行き過ぎたクレームは罪になる!?クレーマートラブルについて弁護士に聞いてみた!
昨年放送されたドラマ『とげ~小市民 倉永晴之の逆襲~』は、田辺誠一さん演じる、主人公のわにのくに市役所職員「倉永晴之」が、市民から受ける様々なクレームに日々追われながら、それでも市民のために奮闘する物語でした。
常識を飛び越えた“普通じゃない”モンスタークレーマーが多数登場した同作ですが、私たちの生活する実社会においても、様々なクレーマー問題を耳にする事も増えたのではないでしょうか?
そこで今回は、クレーマートラブルに関する相談内容や、良く起こる問題について、弁護士の先生に色々とお話を聞いてみました。今回“クレーマートラブル”について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の岩沙好幸先生です。
–記者
学校にありえないクレームを入れてくる親、スーパーマーケットで信じられない内容のクレームを入れる主婦、常識の通じない近隣住人、最近こういった個人のクレームから大きなトラブルになるケースも少なくないと聞きます。実際にこのようなクレーマーに関する相談というのは多い(増えている)のでしょうか?
–岩沙先生
クレーマーや隣人トラブルに関する係争は、いくつかありますね。クレーマー関連だと、洋服を買った後にやっぱり気に入らなかったという理由だけで交換・返品を要求したもの、隣人トラブルだと、マンションの隣人宅まで響く大音量で音楽を聴いたり、又はペットの声がうるさいなどのトラブルがあります。身近なちょっとしたことに関する紛争は意外と多いですね。
–記者
ちなみに、クレーマーに関する相談に来られる方というのはどういった方が多いのでしょう? また今までに、まさかこんなクレームで・・・?と驚かれたような相談内容がありましたら教えてください。
–岩沙先生
クレーマーから嫌がらせを受けている被害者の方は、普通の方が多いですね。もっとも、被害者の権利意識が強すぎるパターンもあります。簡単に言うと、その程度のことは普通の人なら我慢するにもかかわらず、「訴えたい」とすぐに言うクレーマーのような相談者もいます。客観的に見て明らかに相談者の方にも非が多いにも関わらず、自分は悪くない、相手方が一方的に悪いなどと思っている依頼者の対応は正直大変です。
–記者
そもそもクレーム自体に犯罪性は無いと思うのですが、どのラインで法に触れるようになるのでしょうか?また、法に触れるとしたらどのような法律に触れる事が多いのでしょうか?
–岩沙先生
クレームのやり過ぎは、業務妨害罪、強要罪、方法によっては名誉棄損罪や不退去罪などにあたる可能性があります。過去の例では、多数の客が飲食中のデパート食堂で数人で共同して「このデパートは詐欺行為をしている」などと大声を出したものや、教室で授業中の大学講師に対し、制止を無視して質問を続けた行為が威力業務妨害罪となったものがあります。
最近では、平成25年に衣料品チェーン「しまむら」で店員にクレームを付けて土下座を強要し、その様子を撮影した写真をツイッターに投稿した女性が強要罪で逮捕されるということもありました。もちろん、SNSなどでお店の社会的評価を下げるような書き込みをした場合は名誉棄損罪が、退去を求められているにもかかわらず居座った場合には不退去罪が成立する可能性があります。
–記者
とはいえ、これだけ様々なサービスや人がいれば、いずれ自分がクレームを入れたくなる事もあるかと思います。クレームを入れる際に、(法的な)トラブルを避ける為に、我々が気をつけるべき事はありますでしょうか?逆に、クレームを受けてしまった際に、その対応として特に気をつけるべき事も教えて頂けますでしょうか?
–岩沙先生
クレームの内容や方法は多種多様なので一概に言うことはできませんが、クレームを入れる際は、やり過ぎに注意することです。一般的に、自分でもやり過ぎかもと思う行為に関しては、刑事事件に発展する可能性が高いです。
もっとも、自分でやり過ぎだと思わないから事件になってしまうわけですが、クレームのやり過ぎは刑事事件に成り得るという意識、被害者である自分が一転加害者になるという意識を持っておくだけで、自制心がはたらくのではないでしょうか。先ほど述べたような業務妨害罪、強要罪、名誉棄損罪、不退去罪などは特に注意してほしいと思います。
一方、クレームの対処法としては、クレームを述べている側に自身が不当な要求を行っていることに気づいてもらうことが重要です。多くの場合、クレーマーは自分が「圧倒的に優位な立場にある」と思い込んでいます。会話や言動を録音・録画していることを伝えると、そのような思い込みが誤っているということに気づいてもらいやすいです。
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というワケで、今回は“クレーマートラブル”について、弁護士の岩沙好幸先生に色々とお話を伺いました。自分では軽く意見しているだけのつもりが、実は法的に見れば、罪になる・・・なんて事もあるようです。自身の立場を勘違いして相手に対して強気に出てしまう事が、業務妨害罪、強要罪、名誉棄損罪などに繋がる可能性がある事を、改めて認識しておきましょう。
・取材協力
岩沙好幸(いわさよしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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