【私のIターン】面白い仕事とサーフィンがしたい…そして宮崎へ | アラタナ舩山展丈

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宮崎市を拠点に、eコマースに特化したサービスと技術を提供するアラタナ。2015年にはZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ社の傘下に入り、地方のネットベンチャーとして、実績・技術力が注目されています。そのアラタナ社で、若きスタッフたちを影で支えるのが、取締役人事責任者(CHRO)で経営管理本部長の舩山展丈さん。埼玉県出身、早稲田大学卒業後はリクルートへ。宮崎とは縁もゆかりもなかったのに、東京でのキャリアを捨て、Iターン入社しました。何がそうさせたのか? 宮崎市内のオフィスで経緯を聞きました。

【プロフィール:舩山展丈】

埼玉県出身。早稲田大学卒。リクルート入社。広島、高松、静岡でアルバイト求人誌のタウンワークを立ち上げる。2008年アールスリーヘルスケア、2010年リクルートドクターズキャリアへの出向を経て退社。2013年10月アラタナ入社、営業部、管理部のマネジメントを担当。2015年執行役員、経営管理本部長に就任。2016年取締役人事責任者(CHRO)に就任。

スピード出世と超多忙な日々。20代は仕事が生き甲斐だった

2001年、新卒でリクルート入社、2003年にはゼネラルマネージャーとなった舩山さん。ちょっと早すぎると思えるくらいのスピード出世ですが、新規事業部で広島、高松、静岡と立て続けに地方拠点を立上げ、採用、営業に関わり、その経験は年齢や在籍年数を超えるものがありました。新卒同期が都心でサラリーマンライフを送る中、舩山さんは「地方のドブ板営業」に悪戦苦闘する日々。多くの難題に直面するも、仕事は楽しくて仕方がなかったといいます。

2008年、Webの仕事を希望して東京へと戻り、人間ドック予約サイトの責任者に。2012年リクルート退社後、リクルートとヤフーが共同出資した会社を経て、2013年10月宮崎市のアラタナ社へと転職し、現在に至ります。

地方転勤を繰り返し、東京では新しいWebサービスの責任者という超のつく多忙な日々の中で、結婚、二子が誕生します。が、…離婚。平日はひたすら働き、土日は育児に全てを充てていた生活が、一人になり、週末にすることがなくなってしまいました。

離婚後、サーフィンに目覚め宮崎へ

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離婚で身も心も疲れて果ててしまい、仕事にもベクトルが向きません。そんなとき、元上司の一言が舩山さんの心に響きました。「もっと自分のことを考えて、ワガママになれ」

振り返ってみると、仕事漬けの毎日でも20代は楽しかったといいます。3年目からリクルートでマネージャーとなり、収入もあり、仕事の自信もありました。一方、慣れも感じ始めていました。一度クリアしたゲームを何度もやっている感覚で、つまらない…。そこで、今までと全く違うことをしようと決意。「タバコと眼鏡をやめる。そして兼ねてから興味のあった、サーフィンを始めよう」。とはいえボードや車が必要だし、どこの海に行けばいいのかも分からない状態。するとタイミングはやってくるもの。プロサーファーを目指していた男性が部下として入社してきました。2011年5月、彼に連れられて、大荒れの静岡の海でデビュー。初日に怪我をしてしまった舩山さんでしたが、一日の終わりには「明日も連れてって!」と言っていたそうです。

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あっという間にサーフィンにのめり込み、夏にはサーフスポットとして名高い、宮崎へサーフトリップ。そこでアラタナ社の代表取締役、山本稔さんと会いました。実は山本さんは以前リクルートの宮崎支社に勤務しており、顔見知りでした。その後も2度3度と宮崎を訪れるうち、山本さんと2人で話す機会が増えました。そこで同い年であること、アラタナという会社の「創業者」であることを知り、マネジメントの悩みを聞き、「こういう人だったのか!」と刺激を受けたといいます。

時期が重なるように、仕事に転機が訪れます。リクルートを退社して転職するも、うまくいかずに悩む日々。さてどうするか。やりたいのは「面白い仕事がしたい、サーフィンがしたい」の二つだけ。頭をよぎったのは、宮崎の山本さんの顔でした。

