クラウドソーシングは人を幸せにするのか?

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こんにちは、ハブチン(写真左)です。

“クラウドソーシングサービス”ってとても便利ですよね。皆さんは利用していますか?

翻訳、文字起こし、会計作業……などなど、様々な業務を手伝ってくれる働き手と、インターネットでマッチングしてくれるサービスです。しかしながら単純作業は、ロボットや人工知能、海外や地方の賃金が安い労働力などにより代替されて、作業単価が下がってきています。今後よりロボットや人工知能が普及にしていく時代に、人間はどうすれば代替されずに働けるのか?在宅派遣サービスを提供している株式会社キャスター代表取締役の中川祥太さんにお話を聞きました。

【プロフィール】中川祥太(写真右)

1986年6月生まれ。西大和学園高等学校卒。日本大学経済学部中退。

20歳の時に下北沢に古着屋を開業するも振るわず閉店。2010年ネット広告代理店のオプト社に入社。社内ベンチャーのソウルドアウト社に出向。

2012年イー・ガーディアン社の新規事業を担当する中でクラウドソーシングと出会い、その可能性を感じ2014年9月、株式会社キャスターを起業。

単純なオペレーション作業に価値はない

ハブチン:私は独立してからクラウドソーシングサービスを使って一部の作業を外注しています。自分が子育てをしながら仕事もしているので、育児と仕事を両立する仲間を増やしたいという想いから、子育てをしている主婦の方に仕事を発注しています。その主婦の方々の仕事が早くて確実で優秀なんですよ。

中川:本当に優秀ですよね。

ハブチン:とても優秀なのに、「えっ!?さすがに安すぎない??」って思う作業単価の見積りを頂くんです。仕事をお願いする側の立場にとっては安ければ安いほどいいのかもしれません。しかし私の場合、妻が子育て中の主婦でもあるので、もし自分の妻が安い作業単価で働いていたら…と想像すると辛いので、逆にこちらから適切な作業単価で請けていただくようにお願いしています。

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中川:そうなんですよね。クラウドソーシングを始めたての方は、自分たちがご飯を食べていくための作業単価設定をいくらにすべきかを知らずに値決めをしている人が多いですね。

ハブチン:私がお願いしている文字起こしの仕事は、募集や提案金額の相場も下がってきているみたいです。価格を下げても、仕事が取れなくなってきているようです。

中川:市場の原理に任せるとそうなってしまいますよね。

ハブチン:私がお願いしている主婦の方もかなり割に合わない仕事だなと感じているようです。でも子育て中は、子供は毎日決まった時間に寝るわけではないし、夜間もまとめて寝ることは少ない。つまり他の人より圧倒的に時間が取れなくて、スキマ時間でできる仕事は他にないから、結果、クラウドソーシングに頼らざるをえない。

中川:以前調査したことがあるのですが、平均時給が100円を切っていました。

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ハブチン:えぇ、100円を切っているんですか!ここ日本ですよね(汗)

中川:企業側としては、アウトソーシングする主な理由はコストダウンを図るためなので、優秀な人がいたとしても、せいぜい時給を120円にあげる…程度の世界になってしまうのです。

ハブチン:恐ろしいですが、その感覚はわかる気がします。クラウドソーシングを使って思ったのは、顔が見えないなと思ったんです。誰に発注するか決める時も、ハンドルネームや紹介文や価格などテキスト情報のみ。顔が見えないと、ロボットに発注しているような感覚になるんです。

中川: 文字起こしの仕事も、今や人工知能を使ったサービスにデータを送るだけで、1秒で全部文字起こしされて返ってきますよ。

ハブチン:1秒ですか!

中川:だからもうオペレーティブな仕事に価値はないんですよね。

ハブチン:そうなのか。

ロボットやAIに代替されない仕事とは

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中川:ほとんどの企業はオペレーションの部分しか見ていないんですが、実はアウトソースするためには、オペレーションの他に“コミュニケーション”と“ディレクション”があって成立しているんです。

ハブチン:コミュニケーションとディレクションですか。具体的にどういうことでしょうか?

中川:たとえば先ほどの文字起こしの仕事で説明するならば、作業目的をすり合わせることはコミュニケーションですよね。文字起こしは何のために必要なのか、記事をつくるためか、それとも議事録として保存するためとか。

ハブチン:なるほど。仕事を依頼するためには要件定義をしないといけないからですからね。それはコミュニケーションが必要ですね。

中川:ディレクションは進行管理ですよね。つまり文字起こしはいつまでに必要で、作業が期限どおり達成するために進捗確認したり、段取りを整えることです。

ハブチン:確かにディクレションが無かったら、たとえ作業が完璧でも期限に間に合わずに必要なくなる可能性がありますからね。

中川:最後にオペレーションです。オペレーションは実際の作業のことで文字起こしのことです。ここは先ほど申し上げたとおり、ロボットにもできる可能性があります。

ハブチン:確かにコミュニケーション、ディレクション、オペレーションの3セットで成り立っていますね。

中川:そうなんです。結局、アウトソーシングサービスを提供する側に立った場合、オペレーション単体だと、人間より機械の方が優秀です。人間が付加価値を出せるところは、コミュニケーションとディクレションの部分だと考えています。

ハブチン:オペレーションの部分で付加価値を出すわけではないという発想がおもしろいですね!言われてみると、確かに私が文字起こしされている主婦の方って、コミュニケーションやディレクションに長けていらっしゃいます。たとえば文字起こしを記事に活用することが目的だと言ったら、単に文字起こしするだけでなく、対談が盛り上がっている部分や第三者から見ておもしろかった部分、あるいはわかりにくい部分を教えてくださるんです。

