働きながら世界一周!“リーマントラベラー”東松さんが語る「僕が旅に出る理由」
「海外旅行」は、多くのビジネスパーソンにとってなかなかハードルが高いものだ。「何年かに一度、夏や冬の長期休暇中にお金を貯めて行く」というスペシャルなイベントと位置付けている人が多いのではないだろうか。
しかし、広告代理店の営業として働く東松寛文さんは、平日は多忙な日々を過ごしつつも、頻繁に「週末海外旅行」を楽しんでいる。この10月からは毎週末海外に出かけており、12月までに全大陸制覇を目指しているという。
東松さんはなぜ、ここまで頻繁に海外旅行を続けているのだろうか?そして、仕事と両立するコツは?詳しく伺った。
“リーマントラベラー”東松寛文さん
突発の一人旅で、「語学力がなくても海外旅行は楽しめる」と気づく
大学卒業後広告代理店に入社し、忙しい日々を過ごしてきた東松さん。毎日終電近くまで仕事をして、金曜日の夜は合コン、そして土日は平日やり残した仕事をする…という、彼いわく「社畜寸前」の生活だったという。
転機は、入社3年目の2012年のゴールデンウイーク。高校時代にバスケットボールに明け暮れていた東松さんは、「超レア」と言われるNBA(北米の男子プロバスケットボールリーグ)のプレイオフチケットを手に入れた。ただし、ロサンゼルス・クリッパーズが勝ち上がらなかったら無効、というものだった。
その後、仕事に明け暮れ、チケットの存在も忘れかけていたが、試合1週間前に思い出し慌てて確認したところ、同チームは見事勝ち上がり、日本時間のゴールデンウイーク中に試合が行われるとのこと。「試合が見られる!嬉しい!」と喜んだものの、試合日まであと1週間しかない。友人たちの連休の予定はすでに埋まっているし、ホテルや航空券も取れていない。結果、航空券だけをなんとか押さえ、ロサンゼルスに単身乗り込むことになった。しかし…。
「それまで海外旅行といえば、友人たちとツアー旅行に行ったぐらい。初めての一人旅でしたが、『地球の歩き方』(ガイドブック)が1冊あればなんとかなるだろうと思っていたんです。しかし…肝心の本を忘れたことに、機内で気づいたんです。自慢じゃないですが、TOEICスコアは400点台、英語力にはまったく自信がありません。これはマズイ…と青ざめました」
しかし、結果的に、東松さんは実に快適な旅行を楽しめたという。
空港に着き、とりあえず地図を買って、ホテルが多くありそうなエリアを確認。現地に行って「Ⅰwanna stay here!」とジェスチャーを交えて伝えたら見事通じ、ホテルに泊まることができた。そして、地図を見ながら試合会場の方面に行きそうなバスを探し、身振り手振りで周りに聞きながらもどうにか会場に到着。無事に試合を見ることができたのだ。
「英語力も、知識も、土地勘も何もない。それでも旅が楽しめたんです。この経験で、海外はハードルが高いもの…という僕の『海外旅行に対する固定概念』がガラリと変わりました」
その際に印象に強く残ったのは、現地の人たちはみな17時ぐらいに仕事を終え、ビーチに出て遊んだり寛いだり、バーでワイワイ飲んだりして、それぞれのナイトライフを楽しんでいる、ということ。「日本だったら、17時なんてまだまだ仕事の真っ只中。こんな生き方もあるんだ」と驚かされた。
「スキあらば海外」のリーマントラベラー生活は、仕事にも好影響
▲左上から時計回りに、ラオス、マイアミ、香港、キューバ。現地の人々と積極的に交流し、生き方に触れる
これを機に、「スキさえあれば海外に行く」という“リーマントラベラー生活”がスタートする。2013年以降は、3連休を中心に年8回ペースで海外にわたり、今年はすでに10回も海外旅行を楽しんでいる。10月からは「毎週末海外」を目指しているので、年末までには18回に増える見通しだ。
そして“リーマントラベラー”生活は、何より仕事に好影響を与えているという。
