冬は南の島で働くことにしました —渡り鳥プロジェクト—

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暑い季節は涼しいところへ、寒い季節は暖かいところへ。快適な環境を求めて移動しながら、どこでも同じように働けることをめざす「渡り鳥プロジェクト」。

今回は連載第7回目です。これまでの回では「渡り鳥として飛び立つまでに懸念されること」を洗い出してきました。つまり事前準備編です。たとえば「移動先ではクルマが必要ではないか」 「飼っている猫を留守中にどうするのか」 「しばらく不在にすることを取引先に伝えるべきか」といったトピックです。他にも、飛び立つ前の準備として「身軽な働き方を実現するために試したこと」 「いま住んでいる東京をどうとらえるか」などについても語ってきました(過去の連載はこちら)。

うれしいことに周りから「渡り鳥プロジェクト読んでますよ」なんて声をいただくことが増えました。楽しく読んでもらえて、実にありがたいことです。ただ、話題に出してもらうたびに「まだ鳥になれていませんけどね」と、自虐的に反応する自分がいたのも事実です。渡り鳥になりたい、冬は暖かい場所へ飛び立ちたい、そんな理想を語りつつも、なかなか行動に移せていないジレンマをずっと抱えていたのです。

もしかしたら周りのみんなや読者のみなさんに「準備はいいから、早く飛び立っちゃいなよ」と、内心思われていたかもしれませんね。自分でもそう思います。うん、そろそろ飛び立っちゃっていいんじゃないでしょうか。

「やる」と決めてから見えることがある

思えば7年ほど前に今の会社(ハイモジモジ)を立ち上げたとき、僕は何の準備もしませんでした。起業したらどんなリスクがあるだとか、何が必要になるのかなど、ほとんど何も考えず、無計画に登記を進めていきました。とにかく「会社をつくる」とだけ決めて、何の事業をするのかさえも決めていなかったほどです。

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デスクとパソコンしかなかった会社設立1年目

それでもいざ設立してみたら「あれもやりたい」「これもやりたい」とアイデアが沸き、詳しい人に話を訊いたり、一緒に取り組んでくれそうな人に声をかけたり、逆に困難なことがわかって軌道修正したりと、いろんな物事が動き出しました。結果的に文房具をデザインし、販売するメーカー業をメインにしていく今の形に落ち着いたのですが、それも当初は企図していなかったことです。

「やる」と決めてから見えることがある。動き出すことがある。この「渡り鳥プロジェクト」も、まだ不十分かもしれないけれど、とにかく飛び立つことを決める。そこから始まることもある……そんな気がしています。

決行するなら1月か

「ニッパチ」という言葉があります。日数の少ない2月の「ニ」と、お盆休みがある8月の「ハチ」をあわせてニッパチ。この両月は売上げが下がるから気をつけろという意味で、あらゆる業界でよく耳にするフレーズです。もちろんニッパチの傾向は文房具等を販売しているわが社にもあるのですが、実際のところは1月がもっとも売上げが落ちます。

なぜなら年が明けてしばらくは、どこの会社も取引先への挨拶回りに奔走したり、通常営業のペースをつかみ切れていなかったりで「お仕事」が流通しないからです。みなさんの業界もそういう傾向ありませんか?

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正月明けはのんびりしたいニャ

個人的にもフリーライターとして働き始めて15年、二足のわらじでメーカー業を始めて7年近く立ちますが、少なくとも小正月(1月15日)くらいまでは仕事量が少なくてのんびりすることが多かったです。ですから逆に「それならそれで」と割り切って、読書の時間を増やしてインプットに努めたり、手つかずだった作業に着手したり、水面下で新しいことにチャレンジしてきました。仕事が少ないことを逆手にとって「次の飛躍につなげるボーナスタイム」とポジティブに位置づけてきたのです。

そう考えると、渡り鳥を決行するなら次の1月が絶好のタイミングになりそうです。そもそも月の頭はお正月休みですし、月の半ばを過ぎてもまだまだのんびりしているでしょうから、ここは思いきって事務所を空けられるチャンス。事務所を離れられない一因となっていた商品の出荷業務は外部に委託して身軽になれる見通しが立ち、「どこでも同じように仕事できる環境」は一通り整いましたから、あとはタイミングの問題だけです。

