映画「マイ・インターン」に学ぶ、職場に居場所がなかったらどうする?

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(C) 2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

映画は人生の教科書。日々の仕事や生活に活かしたい、たくさんの学びがつまっています。登場人物に共感し、感銘を受け、劇中のセリフやエピソードをふと思い出したりしながら、私たちはまた一段、深みのある人生を歩めるようになるのかもしれません。

さて、今回ご紹介する作品は、御年70を超えてなお活躍を続ける名優ロバート・デ・ニーロ主演作『マイ・インターン』。予告編を観てみるとアン・ハサウェイ出演『プラダを着た悪魔』の続編かのような、働く女性応援ムービーに思えます。あのとき新入社員役だったアンが歳を重ねて、今度は仕事と子育てを両立する新興IT企業の社長とあっては、どうしても「その後」を重ねたくなるものです。

ところが本作品は、むしろデ・ニーロ目線。一度現役を引退した身でありながら、ふたたび社会との関わりを求めてシニア・インターン(社員見習い)として採用された主人公が、そのふるまいから「働くとはどういうことか」を教えてくれる教科書のような物語です。

仕事を与えられない新人が、いかにして会社の中で「自分の居場所」をつくっていくか、そのプロセスを追っていきましょう。

あなたにお願いする仕事はない

創業わずか1年半で社員220人を抱え、現在急成長を遂げているファッション通販会社に入社した70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)。CEOとして多忙を極めるジュールズ(アン・ハサウェイ)直属の部下として配属されますが、入社初日に彼女からこんな言葉を告げられます。

「あなたにお願いする仕事はないの」

ジュールズは「社会貢献の一貫で高齢者を雇用する」という社内の取り組みを聞き漏らしていたようで、ベンのような年長者をそばに置くことに必要性を見出せない様子。しかも相手は40歳も年の離れた、スーツをびしっと着こなす紳士。カジュアルな社風の中ではどうも異質で、扱い方に戸惑うばかりでした。

彼女に「お願いしたいことができたらメールする」と言われ、素直に引き下がったベンでしたが、待てど暮らせど指示は一向に下りてきません。さて、どうする。

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誰に頼まれるでもなくお片づけ

ベンはまず、現状を大らかに受け止めて、自分にできることから始めます。

たとえば「社長はまばたきをしない人が苦手」と聞けば、ナチュラルなまばたきを鏡の前で練習します。オフィスで荷物を運ぶのに困っている女子社員がいたら、気さくに手を差し伸べます。同僚(といっても孫ほど歳の離れた若者)に恋の悩みを打ち明けられたときも、やさしくアドバイスします。年長者だからと一方的に説教するのではなく、まずその言い分を聞いて、そっと背中を押すように。

ゆったり構えて、何事もポジティブに一歩ずつ。どんなに小さなことでも「求められたら応える」姿勢で、周囲からの信頼を少しずつ積み上げていきます。

そうして周りに溶けこみながら、ある日、ベンはひとつの行動に出ます。お洒落で広々としたオフィスの一角にある靴箱や紙袋などさまざまな不要品が積み上げられるデスクスペースを誰よりも早く出社して片づけておいたのです。この誰に頼まれるでもなく率先して行ったふるまいには、日頃から「誰か片づけてほしい」と思っていたジュールズも絶賛。

ただし、これは賭けでもありました。他の社員にとっては不要品を気軽に置いておける便利な場所であり、またそれが本当に不要かどうかも入社直後のベンには判断が難しいはずで、一歩間違えれば勇み足になる可能性もありました。しかし彼は仕事を与えられない中でもふてくされずに周囲をよく観察し、「これなら自分にできる」と判断したわけです。

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自分のイスを見つけよう

ベンがやったことは言ってしまえば「片づけただけ」であり、会社への貢献度という点では瑣末なことかもしれません。けれどここで注目すべきは「仕事を与えられない」というマイナスからのスタートを切った彼が、自然と周囲に溶けこみながら、その観察眼を活かして「自分が座れるイス」を見つけたこと。

それは若者たちがエネルギッシュに働く駆け出しの会社にあって、よく気が利き、やさしく助言をくれ、職場で気持ちを軽くしてくれる人というポジション。

そもそもは自分がいなくても回っていた組織です。インターンであれ新入社員であれ、転職組であれ、入ったばかりの会社ではまともな仕事を与えられないことの方が多いもの。その中で「この人がいてくれないと困る」と思われる存在になるには、まずは「自分は何の役に立てるのか」をしっかりと見極めることが大切なのですよね。そして、勇気をもって行動に出ること。

ベンがFacebookのアカウント開設に初めてトライしたとき、書き込んだ座右の銘はこんな言葉でした。

「正しい行いは、迷わずやれ」

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自分の居場所を見極める観察眼と、信念に裏打ちされた行動力。このふたつがうまくはまったとき、わたしたちも仕事を、人生を切り開いていけるのかもしれませんね。

まずは焦らず、空回りせず、ベンのようにゆったり構えて、周りを見渡すことから始めてみませんか。きっと自分にふさわしいイスが見つかるはずです。

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『マイ・インターン』

ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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文:松岡厚志

1978年生まれ、ライター。デザイン会社ハイモジモジ代表。ヨットハーバーや廃墟になったプールなど、場所にこだわった映画の野外上映会を主催していた経験あり。日がな一日映画を観られた生活に戻りたい、育児中の父。

イラスト:Mazzo Kattusi

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