「身体は女。性自認は男です」性的マイノリティー成人式”新成人の言葉”全文
レズビアンやゲイ、バイセクシャルなど性的マイノリティーを対象とする「第1回LGBT成人式」が2012年1月15日、東京・世田谷区で開催された。式では成人となった2人の若者が「新成人の言葉」を担当。うちFTM(Female to Male=身体が女性で心は男性)の若者は「一生諦めずに自分が幸せになる方法を、誰かを幸せになる方法を探し続けたい」との決意を表明した。式に参加したトランスジェンダーのみしろさん(22)は若者の言葉に涙したと話し、「式に来たことでいろんなマイノリティーと気持ちを共有できた」と語った。また同じく参加者のロゼさん(22)は、「ストレートの人たちにも聞いてもらいたかった。セミナーや講演ではなくこういう場で自分たちのことを知ってほしい」と話した。
以下に、匿名の若者による「新成人の言葉」を全文書き起こす形で紹介する。
■「”自分好き”の僕なんですが・・・」
まず自分のセクシュアリティを自分なりに分析しますと、身体は女です。性自認は男なんですが、実は女子会やレディースデーでは「女の子」を活用しています(笑) セクシャリティー以外で自己紹介すると、「自分好き」です。基本的に自信たっぷりな奴です。たとえば、バイトの面接で「短所はどこですか?」と聞かれ、「長所ならいくらでも言えます」と長所を並べまくって落とされた経験があります。
そんな気持ち悪いほど自分好きの僕なんですけど、自分が「FTM(Female to Male=身体が女性で心は男性)」であるということになると、途端にまったく自信がなくなって、FTMの自分なんて・・・と長い間思っていました。でも今は、FTMであるということも含めて自分に自信を持っています。なぜそういうことになったのか。そのきっかけというのが、去年付き合っていた彼女が僕を友達に紹介してくれたことでした。
それまで付き合った人は、付き合っても周りにそのことを隠してたんです。だから、ずっと「そりゃ言えないよな」と諦めていたんです。なので彼女から「あなたを友達に紹介したいんだけどいい?」と聞かれたときは驚きました。「こいつは周りに『こういう人と付き合っている』と思われるのが怖くないのかな」と。「俺はめちゃくちゃ怖いんだけど!」って感じでした。だから彼女に「なんで俺なんかを紹介してくれるの?」と聞いたんです。そうしたら彼女は「えっ? 友達に自分の好きな人を紹介したくなっただけだよ」と言ってくれました。それで彼女と彼女の友達と僕の3人でご飯を食べに行きました。僕は持ち前のハイテンションでいろいろ話して、その場は終了しました。
■「どんなに泣いても、どんなに苦しくても人間性で勝負する」
後日彼女に恐る恐る「友達は俺のことなんて言ってた?」って聞くと、「『良い人だった。FTMって聞いてどんな人なのかなと思っていたけど話しやすい人だった』と言ってたよ」と報告してくれました。そして、「(友達と)会ってくれてありがとう」と言ってくれました。この経験より前の、「FTMである自分なんて」と思っていた僕は、「FTMだからこれができない、あれができない」という考えでした。だけど彼女が友達に僕を紹介してくれた。その友達が僕のことを「良いと思う」と言ってくれた。僕自身が紹介したくなるような、「良い」と言ってもらえるような一人の人間であれたんだなと思いました。
この経験で、セクシャリティというのが自分の一部であると考えるようになったんです。一部とは言っても、自分の中ではめちゃくちゃ大きな一部なんですが、それでもFTMであることは自分の人間性を潰すようなことではないんだなと思えるようになりました。それは本当に大きな変化でした。
僕はこれからどうしていきたいか。それはFTMであることも含めた、自分だけの人間性で勝負していくということです。僕のセクシャリティに否定的な人がいて、今後付き合う彼女や仲良くしていく友達がそのことで悩んでいたら、僕自身から「大丈夫。その人たちと友達になって、人間として認めてもらうよ」と言います。そして周りの人にFTMの自分と出会えて良かったな、何かを得たなって思ってもらえる人間でいます。
こんなカッコイイことを言っていても、人間性で勝負して勝つというプレッシャーに耐えれない時も来るだろうし、実際に「お前、気持ち悪いよ」って言われたら・・・もう今も泣いているんですが、その時も絶対に泣くと思います。それでも、どんなに泣いても、どんなに苦しんでも、自分だけの人間性で立ち向かっていく。この先、一生諦めずに自分が幸せになる方法を、誰かを幸せになる方法を探し続けていきたいと思います。
(了)
◇関連サイト
・LGBT成人式 – 公式サイト
http://www.geocities.jp/lgbtseijinshiki/index.html
(土井大輔)
【関連記事】
レズ、ゲイ、バイセクシャル・・・性的マイノリティーのための成人式が開催
「女性リードの性描写で青少年にホモ的傾向」 ”有害図書”審議で委員発言
「いま気にかかっているのは少年愛のこと」ゲイ雑誌『薔薇族』の初代編集長
角川書店社長「都知事の発言はマンガ・アニメへの職業差別」
石原都知事の「同性愛者差別発言」 国際人権団体が撤回もとめる
ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。