中川:それはまさにコミュニケーションの部分ですね。

ハブチン:ライティングの仕事って、何千何万の人に読まれてはいるのですが、意外と読んでくださった方がどのように感じたかはわかりづらいんです。せいぜいツイッターやフェイスブックで数行つぶやかれるくらい。でも私がお願いしている主婦の方は文字起こしの感想を書いてくださったりするんです。

中川:ハブチンさんはそこに価値を感じていらっしゃるということですよね。

ハブチン:はい。ディレクションについても同様で、相手の方が子育て中という状況を知っているので、基本的に余裕を持った納期でお願いしていますが、たまに短納期の案件が発生した際には、相談に乗ってもらうこともあります。

中川:まさにその方はコミュニケーションとディレクションが長けた仕事をしていますよね。弊社の場合も、機械ではなくスタッフが顔を出してお客様とコミュニケーションすることを重要視していて、そこにお客様が対価を支払っているんだと説明しています。

ハブチン:今までオペレーション自体に対価を支払っていると思っていたんですが、コミュニケーションとディレクションに価値があることに気づきました。

中川:クラウドソーシングの提供会社も、コミュニケーションとディレクションに価値があることに気づくべきだし、そこにお金を支払ってもらえるように力の掛け具合を転換さないと厳しいかもしれませんね。

働き手側はどのようにクラウドソーシングを活用していけばいいか

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ハブチン:働き手が、クラウドソーシングをうまく活用するためには、オペレーションではなく、コミュニケーションの部分で付加価値を出すことに鍵があるんでしょうね。でも現実的にはオペレーションからなかなか脱却できない。

中川:もともと依頼主がコストダウンを図るためにクラウドソーシングを使っているなら難しいでしょうね。

ハブチン:顔が見えないシステムの中では、どういう目的で発注されているかわからないですからね。どこの誰かわからないまま仕事が終わる。

中川:発注する側・コミュニケーションする側が認識しているかどうか、そこが非常に大きな問題点になっていると思います。

ハブチン:私の場合は、コストダウンのためというより、不得手で時間がかかる作業をお手伝いしてもらっている感覚です。

中川:中小企業の方はそういうニーズが多いですよ。大企業のように戦略としてアウトソーシングしてコストを削減するという考えは少ないですから。

ハブチン:そう考えると同じ作業でも異なる土俵なのかもしれません。営業事務ならある程度適切な単価になるけど、何かの作業になったとたん値段が下がる。中小企業のオンライン事務員という土俵であれば適切な単価が支払われそうですね。

中川:まさに。私たちも中小企業の事務部門のお手伝いさせてもらっていて、派遣社員とかパートタイマーとかアルバイトの仕事がオンラインでできますよとご説明しています。

ハブチン:同じ内容の仕事をしていても、受注する経緯や背景が違うと、単価も大きく変わるってこともありますよね。例えば私が請けているファシリテーションの仕事だと、コミュニティイベントの案件だとお車代レベルの謝礼になることもありますが、企業の研修講師として請けるとその何倍ものギャランティになることもあります。

中川:どの市場のリプレイスを狙うかによって、価値も変動しますね。

ハブチン:あとはブランドを築く仕組みが欲しいなぁ。一応、クラウドソーシングは過去の仕事の評価を数字でわかるようになっていますが、正直点数の違いがどのくらい変わるかはわからないですよね。安心して発注することはできるかもしれませんが、指名で発注するようにはならない。

中川:スコア評価だけではわかりづらいですよね。

ハブチン:だからクラウドソーシングの評価を上げる努力にこだわるのではなく、自分で工夫してクラウドソーシング以外からも仕事がくる状態を目指した方がいいかもしれません。もし私が働き手としてクラウドソーシングを使うなら、新規事業立ち上げ期間と割り切って、スキルとマーケット感覚を身につけたあとで、自分のブランドを立ち上げるでしょうね。

中川:クラウドソーシングを使わなくても仕事がくるのが一番ですからね。

ハブチン:たとえば文字起こしの仕事をひとつとっても、インタビューに特化した文字起こしに絞って、文字起こししながら客観的に面白かったポイントを教えてくれて、感想をコメントしていただけるサービスがあったら、私はそれを使いますね。

中川:ニッチですが、コミュニケーションに特化したサービスですね。

ハブチン:ニッチの方が誰も参入したがらないので、一度ポジション作ったら楽ですよね。大きいビジネスよりも自分たちが生きている分のお金だけでいいならニッチだけど確実にNo.1がとれるポジショニングをとっていく方がいいと思う。

中川:クラウドソーシングの仕組みも成長段階ではあるので、どういうロジックで回っているのか仕組みを理解して、自分なりに工夫していく必要がありますね。自分がサービスを活用するのであって、サービスに使われるのではない。

ハブチン:おっしゃるとおりですね。今日は働き手にとって気づきが得られる要素がたくさんあったかと思います。ありがとうございました!

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【羽渕 彰博(ハブチン】

1986年、大阪府生まれ。2008年パソナキャリア入社。転職者のキャリア支援業務、自社の新卒採用業務、新規事業立ち上げに従事し、ファシリテーターとしてIT、テレビ、新聞、音楽、家電、自動車など様々な業界のアイデア創出や人材育成に従事。2016年4月株式会社オムスビ設立。

ハブチン (@habchin3) | Twitter

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