お正月に帰省しないのか問題

ただ、1月といえば帰省シーズン。親元を離れて暮らしている人にとって、年末年始は実家に帰省でき、親族が集まれる貴重な時期でもあります。わが家もそうで、これまでは自分の実家と妻の実家の双方に3日ずつくらい泊まって、身内だけの時間を過ごすパターンでした。ところが実は去年から、この時期に帰省するのをやめました。

理由はざっと挙げるだけでも5つあります。

(1)子供がまだ幼いため交通機関の混雑を避けたい

(2)新幹線の席を取りにくい(いつも東海道新幹線を利用しています)

(3)寒くて外出したくない(実家がある滋賀県は雪がしんしんと降ります)

(4)寒い季節だから着替えなどの荷物が多くて移動が困難

(5)人ごみでインフルエンザ等にかかるリスクが増える

特に(5)については記憶に新しいところ。一昨年、いつものように年末に帰省したのですが、その日のうちにインフルエンザに感染してしまい、39度の熱でふらふらになりながら救急病院に駆け込んで、ひたすら実家で寝込んだことがありました。あんな辛い思いをするのは、もうたくさん。自分だけが感染するならまだしも、妻子を巻き込みたくないですし。

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積雪がある地方への子連れ帰省は大イベントに

もちろん家族みんなで紅白歌合戦を観ながら「J Soul Brothersって何で3代目なの?」と姪っ子に聞いたり、遠くに聞こえる除夜の鐘に思いを馳せたり、お腹が空いてないのに年越しそばをずるずるすすったり、朝起きて初夢の内容を話したら「初夢というのは1月1日の夜に見る夢のことだ」と水を差されたり、お雑煮を食べながら出身地の話題に発展したり、テレビで漫才が観たいのにマラソンにチャンネルを替えられたり、みたいな風物詩も大切にしたいとは思います。でも子供が幼いうちは、しばらくお預けでいいかな。

帰省はタイミングをずらして行っているので、わざわざ年末年始にバタバタすることないかなあと思います。やっぱり1月は渡り鳥になるのにタイミング的にばっちりです。

ということで、決めました。初渡り鳥は新年1月に決行します。どのくらい滞在できるかは確保できる宿次第ですが、できれば一か月くらい暮らせればいいなと思っています。もちろん妻と息子を連れて(猫は実家でお留守番)。

AirBnB利用で沖縄に滞在か

さて、行くとなったらどこに行こう。いま考えているのは沖縄です。理由としては、そもそも「寒いときに暖かいところへ行きたい」という願望に端を発していますので、気候が温暖な「南の方」が良さそうだというシンプルなもの。

海外生活も憧れますが、あまり旅慣れしておらず、子供がまだ幼いわが家にとってはややハードルが高いため、国内に限っていえば沖縄なのかなと。滞在中は都内にいるのと同じように仕事をするつもりですし、あまり不便なところで生活がしづらい離島なんかも初回は避けたいところ。せっかくなので週末くらいは観光できればという欲もあり、総合的に考えて沖縄本島が今のところ第一候補です。

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竹富島にも行けたらいいなあ

そして遅ればせながら、まだ一度も利用したことのない民泊サービス「AirBnB」を利用してみるつもりです。ホテルの長期滞在プランだと費用が結構かさみそうですし、ホテルの一室だけでは子育てと仕事を両立するにはスペース的に難しそうですし。であれば家族の人数や部屋の広さ、立地や設備から「自分たちにとっての最適解」を検索できる同サービスは強い味方になってくれるはずです。

そして実はもう、こっそり宿探しを始めています。「行く」と決めたら、やっぱり気持ちがたかぶって、どんどん前のめりになっている自分がいます。どうか沖縄の良い宿が見つかりますように。

次回は「最終的にどこに行くことにしたか」をご報告できればと思います。突発的に必要になった準備やトラブルがもしも発生したら、そちらもあわせて。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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文:松岡厚志

1978年生まれ、ライター。デザイン会社「ハイモジモジ」代表。主な移動手段は電車と自転車。バイク並にタイヤが太い「FAT BIKE」で保育園の送り迎えを担当し、通りすがりの小学生に「タイヤでっか!」と後ろ指をさされる日々。

イラスト:Mazzo Kattusi


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