「2回読んだが、2回とも眠ってしまった」 選考委員の頭も悩ませた芥川賞受賞作
第146回芥川賞は、田中慎弥さんの「共喰い」と円城塔さんの「道化師の蝶」が受賞した。選考会で「共喰い」はすんなり選出されたが、「道化師の蝶」は支持する声と反対する声が真っ二つに分かれ、議論と評決を重ねた末にようやく受賞が決まったという。
「田中さんの小説はどちらかといえば古いタイプの小説だが、円城さんの作品はふつうの小説ではない」
選考会後の記者会見で、両作品をそう評したのは今回を最後に選考委員を辞する作家の黒井千次さんだ。
複雑な構造で、実験的な作風の「道化師の蝶」について、「私は部分的に面白いと思うところはあっても、全体的に理解することができなかった」と、選考委員にとっても難解な作品であったことを認めたうえで、「2回読んだが、2回とも眠ってしまった」と述べた。
黒井さんによると、選考会の最初の評決で「共喰い」は過半数を獲得。一方、「道化師の蝶」は8点満点中の4点とちょうど「半数」になってしまった。このような事態が生じたのは、9人いる選考委員のうち村上龍さんが欠席して、偶数の8人になったことが影響している。
その後、議論を重ねたうえで評決を繰り返したが、決着がつかず、ついには「○と×と△」という3種類の評価の投票方法をとった。そして、ようやく4度目に円城さんの作品が4.5点という評価で過半数となり、受賞に至ったのだという。
「古いタイプ」の田中作品と「新しいタイプ」の円城作品。両極端な小説が選ばれたことについて、黒井さんは「結果として、多様なものが出てくるのがいいことではないかと思った」と総括した。
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(亀松太郎)
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