「エッジ・カー・オブ・ザ・イヤー」1位のポルシェ 911タイプ964、その相場は今後どうなる?

▲「2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤー」でインポートカー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのは現行アウディA4シリーズでしたが、カーセンサーの方では20数年前のコレが栄冠に輝きました!

▲「2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤー」でインポートカー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのは現行アウディA4シリーズでしたが、カーセンサーの方では20数年前のコレが栄冠に輝きました!

「問い合わせ率」の異様な高さが受賞の決め手に

2017年1月末に発表された「2016 エッジ・カー・オブ・ザ・イヤー」で見事1位に輝いたのはポルシェ 911(タイプ964)だった。

エッジ・カー・オブ・ザ・イヤーは、過去1年間にカーセンサーnetに掲載があったすべてのモデルを対象に、カーセンサーならではのビッグデータ(総掲載台数/ユーザーからの問い合わせ総件数/掲載1台当たりの問い合わせ集中率)を独自のルールでポイント化。輸入車の中でそのポイント数順にランキングを作成し、1位となったモデルが「イヤーカー」となる仕組みだ。

今回1位に輝いたポルシェ 911タイプ964とは、89年途中から93年12月まで販売された空冷エンジンを搭載する911。「最後の空冷911」というわけではないが、初代911から脈々と続いた伝統のカエルの目玉的(?)ヘッドライト形状を採用した最後のモデルであるなどの理由から、生産終了後も世界中のフリークを魅了してやまない人気者であり続けている。

とはいえ最終型でも24年落ちとなる古いモデルゆえ、過去1年間の掲載台数は少なめである。その数は輸入車部門2位につけたポルシェ 911タイプ996の約半分であり、同3位となった現行ポルシェ 911の約4割。そんな964がなぜ1位に輝いたかといえば、「問い合わせ率」が異様に高いからだ。掲載台数そのものは少ないが、掲載されればほぼ確実にユーザーからの問い合わせが入りまくる……ということである。20年以上も前の、あえて悪く言うなら古くさい、決して「最良」ではないポルシェに、人は今なお強烈な魅力を感じていることの証左と言えるだろう。

だが今、筆者個人にとっての関心事は964という車の魅力についてではなく、「その相場は今後どうなるか?」ということだ。

▲89年登場のカレラ4からスタートした第三世代の911、タイプ964。スタイリングは往年の911そのものとも言えるが、中身は大幅な変貌を遂げている。90年には後輪駆動のカレラ2が追加され、ATながらスポーティな走行が楽しめるティプトロニックATも搭載。その他、タルガとカブリオレ、スピードスターも設定された

▲89年登場のカレラ4からスタートした第三世代の911、タイプ964。スタイリングは往年の911そのものとも言えるが、中身は大幅な変貌を遂げている。90年には後輪駆動のカレラ2が追加され、ATながらスポーティな走行が楽しめるティプトロニックATも搭載。その他、タルガとカブリオレ、スピードスターも設定された

相場は10年前の約3倍まで高騰。しかし最近はやや落ち着いてきた?

ポルシェ 911タイプ964の中古車相場は、ご承知のとおりここ数年で鬼のように高騰した。10年ほど前は比較的良質な5MTのカレラ2がおおむね350万円というのが一般的で、ティプトロニック(AT)で構わなければ250万円前後でも十分探せたものだ。

しかしその後、相場は急変。350万円ぐらいだった5MTのカレラ2は気づけば600万円、700万円、800万円へと上昇し、走行距離がきわめて短いフルノーマル物件は1200万円前後になることも。そのどさくさに紛れて(?)ティプトロのカレラ2/カレラ4も高騰し、フルノーマルなら走行7万km台の個体でも750万円とか780万円とかで売られる事態となったのだ。

