大阪府警がオール府警で撲滅を目指す特殊詐欺の実態とその手口とは?
組織の枠を超えた詐欺被害撲滅体制
毎年、過去最悪を更新する特殊詐欺被害の撲滅を目的に、大阪府警は組織の枠を超えた「オール府警」の体制を整えました。
警察組織は、事件によって扱う部署が異なり、専門性に闌(た)けた「縦割りの組織」になっています。
詐欺など知能犯を扱う部署では、殺人など強行犯は扱いません。
しかし、今回の取組みは、様々な分野の専門性を活かした捜査態勢の構築とも考えられます。
つまり、事件そのものは「詐欺事件」であるものの、検挙される者が「未成年」や「暴力団」であったりします。
未成年と暴力団では専門とする部署が異なり、知能犯を専門に扱う部署だけでは、事件の真相解明は至難と言わざるを得ないでしょう。
この様な「ジレンマ」ともとれる状況の打破と共に、各部署の専門性を活かした事件への「アプローチ」も期待できる取組みです。
当に「柔軟な発想」を活かした、事件の早期解決と未然防止を期待できる体制作りです。
増え続ける「特殊詐欺」の実態
金品を騙し取る犯罪が「詐欺」です。
その中でも、電話など通信手段を利用して対面する事無く金品を騙し取る詐欺を総称して「特殊詐欺」と言います。
特殊詐欺は、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺の「振り込め詐欺」、金融商品等取引名目の詐欺、ギャンブル必勝情報提供名目の詐欺、異性との交際あっせん名目の詐欺、その他の特殊詐欺の「振り込め詐欺以外の特殊詐欺」の8種類に分類されます。
また、言葉を逆手に取った、振り込ませない「受取り型」や「送付型」といった手口も横行しています。
そして被害の件数や額は、前述の大阪府のように前年を上回る地域もあれば、下回る地域もあり、全国では前年を僅かに下回っています。
しかし、認知件数で1万件(前年同月比-66件)を超え、被害総額は297億円(前年同月比-58億円)を超えており、依然として減少傾向には至っていません。
手口の内訳では「振り込め詐欺」が増加(前年同月比3.7ポイト増)し、「その他の特殊詐欺」が大きく減少(前年同月比49.5ポイト減)しています。
また、検挙件数は3千件(前年同月比473件増)を超え、広報活動と捜査体制の強化が功を奏していることが覗えます。
今も昔も変わらぬ、人の心を操る詐欺の手口
詐欺の手口は、今も昔も変わっていません。
題材に変化があるものの「三文芝居」に違いはありません。
では、なぜ騙されてしまうのでしょうか?
人の心は、変化をあまり望んでいません。
望まぬ変化「想定外」の出来事を突き付け、早急の解決を迫ることで「思考力」を奪い、救済を名乗り出ることで「安心」をさせる。
これが、不変の手口(テクニック)です。
時代に応じて題材(話題性)を変化させる事で、目新しさ(新手の手口)を感じさせていますが、人の心を操る方法に変化はありません。
突然の「想定外」に慌てない人がいるでしょうか?
有事に備える職業(自衛官、警察官、消防官など)で、訓練をした人なら慌てないかも知れません。
しかし、殆どの人が慌ててしまう筈です。
そこが、詐欺犯たちの狙いであり、慌ててしまうことが被害のスイッチになってしまいます。
では、被害を未然に防ぐ方法は無いのでしょうか?
いいえ、防ぐ方法はあります。
依然として増え続ける「オレオレ詐欺」の防止対策をご紹介します。
オレオレ詐欺の特徴は、家族に成りすますことです。
そして、被害に遭いやすい人の特徴は、コミュニケーションが足りない人です。
つまり、自ら率先して家族に連絡を取る事が防止対策です。
「もしもし、オレだけど…」今朝話したばかりの息子なら、怪しさを感じることが出来るでしょう。
コミュニケーション不足は「疑心暗鬼」を造り出し、詐欺犯に付入る隙を与えてしまいます。呼び出し音に応えるだけが電話ではありません。
率先した家族とのコミュニケーションで、詐欺犯たちに「想定外」を与えてみては如何でしょうか?
必ず効果がある筈です。
人と人の繫がりは、犯罪被害だけでなく、犯罪加害も抑止します。
家族に限らず、コミュニケーションに勝る防犯はありません。
もう一度見直してみませんか?
(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)
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