地方暮らしで得たもの、失くしたもの

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「宮崎で、ITの力で1000人の雇用を実現したいという山本さんの話に、無茶苦茶だな〜と思いつつ面白さを感じました。私は地方の各地で事業部を立上げて、採用・営業をしてきた経験があるので、アラタナの役に立てるのではないかと。山本さんには『見合う給与を用意できない……』と心配されましたが、目的はお金ではなく面白い仕事とサーフィンですから、給与ダウンも問題ありませんでした(笑)」

これまで転勤で、広島などいろいろな街で暮らしてきた舩山さん。「地方の生活のクオリティの高さを先に知っていたのは大きかった」と言います。宮崎に来て得たものは時間、ストレスのない生活、そしておいしい食べ物。失くしたものはないそうです。「東京の友だちはこちらに遊びに来てくれます。数えたら、去年だけで25人も来てくれました」

地方から東京に戻ったばかりの頃、満員電車に乗れない時期もあったそう。地方暮らしでは、通勤のストレスがありません。例えば小さなお子さんのいるスタッフは、自宅、保育園、会社の間がどれも車で15分圏内。舩山さんに至っては会社まで徒歩5分、海まで車で15分の場所で暮らしています。

「宮崎にきて物欲も減って、無駄な買い物をしなくなりました。服は好きなものをネットで買います。物が少なくて困ることはありませんし、当日お届け便がなくても別に構わない(笑)。それより、海が近くにある生活がお金には代えられない最高の宝物です。東京にいたときは犬を飼っていましたが、今は飼ってないので、今ほしいのは犬かな?」

地方はより自然に、人間らしく生きられるといいます。

舩山さんに聞く、Iターンに向いているのはどんな人?

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「宮崎が好きでまっすぐに来たので、私自身、“Iターン”を意識したことはありません。でも、東京の生活に疑問を感じていたら、出たほうがいいと思います。ただアラタナでは、リタイア気分での移住を考えている人は採用しません。場所は宮崎でも、オフィスでは東京のITベンチャーと同じスピード感で仕事をしていますから。でも一歩外に出たら、そこは宮崎。エキサイティングな仕事とクオリティの高い生活の両方が叶えられる、いいとこ取りの会社なんです」

クライアントの多くが首都圏の企業。ITというジャンルだからこそ、アラタナのような存在が光るのかもしれません。アラタナを志望する新卒、インターン、中途採用の面談で、県外の人には宮崎の街を案内することも。「思ったより都会ですね」「本当に物価が安いですね」という声が多く、成果もでており、採用は順調だそうです。

2、3ヶ月に一度のペースで東京に行くという舩山さん。「30歳くらいで、気力も体力も充実しているはずなのに仕事しかしていない人、いっぱいいませんか?」。そんな人に会う度に、本当にしたいこと、大事なことは何? と聞くそうです。「例えば、海のある暮らしをしたい? したくない? 抜群においしくて安全な野菜や鶏の刺身が、安くスーパーで買える暮らしをしたい? したくない?と(笑)。したいなら、動けばいい」

「私が大学生の頃、当時高校生だった弟が亡くなりました。それもあって、自分の残された時間については割と考えます。何をして生きようか? と。そして自分の気持ちに正直にやりたいことをやるようになったら、やりたいことを極めている素敵で面白い東京の方たちと、たくさん出会えるようになりました。東京でもなかなか出会う機会がないような方にも、ここ宮崎で出会えてしまうのです。好きな場所で、好きな仲間と、好きな仕事をするのは、難しいことではありません。やりたいことがあるなら、今すぐ始めた方がいいですよ」

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【執筆:永田知子】

ライター。福岡県出身。福岡大学人文学部卒。リクルート「九州じゃらん」、All About 等で編集と広告制作を担当。2009年よりフリーのライター・編集者となり、旅行、食、インタビュー等の分野で旅行誌、webメディア、企業広報誌等で執筆。2016年2月、17年の東京生活にピリオドを打ち福岡へUターン。ただいま福岡生活を謳歌中。

撮影:鈴木健介

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