「指示待ち」「打たれ弱い」という特徴があると指摘される。一方で、厳しい就業・所得環境などの影響から、他の世代に比べ堅実で、家族を重視する傾向が強いとも言われている。

今回の調査結果を見ても、自分たちらしさを求めてあれこれお金をかけるというよりも、できるだけお金をかけずに済ませたいという質素堅実的な面を見せている。その結果、こだわりのある部分にメリハリをつけてお金をかけたり、最初に住まいの機能をそろえて必要に応じて可変していったり、選択肢を組み合わせて自分らしさを演出したりと、かけられる費用を効果的に使おうという意識が垣間見える結果となった。

では、一戸建ての供給側の事情はどうだろう?

ハウスメーカーや大手の分譲会社は、ゼロエネルギー住宅や長期優良住宅などの性能の高い住宅を前面に押し出している。性能が高い住宅は、ランニングコストを抑えることはできても、最初に投資する額が大きくなる。したがって、高付加価値ではあるが高額な住宅となる。

一方、中堅の分譲会社や地元の工務店は、一定の性能で買いやすい価格を追求して販売している。ここ数年、新築一戸建ての販売価格がマンションのようには上昇していないのも、こうしたリーズナブルさを求める市場の要因もあるだろう。

このように、一戸建ての市場は、高性能追求とリーズナブルさ追求の二極化の傾向が強い市場となっている。

費用対効果を考えた、ニーズにマッチした住宅づくりが求められる

今後の主力層となる20歳代は、住まいだからと言って必要以上にお金をかけようとは思わない傾向がうかがえる。ゆとり世代対象の他の調査結果を見ても、耐震性や耐久性などの基本性能はしっかり求めつつも、自分らしい外観や内装のデザインへのこだわりもあり、でもお金をかけようとは思わないといった傾向がうかがえる。

一戸建てを供給する側も、こうした特性をよく理解して、高性能や価格だけを追求するのではなく、選択の自由度や華美なだけではないデザインの工夫などをしていく必要があるだろう。

これから人口や世帯数が減少していく時代に入っていく。したがって、住宅適齢期の主力層も減少していくことになる。しかも、好景気を知らないで育った質素堅実を旨とする世代が主力層となるので、これまでとは違った住まいづくりの発想が求められるようになるはずだ。住宅を供給する側の知恵の見せ所といえよう。●関連記事

・親世代だけじゃない、ゆとり世代にも根強い「新築一戸建て」志向(SUUMOジャーナル)
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