『YouTube』の音質が悪いのは気のせいなのか?
『YouTube』の音質は悪いのか?
オーディオ愛好家などは、『YouTube』の音質を悪いと言います。またCDやDVD・地デジなどと比べると、音が悪いと感じている人も多いです。ただ『YouTube』は、パソコンに付属してきたスピーカーやモニター内蔵のスピーカーで再生しているため、そのように感じても口に出さない人も多いです。実際、CDの再生はしっかりとしたオーディオシステムを使い、DVDの鑑賞はテレビの比較的音質の良いスピーカーや、ホームシアターシステムを使っている人が多く、本当に『YouTube』が悪いのか自信がないと感じている人も多いです。
気のせいなのか測定してみました。
「YouTubeの音は悪い 16kHz(キロヘルツ)で強制カットされる」『YouTube』(http://www.youtube.com/watch?v=vitEyDSBsAI)
上の内容で実験内容を公開しています。まずは“ホワイトノイズ”と呼ばれる音声を作ります。“ホワイトノイズ”とは、すべての周波数が一定して分布している音声のことです。ラジオのチューニングがあってないときに出る、“ザー”という音に似ている音声です。ホワイトノイズを“スペクトルアナライザー”(スペアナ)で分析すると、すべての周波数が均一に表示されます。
fig.1 アップロードする前の音声スペクトル 均一に分布していることが確認できる
次に作成された音声ファイルを動画ファイルにして、『YouTube』にアップロードします。その後、『YouTube』の機能を使ってダウンロードします(注:自分でアップロードした動画は正式にダウンロード可能です。)。ダウンロード後、動画ファイルを動画編集ソフトを使って音声ファイルを取り出し、そのファイルをスペアナ解析しました。
fig.2 ダウンロードした音声スペクトル 高い周波数成分が欠落していることが確認できる
『YouTube』でアップロードされた動画の音声は、1万6000Hz(ヘルツ)でカットされていることが確認できます。非常に微妙な部分ですが、ピュアオーディオとしてはこの波形は嫌われると考えます。
考察:何故『YouTube』の音は悪いのか
『YouTube』は3Dのほか、フルHDの4倍にあたる高解像度の動画フォーマット“4K2K”といった、高画質映像での改善を行っています。特に“4K2K”については再生環境がないのにもかかわらず、ストレージ強化などを行って推進しています。一方、サラウンドなどの音声に関わるフィーチャーは、全く強化されていません。それどころか今回の検証のように、とてもピュアオーディオファンを満足させるものでもありません。ただこれは、ユーザーの嗜好(しこう)を正しく分析しているのではと思います。それは、音声に関して気にする人が少ないからと考えます。
例えばテレビを買うときに、大画面のものを買う人は多いですが、大きなスピーカーがついているものより、ベゼルが薄いスタイリッシュなモデルの方が好まれます。また、サラウンドシステムを購入する人も、テレビの台数と比べると非常に少ないと考えます。オーディオシステムも小型化が行われ、音質より手軽さを求めている結果なのかと考えます。大型スピーカーで評価が高いJBLも、『iPod』用のパワーアンプ付きミニスピーカーをリリースしています。
大手スピーカーメーカーのマーケティング結果からみても、これが正直な意見なのかと考えることができます。『YouTube』もこのことをふまえて高音質化という方向を捨てて、高画質化の方向に向いているのだと私は考えます。
※この記事はガジェ通ウェブライターの「じへい」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
普段は動画を使ってガジェットや食品のレビューを行なっています。人が思いつかない切り口でレビューや紹介を行なっています。ネタ探しのために自己資金を使って出張取材も最近は多いです。
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