高騰の理由は、各方面ですでに語り尽くされていることだが、いわゆる外国人勢の買い攻勢だ。本国ドイツでクラシックポルシェブームが勃興したり、タイプ964に「投機対象」としての価値が見いだされたりした結果、状態の良い964が比較的安価に売られていた日本に彼らは目をつけた。そして札びらを切って良質個体を買いあさる海外バイヤーの勢いに押され、いつしか964の国内相場は前述のとおりアホほど高騰してしまったのである。

しかしその後「この高騰もそう長くは続かないよ」という声が専門店筋から聞こえるようになり、実際、ここ最近の相場はやや落ち着きを取り戻したようにも見える。1200万円とかの値札が付いているケースも依然あるが、車両価格750~900万円付近でもかなり好条件な物件が探せるようにはなってきたのだ。多少条件が緩くてもOKなら600万円台でもイケる。ただ、めぼしい個体が海外勢に買い尽くされた結果か、流通量がかなり少なくなってしまった感は否めないが。

▲10年前は「エンジンオーバーホール済みのカレラ2(5MT)」がおおむね350万円ほどで売りに出されていたものだが、そんな相場も今は昔。ただ最近は、若干だが値下がりしてきた印象も

▲10年前は「エンジンオーバーホール済みのカレラ2(5MT)」がおおむね350万円ほどで売りに出されていたものだが、そんな相場も今は昔。ただ最近は、若干だが値下がりしてきた印象も

今後さらに下がるのか、あるいはまた上がるのかは誰にもわからない

で、話は先ほどの「964の中古車相場は今後どうなるか?」に戻る。

落ち着きを取り戻したといっても、冷静に考えれば、600万~900万円というのはまだまだ10年前の約2倍から3倍の高値圏である。これが元どおりの水準すなわち300万円台まで落ちるか、あるいはせめて500万~600万円ぐらいまで戻るのであれば、その戻り(押し目)を待って買いたいのが人情というものだ。

しかし、株式や為替などの取引をたしなむ人はよくおわかりかと思うが、相場というのは「ここまで落ちたら買おう」と思っているときほどなぜか落ちず、自分を置いてけぼりにいきなり急上昇したりするもの。で、すっ高値になった相場を呆然と眺めがら「安いうちに買っときゃよかった……」と後悔するのだ。

それだけならまだいい。最悪なのが、急上昇局面と思いあわてて飛びつき買いをしたはいいが、なぜか自分が買った途端急落し、奈落の安値圏へと滑落。その結果、長期にわたり強烈な含み損を抱え続ける……という笑えないパターンだ。しかしこれもまた「相場あるある」である。

つまりタイプ964の相場は今後さらに下がるのか? それとも実は今が底で、今後は再び上昇に転じるのか? ……という疑問が今、市場参加者の脳内には静かに渦巻いているのだ。

その疑問に対する答えは、無責任なようだが「不明です」と言うほかない。

未来のことは誰にもわからない。もしも「や、僕は100%わかりますよ」と言いきる人間がいたら、その人はたぶん詐欺師だろう(もしくは宇宙人)。筆者個人の予想は「良質物件はその希少価値ゆえ今後じりじりと相場が再上昇し、非良質物件(荒れた改造車や超過走行車など)は格安化していく」というものだが、そのとおりになるかどうかはまるで自信がない。いきなり何らかの派手な世界的金融危機が起こり、鉄板と思われた相場がストンと下がることも十分あり得るからだ。

▲ドンピシャの底値を当てられるならそれに越したことはないが、実際にそれを行うのはほぼ不可能だ

▲ドンピシャの底値を当てられるならそれに越したことはないが、実際にそれを行うのはほぼ不可能だ

絶対にわからない未来の価格をウダウダ考えるのは時間の無駄?

