デキない人のメールには、“たった1つの要素”がない
メールが下手な人ほど自覚症状に乏しい?
メールを巧みに使いこなしてスピーディに仕事を進めていく人や、次から次へと成果をあげていく人がいる一方で、メールによるやり取りが下手で、ミスばかり犯している人がいます。
いえ、本人に下手という自覚があるならいいのですが、本当に下手な人に限って、その自覚がありません。自分が書いたメールが原因でさまざまなミスや誤解、トラブルが起きているにもかかわらず、その原因は自分ではなく、相手にあると思い込んでいるのです。
さて、ここまでの文章を読んで、「そうそう、そういう人っているよね」と思ったあなたは注意が必要です。その理由は先ほど書きました。本当に下手な人ほど自覚症状に乏しいからです。
ミスや誤解、トラブルを招くメールを書きがちな人には共通点があります。「書き手の“当たり前”と読み手の“当たり前”が違う」ことに気づいていない、という点です。気づいていないために、本来すべき説明を省いてしまうのです。つまりは「説明不足」。その結果、「どういう意味?」「何のこと?」と相手を困惑させてしまうのです。
言葉足らずなメールが大きな誤解やトラブルを招き、仕事の流れを滞らせてしまうこともしばしば。「言った・言わない」でこじれれば、信用問題にも発展しかねません。説明不足なメールは、仕事の効率と生産性を著しく低下させます。リスクに満ちたこの状況を放置していてはいけません。
説明不足なメールは、相手に負担をかける悪者だ!
【メール原文】
商品Aの試作品が、あさって届きます。したがって、明日中に会議を行いたいと思います。ご予定はいかがでしょうか。
メール相手の表情が曇りました。「試作品の到着があさってならば、フィードバック会議は、到着後でいいのでは?」。メールを何度読み返しても納得がいきません。
実は、メールにあった「会議」とは、試作品の「フィードバック会議」ではなく、毎月定例で行っている企画会議のことだったのです。試作品が届いた直後だと慌ただしいので、その前にしておこうと思ったようです。
ところが、そうした書き手の意図は、いっさいメールに盛り込まれていません。だからメール相手の表情が曇ったのです。書き手の責任にもかかわらず、読み手は、「自分の理解度が低いのか?」とメールの文面を何度も読み返す……。なんともせつないシーンです。
おそらくこの人は、理解に苦しんだ挙げ句、「試作品の到着があさってであれば、フィードバック会議はあさって以降のほうがいいのではないでしょうか」と確認のメールを返したはずです。普段、言葉足らずなメールばかり送っている人は、メール相手の時間を奪っている点も自覚しなければいけません。
【改善文】
商品Aの試作品が、あさって届きます。試作品到着後は慌ただしくなることが予想されるので、明日中に定例の企画会議を行いたいと思います。ご予定はいかがでしょうか。
改善文では、会議が「定例の企画会議」であることなど、省かれていた情報が盛り込まれています。この文面であれば、メール受信者が困惑することも、メールを何度も読み返す必要もありません。
読み手は「理解しない」「察しない」「自己解釈する」生き物である
書き手がいくら「相手は分かってくれるはず」と思っていても、実際にそうとは限りません。ましてや「察してくれるはず」と期待するのは虫が良すぎます。察するどころか、文章の読み手は、いつでも自分にとって都合よく文面を読み、そして、都合よく自己解釈します。
そもそも「書き手の“当たり前”と読み手の“当たり前”」は同じではありません。むしろ、メールを書くときには、読み手は「何も分かってくれないかもしれない」「察してもくれない」「都合よく自己解釈する恐れがある」という“厳しい前提”に立っておく必要があるのです。
【NG文】
本日は雨のため、打ち合わせを延期させていただけますでしょうか。
メールの受信者は、「どうして雨だと打ち合わせが延期になるの? 意味がわからないんだけど……」と訝しがりました。これもまたメール送信者の説明不足に原因があります。
【改善文】
本日は雨のため、午前中に予定していた外構の視察ができそうにありません。現場を確認していない状態では、たいしたお話ができないため、本日の打ち合わせを延期させていただけますでしょうか。
しっかりと理由を説明した改善文であれば、書き手の意図は誤解なく伝わります。読む人がストレスを感じることもないはずです。
書き手は「そんなことはわざわざ書かなくても分かってくれるだろう」と思っているのかもしれませんが、事実、相手は分かっていません。伝わらない原因を相手のせいにしている限り、メール下手の改善は見込めません。まずは書き手自身に非があることに気づく必要があるのです。
「具体的な説明」が、誤解やトラブルの発生を防ぐ!
自分が書いた文章に対して、読んだ人から「○○とは、どういう意味でしょうか?」と質問を受ける機会が多い方は、いちど自分の「説明不足なメール文章=伝わらない文章」を疑いましょう。もしかすると、相手に大きな負担や迷惑をかけているかもしれません。
もっとも、最終的にどこまで具体的に情報を盛り込むかは、相手の知識や理解度、状況把握レベルなどにもよります。相手が100%理解している事柄を長々と書けば「くどいメール」と煙たがれてしまいます。そこは程度問題として考えなければいけません。
とはいえ、基本スタンスは“備えあれば憂いなし”です。メールでの伝達ミスが頻発している方は、慎重になりすぎるくらいでちょうどいいはずです。「書き手の“当たり前”と読み手の“当たり前”は違う」という大前提に立って、必要な説明を盛り込みましょう。
著者:山口拓朗
『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』著者。
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。忙しいビジネスパーソンでもスキマ時間に取り組める『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)のほか、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。
山口拓朗公式サイト
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