どちらも今100万円台の初代&2代目ポルシェ ボクスター。さて、選ぶべきはどちらでしょうか?
▲ポルシェが誇るミッドシップ2シーターオープンスポーツ、ボクスター。その初代モデルと2代目モデルの一部の相場が肉薄している今、どちらを選ぶのが正解なのか?
初代は今、走行4万km前後の2.7が車両160万円前後
車好きたるもの人生一度はポルシェ、特に「911」に乗りたいものだが、率直に言って911は高い。まぁ、ごく一部の不人気世代は爆安だったりもするが、それ以外の世代は古いやつも新しいやつもおしなべて高額なのが、ポルシェ 911という世界的人気スポーツカーの宿命だ。
「じゃあその代わりに」というニュアンスでオススメしたい選択肢が、俗にエントリーモデルとも呼ばれる「ポルシェ ボクスター」。エントリーモデルという英語(正確にはentry-level modelか)を和訳すると「初心者向けの機種」となってしまうわけだが、実際の歴代ボクスターは決して「初心者向け」などではない。911とは異なるミッドシップ・レイアウトがもたらす俊敏で小気味良い挙動、そしてオープンエアの快感が魅力となる「もう一つの機種」である。
で、そんなボクスターだけあって新車や高年式中古車はぜんぜんお安くないのだが、96年10月から04年11月まで販売された初代ボクスターであれば、車両価格100万円台でも十分探せるのである。や、ご承知のとおり2.5Lエンジンだった初期年式はとっくの昔に爆安化していたわけだが、筆者が申し上げているのは2.7Lとなった00年モデル以降の、なおかつ走行5万km以下の物件が、最近お安くなっていますよ……という話である。
実際の中古車のスペックはもちろん千差万別だが、イメージとしては「走行4万km前後の02年式ボクスター 2.7(5MT)の車両価格が160万円前後」といった感じで、ティプトロニックSだとさらに5万~10万円ほど安いといったニュアンス。いずれにせよ「まずまず良好な条件のポルシェが150万円とか160万円」というのは、なかなかステキな話ではないだろうか。
▲こちらがポルシェ初のミッドシップ車として登場した初代ボクスター
▲運転席の背後に水平対向6気筒エンジンを配置して、後輪を駆動する。初期モデルのエンジン排気量は2.5Lだったが、99年末から2.7Lに。他に水平対向6気筒3.2LのボクスターSもラインナップ
2代目も最近は100万円台後半から。しかし走行距離は多め?
だがそこで気になるのは、「最近は2代目ボクスターも、実はそれとほぼ同程度の予算で狙えてしまう」という事実だ。
04年12月から12年5月まで販売された2代目ボクスターは、当然ながら初代と比べて様々な部分がよりブラッシュアップされている。構成部品の80%が設計変更を受け、インテリアの質感や使い勝手も大幅に向上。ソフトトップのリアスクリーンも熱線入りのガラス製だ。初代ボクスターのそれも最終世代はガラス製になったのだが、それ以外の世代はビニール製だったため、耐久性や後方の視認性の面でやや難ありだったのだ。
そしてエンジンも、排気量こそ初代の中期以降と同じ2.7Lだが、2代目ボクスターのベースグレードは+12psのパワーアップを果たしているため、その加速はなかなかのもの。もちろん911の上級グレード的に「鬼のように速い!」というわけではないが、普通に公道を走る分には「うむ、十分速いよな!」と思える程度のダッシュ力。ここも、初代と比べた場合の2代目の魅力だ。
しかし問題は、「車両価格200万円以下とか200万円ちょいぐらいで狙える2代目ポルシェ ボクスターは走行距離がぶっ飛んでいる場合が多い」という残念な事実である。これもまた実際の物件は千差万別なわけだが、おおむね10万kmから15万kmぐらいである場合が多数派を占めるようだ。中古車においては「走行距離が多い=悪」と一概には言えないが、実際に自分の大切なお金を投じる身として考えれば(つまり他人事としてヒョーロンするのではなく、自分事として見るならば)、10万km超のポルシェというのはなんとも微妙である。
要するに同じ100万円台後半ぐらいの車両価格で、走行距離が比較的短い(しかし設計は古い)初代ボクスターを買うのか? それとも走行距離が飛んでる(しかし設計は比較的新しい)2代目ボクスターにするのか? という微妙な問いが、我々の眼前に立ちはだかっているのだ。
▲こちらが04年12月からの2代目ボクスター。型式名は「987」
▲ビジュアル的には「ビッグマイナーチェンジ」っぽいが、実際は大半の部品が新設計になっている
2代目を探すなら「宝探し感覚」で。そしてどちらも整備履歴を重視して
この難問に対してどう答えるべきかは難しい。基本的には「好みと人生観に応じてお好きな方をどうぞ」というのが大前提としてあるが、それではあまりにも投げっぱなしであるため、筆者が考える「選び方」のようなものをここに記したい。
まず「根気強い人」は、2代目ボクスターのなかから「大当たり」を探すのが良いのではないかと思う。100万円台とか200万円ちょいの予算で2代目を狙うと、主には走行距離多めの個体と巡り合うはず。しかしそういった価格の物件のすべてが過走行車というわけではなく、なかには希に4万km台とか5万km台の個体も流通している。
また過走行車というのは敬遠されがちであり、実際、敬遠すべき理由もあるにはあるのだが、すべての過走行車が敬遠すべき存在なわけでもない。なかには、「距離計の数字は確かに13万kmだが、前オーナーは神経質すぎるほど点検整備と部品交換を行ってきた。しかし距離が距離だけに、市場ではどうしても安値になってしまう……」という個体だってあるものだ。こういった過走行車は、必要な部品交換をまったく行っていない走行7万km物件(つまりこれからあちこちが壊れはじめる物件)より、逆に手がかからなかったりもする。そういった物件をコツコツと見つけ出す「宝探し」が苦にならないのであれば、お手頃価格の2代目ボクスターを探してみるのも悪くない。
▲もちろん断言はできないが、もしかしたら過走行車であってもやたらと整備履歴が充実しまくった「お宝」が見つかる可能性もある、タイプ987こと2代目ポルシェ ボクスター
逆にそういった根気強さのようなものがなかったり、あるいは面倒くさいと感じる人は、素直に初代ボクスターの低走行系を探してみるのが手っ取り早いだろう。「低走行=善」とは必ずしも言い切れないが、信頼できる専門店で、それまでの整備履歴と現場での直感を頼りに探してみれば、そう大ハズシはしないはずの選択肢である。そしてもちろん初代でも2代目でも、この年代のポルシェ共通の泣き所であるインターミディエイトシャフトの関連部品が、サービスキャンペーンを通じて対策品に交換されているかどうかを確認しなければならないことは、改めて言うまでもないだろう。
ポルシェというのはボクスターであっても(国産車と比べれば)そこそこ高額な部品代等が必要になるため、純粋に「高コスパ」とは決して言えない車だ。しかし「人生の一時期、ポルシェを所有してみる」という経験は、人生における総合的なコストパフォマンスを必ずや向上させるはず。ぜひ、ステキなボクスターを(100万円台ぐらいで)見つけていただけたなら幸いだ。
▲こちらは初代ボクスター(タイプ986)のリアビュー。インターミディエイトシャフト関連の対策を中心に、走行距離だけをではなく「整備履歴」を重視して探すのが、結局は得策となるはず
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車両価格200万円以下の初代&2代目ポルシェ ボクスターをチェックしてみるtext/伊達軍曹
photo/ポルシェ
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