デキる人は「失敗し落ち込む自分」からどう回復しているのか?

12万部を超えるベストセラーシリーズとなった『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社、小学館文庫)。その著者である俣野成敏さんに、「ビジネスパーソンの仕事への向き合い方」についてお話しいただくこのコーナー。第7回の今回は、「仕事で失敗し、落ち込んだ時にどう回復するか」についてです。 f:id:k_kushida:20170203120636j:plain

こんにちは。俣野成敏です。

本日は、失敗からリカバリー(回復)する方法についてお伝えしたいと思います。

「仕事に失敗はつきものだ」という言葉に、異を唱える人はいないでしょう。どんなに仕事ができる人であっても、実際は失敗をしているものです。ただ、できる人の場合は失敗をした後のフォローが上手だったり、失敗を次に活かす行動を取っていたりするために、あたかも失敗していないように見えているに過ぎません。

失敗を周囲に気づかせない人がいる一方で、失敗する度にひどく落ち込んでしまう人がいます。そういう人は、真面目な性格が仇になっている訳ですが、落ち込んだままでいては、その後の仕事にまで支障をきたしかねません。こうした負の連鎖に陥らないためには、どうしたらいいのでしょうか?

人が「落ち込む理由」は、イヤなことを考え続けているから

ミスが次のミスを生んでしまうのは、最初のミスを気にするあまり、それに引きずられてしまうからです。気に病むことを「心が折れる」と言いますが、折れてしまうのは「その失敗を考え続けている」ことに起因しています。

それはたとえば、「イヤな上司に怒られて心が折れる」という場面を想像してみればわかります。イヤな思いをしている時とは、「嫌いなはずのその上司のことを考えている」時だということです。本来であれば、その上司のことは思い出したくもないはずなのに、現実は逆のことをしているのです。

イヤなのに考えてしまうのは、おそらく「この状態から逃れる方法はないか?」と思っているからなのでしょうが、ここで考えるべきなのはむしろ「どうしたら考えなくて済むのか?」の方です。中には「反省するため」といって、いつまでも失敗のことを考え続ける人がいますが、イヤなことを考えていれば、落ち込んでしまうのは、ある意味、当然のことなのです。

自分を責めてもいいことはない

ではその「反省」を広辞苑で引いてみると、「自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること」とあります。反省があまり良くないのは、それが自分のことを責める行為だからです。

冒頭でも申し上げた通り、失敗とはもともと誰でもするものですし、失敗を望んでする人もいません。通常、反省をする理由とは「同じ失敗を2度としないため」だと思われますが、そのせいで落ち込んでしまうのは、かえって本末転倒なのではないでしょうか?

実際には、反省よりもやるべきことがあります。それが何かというと、「失敗を認めること」です。失敗を受け止めて、そこから「どうすれば同じ失敗をしないようになるのか?」と考えるようにすると、失敗を次に活かすことができます。なぜ、失敗を認める必要があるのかというと、それは「頭を切り替える」ためです。

多くの人が失敗を引きずってしまうのは、人間がすぐには気持ちの切り替えができないことを物語っています。そこをふっ切るためには、「一度終わらせる」作業が必要になります。それが「失敗を認める」ということです。

余談になりますが、現実世界には私たちがあまり意識していないところで、さまざまな「切り替え作業」が存在しています。たとえば始業や終業時のチャイムや、制服に着替えること、人々が時間帯に応じて変える挨拶、飲み会の3本締めや1本締め等々。こうした日常生活におけるいろいろな合図が私たちの生活を区切り、メリハリをつける役割を果たしているのです。

「失敗を成功につなげる」ための3ステップとは

失敗から得た学びのことを「教訓」といいます。これができれば、失敗はまたとない貴重な経験に変わります。

失敗を学びに変えるプロセスとは、

1.失敗を受け入れて気持ちを切り替る

2.そこから教訓を得る

3.次の行動に教訓を取り入れる

の3ステップになります。

現実的には、1と2は頭の中の作業になりますが、特に最初のうちは、意識的に自分の気持ちを切り替えるようにするといいでしょう。失敗を教訓に変えるオススメの方法とは、「教訓をメモする」ことです。私もサラリーマン時代は自分の失敗をメモに残して改善を繰り返し、後にはそのメモを元に『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社・小学館文庫)という書籍を出版しました。

現在はもう、メモをしなくても自分の頭の中で失敗を教訓に変えることが、完全に習慣化しています。失敗を教訓に変えるための質問とは、「時間が巻き戻ったとしたら、次はどう行動するか?」を考えることです。

メモとは本来、「忘れるため」に書くもの

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ところで、教訓をメモする際には、ぜひ意識していただきたいことがあります。これは、気持ちを反転させてV時回復するために必要なことなのですが、メモを「忘れるために取る」ということです。

通常、人がメモを取る時は、「忘れないために書く」のが一般的だと思います。しかし、これからは「忘れるために書く」という感覚を持つようにしてください。普通は暗記をする際など、何度もつぶやきながら書いて覚えるものですが、そうではなくて、「忘れていい」と自分に言い聞かせるようにするのです。

ご自身の記憶をたどっていただければお分かりになると思いますが、人間は出来事を丸ごとイメージで覚えているため、自分の都合で「上司に叱られたことは忘れて、失敗の教訓だけを覚えておく」ということができません。むしろ、人間の脳は感情に支配されてしまうために、極論を言えば「忘れる」か「覚えておく」のどちらかしかできないのです。

大事なのは、「仕事で成果を出す」こと

もしかしたら、中には「失敗しておきながら、忘れるなんて不謹慎だ」と思われた方もいるかもしれません。しかし、大事なのは反省することではなく、失敗をバネにして、より良い仕事をすることです。忘れることによって危惧される「同じミスを繰り返すこと」に関しては、メモした教訓を定期的に見返せばいいことです。

仕事で安定した成果を上げるためには、気持ちのコントロールが不可欠です。そのためには、集中力を高めるための「自分の儀式」を持つというのもひとつの方法です。一例を挙げると、メジャーリーガーのイチロー選手が、いつもバッターボックスに入る際に同じ動作を繰り返しているのがそれに当たるでしょう。

いかに日常で起きるトラブルから、仕事が影響を受けないようにできるのかが、高いパフォーマンスを維持するための鍵となるのです。

【プロフィール】

俣野成敏(またの・なるとし)

ビジネス書著者/投資家/ビジネスオーナー

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。31歳の時にアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社、小学館文庫)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』(日本経済新聞出版社)が8刷となっている。著作累計は33万部超。2012年に独立後は、複数の事業経営や投資活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設し、マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等にも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。

俣野成敏 公式サイトはこちら

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