映画『マイレージ、マイライフ』に学ぶ、リストラ宣告をチャンスに変える方法
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映画は人生の教科書。日々の仕事や生活に活かしたい、たくさんの学びがつまっています。登場人物に共感し、感銘を受け、劇中のセリフやエピソードをふと思い出したりしながら、私たちはまた一段、深みのある人生を歩めるようになるのかもしれません。
さて、今回ご紹介する作品は、独身のナイスミドルを演じさせれば右に出るものはいないジョージ・クルーニー主演『マイレージ、マイライフ』(2009年)。飛行機のマイルとライフを天秤にかけた意味深な邦題(原題は”Up in the Air”)で、仕事や人生の岐路に立つ大人に向けた味わい深い映画です。
クルーニー扮する主人公のライアン・ビンガムは「バックパックに入らない荷物はいっさい背負わない」を哲学に、荷物ひとつで全米を飛びまわる身軽なビジネスマン。出張回数はゆうに年間322日に及び、空港で「おかえりなさい」と声をかけられるほど。そしてひそかな目標は、航空会社のマイルを1,000万マイル貯めること。
そんな彼に、ある危機が訪れるところから物語は始まります。
リストラ宣告人がリストラに?
時はリーマン・ショックの嵐が吹き荒れた2000年代後半。多くの企業が不況のあおりを受けて非情なリストラを断行する中、ライアン属する「リストラ代行会社」は企業に代わって従業員に解雇を告げる請負業務で大忙し。言わば、リストラ宣告人。今日も、明日も、明後日も、ひたすら人のクビを斬りつづける毎日です。
そんなある日、大学を首席で卒業した有能な新入社員ナタリーが入社してきます。彼女はライアン含む所属スタッフたちが全米各地を飛びまわる仕事の仕方を「非効率だ」とばっさり。代わりにオンライン・チャットのシステムを導入し、画面を通じて解雇を伝えるようにすればコストは通信費のみ、出張費は85%カットできると提言します。
費用対効果の高さからいって、ボスも導入に前向きの様子。しかしライアンは怒りのあまり異論を唱えます。
「わたしの仕事は人を絶望の淵に落とすこと。それでも相手を重んじてきた。ネット世代の小娘の提案に社運を託すのか」
もしもチャットが導入されればクライアント先への出張は不要になり、ライアンのような「時代遅れ」の人材はお払い箱になる可能性も。すなわちリストラ宣告人がリストラされるかもしれない大ピンチ。さて、どうする。
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リストラとはチャンスである
ナタリーの教育係として彼女を同行させることを条件に、ひとまずこれまで通り出張をつづけることを許されたライアン。「本当にこの仕事が分かってるのか?」と、彼女に問いかけます。
たしかに見ず知らずの人間にクビを言い渡されて感情をあらわにする人たちを、かんたんに説得できるほど甘くはない仕事。「チャットだけでは限界がある」という彼の考え方には大いに頷ける部分があります。
「我々の仕事は(リストラされる人たちの)苦痛を和らげる役目。淡い希望が見えるところまで、傷ついた魂を船で運んであげる。そしてそこで船を止め、(本人の力で)泳がせる」
まさに助け船。まだ幼い子供を抱え、突然のリストラ勧告を受け止められない相手の説得にナタリーが手こずったときも、ライアンは相手にこう語りかけるのでした。
「生涯ひとつの会社に勤め続ける人を見てきた。彼らは時間に縛られ、幸福を知らない。しかし君は、今がチャンスだ。子供のために、生まれ変われる」
人生にとって大切なものは何か
今がチャンスだ。その言葉は皮肉にも、ライアン自身に投げかけられることになります。
本当に1,000万マイルをためることが人生の真の目標だったのか。家族に深入りせず、独身貴族で気楽に生きていくことが、果たして心の底から望むことなのか。
絶望の淵に立つ数知れない人たちを船で導きながらも、自分自身を省みることのなかった彼が最後に見つけた答えは果たして何だったのでしょうか(つづきはぜひ本編で)。
私たちにもいつか「役目を追われる日」がやって来ます。時代や組織、環境の変化にさらされ、今いる場所が安住の地であり続ける保証はどこにもありません。突然の解雇を告げられ、激しく憤り、あるいは希望を失い、路頭に迷うこともあるかもしれません。
しかし「今がチャンス」は、誰にとっても本当です。それは裏を返せば「今をチャンスととらえることでしか道は開けない」という意味です。変わってしまったこと、もう済んだことに固執し、何かを恨むのではなく、これからの未来を切り開くことにこそ私たちは力を注ぐべきなのでしょう。
その先に見つけた、あるいは取り戻せた「大切な人生」にはきっと、1,000万マイル以上の価値があるはずです。
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『マイレージ、マイライフ』
Blu-ray:¥2,381+税 DVD:¥1,429+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
2016年12月の情報です。
文:松岡厚志
1978年生まれ、ライター。デザイン会社ハイモジモジ代表。ヨットハーバーや廃墟になったプールなど、場所にこだわった映画の野外上映会を主催していた経験あり。日がな一日映画を観られた生活に戻りたい、育児中の父。
イラスト:Mazzo Kattusi
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