こういった局面で我々「964ラバーズ」がとるべき正しい行動は、以下2パターンのうちいずれかであるはずだ。

一つは「様子見」である。心静かに相場の動向を観察し、十分下がったと思える局面がきたら、すかさず買う。逆にすっ高値をズンズン更新していくような事態になったならば、タイプ964の購入はキッパリあきらめる。面白味はないが、その代わりリスクもほとんどない「大人の対応」だ。

もう一つは「目をつぶって突撃」である。つまり今、エイヤ! で買ってしまうのだ。

この先さらに下がり、結果として高値づかみになる可能性はある。もしくは購入後に何らかの金融危機が起きて相場が死ぬほど下がり、売るに売れない状況になるリスクもある。あるいは逆に「後から思えばあのタイミングで買ったのは大正解だった!」という明るい未来もあり得るだろう。

ならば、「相場がこの先どうなるかは誰にもわからない。わからないことについてウダウダ考えるのは時間の無駄である」というシンプルな考え方に基づき、欲しいならばとりあえずとっとと買ってしまうのもアリなのではないか。幸いにして今、タイプ964の相場は――底かどうかはわからないが――若干下がってはいる。買いのタイミングといえばタイミングなのだ。

もちろんこの行動には前述のようなリスクが伴う。しかし何でもそうだが、リターンを得ようと思うならリスクをとるしかないのだ。「リスクゼロで上手いことやってやろう」と思っても、そうは問屋がおろさないのがこの世の中である。

▲若干だが平均価格が下がっている今、この先の相場がどうなるとか考えずにエイヤッ!と買ってしまうのも一つの道。写真は90年までの前期型カレラ2

▲若干だが平均価格が下がっている今、この先の相場がどうなるとか考えずにエイヤッ!と買ってしまうのも一つの道。写真は90年までの前期型カレラ2

それぞれに残された時間は有限。そこをよくお考えいただきたい

しかし考えてみれば、今タイプ964を購入することに伴うリスクとは、超最悪のケースでも「約600万円の含み損を抱える」という程度なのではないかと思う。約600万円の内訳は「800万円ぐらいで買ったはいいが、その直後に超絶金融危機が起こって相場がダダ下がりし、200万円程度でしか売却できなくない状況になる」だ。その程度の含み損なら耐えられる人は多いだろうし、そもそも800万円に相当するほどの個体であれば、その希少性ゆえ、含み損は時間とともに解消されていく可能性が高い。つまり金融危機が去れば、相場は再び上昇するはず……ということだ。

そしてそもそも「本当に好きな車を手に入れた!」という精神的な歓びには、そんな金勘定ウンヌンをすべて吹き飛ばすぐらいのパワーがあることも、我々は忘れてはならない。

欲しくもない人に無理やり勧めるつもりは当然ないし、964という車を投機的な視線で見ている人にも、今は「様子見」をオススメしたい。が、あなたがもしも「人生一度はタイプ964を所有したい!」と強烈に思っているのであれば、後者の「目をつぶってとりあえず突撃」も決して悪くないアクションなのではないかと本気で思う筆者である。

人生における「時間」は有限であり、特に「好きな車を好きなように運転できる時間」はさらに希少である。良質なタイプ964の数も、年を追うごとに減少していくことだろう。それらのことを考えると、そう思わざるを得ないのだ。

□□2016 エッジ・カー・オブ・ザ・イヤー□□

1位 ポルシェ 911(タイプ964)
533pt

2位 ポルシェ 911(タイプ996)
531pt

3位 ポルシェ 911(タイプ991)
529pt

4位 ポルシェ ケイマン(タイプ981) 527pt

5位 ポルシェ ボクスター(タイプ981)510pt

6位 ポルシェ 911(タイプ997)
503pt

7位 アルファ ロメオ アルファ147
501pt

8位 ポルシェ ボクスター(タイプ986)482pt

9位 ポルシェ 911(タイプ993)
478pt

10位 ポルシェ 911(タイプ930)
474pt

【関連リンク】

ポルシェ 911タイプ964の中古車をチェックしてみるtext/伊達軍曹

photo/ポルシェジャパン

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