「仕事のシメキリや期限を、今まで以上に強く意識するようになりました。以前は『最悪、土日に仕事をすればいい』という思いがどこかにあったから、激務ではあったもののどうしても途中に気を抜いてしまう時間があった。でも、今は金曜日の17時には仕事を終わらせないと飛行機に乗れませんから(笑)、やらねばならない仕事をすべて逆算し、1週間の行動計画をきちんと立てて行動するように。仕事に対する集中力もぐんと増しました。また、“リーマントラベラー”として、自身の海外旅行の情報を発信するようになり、自分に自信も付きましたね。これだ、と思えるブレない軸ができると、仕事で困難なことがあっても、乗り越える気力が湧くんです」
海外に行き、現地の人と触れ合うことで、「生き方の選択肢」が広がる
ロサンゼルスでの体験から、「海外は身近なもの」と気づかされたとはいえ、東松さんがここまで頻繁に海外に行く理由はどこにあるのだろう?――聞けば、「生き方の選択肢が広がるから」という答えが返ってきた。
初の一人旅で出会ったロサンゼルスの人々の、自分とはあまりに違うライフスタイルにも衝撃を受けたが、一番衝撃を受けたのは昨年訪れたキューバだったという。
「僕は、現地の人々のリアルな生活を感じたいので、世界遺産などは廻らず、敢えて地元の人々が暮らす地域に行くようにしているのですが、キューバでは僕のことを珍しがってか、現地の人が寄ってたかってもてなしてくれたんです。歩いていると『ご飯でも食べていく?』と声を掛けられ、『お酒もあるよ』『ちょうどダンスパーティーやっているから参加しない?』などと、どんどん誘ってくれる。別の日、道端の水たまりを踏んでしまったら、近くにいたお婆さんが『洗ってあげるよ』と僕の靴をゴシゴシ洗ってくれる。…このほかにもいろいろな方々と触れ合いましたが、誰も1銭たりともお金を要求してこないんです。現地の人の平均年収は約2万4000円、こんなふうに、お金ではなく人と人との触れ合いを大事にする生き方をして、生涯を過ごすという選択肢もあるんだ。旅をすることは、自分の生き方の選択肢を増やすことなんだ…と気付き、肩の力がフッと抜けてラクになれたんです」
“リーマントラベラー”になる前の東松さんは、特に将来に夢を持っていたわけではなく、なんとなく今の会社を選び、目の前の仕事にただただ没頭する毎日を過ごしていた。「大学を卒業したら会社員になるものだ」「若いうちは仕事は忙しいものだ」という固定概念のもと、何の疑問も持たずに目の前の仕事のみに没頭してきたという。
「もちろん、若いうちは仕事に没頭する時間も大切だと思います。でも、世界の人々の日常に触れて、『人にはさまざまな生き方があり、選択肢は無限に広がっている。必ずしも会社員であり続ける必要はないんだ』と気づかされたことで視野が広がり、夢が持てるようになりました。今までは、会社の中で夢を選ばなければならないと思っていましたが、夢はその人の生き方、生きざまであり、将来どうありたいか、なんだと」
そう気づいたうえで、東松さんは今、自分の意思で「今は会社員として働くこと」を選択している。「生き方にはいろいろな選択肢があるのだ」と分かったからこそ、今の仕事は自分を成長させてくれるものだと認識できたのだという。
「以前は、会社員“しかない”と思っていた。でも今は、さまざまな選択肢の中から意思を持って会社員を自ら選択しているという自負があります。以前に比べ、仕事に意義を感じるようになり、俄然楽しくなりました」
会社員こそ、もっと海外旅行を!そして「生き方」について視野を広げてほしい
▲羽田空港にて。これが“リーマントラベラー”の基本スタイル!
今、東松さんが描いている夢は、「もっと海外旅行に行く人を増やし、多くの人に『生き方の選択肢の多さ』を知ってもらう」こと。
「日本人でパスポートを持っている人は、約24%しかいません。日本には『海外はまだまだハードルが高い』と思っている人が多いことを物語っています。でも、実は格安航空券を使えば国内旅行より安くつくことも多いんです。そして、海外に行って現地の人と触れ合い、異なる文化や価値観を知ることで、たくさんの気づきを得られますし、自身の人生の選択肢も広がるはず。仕事が、人生が、俄然楽しくなると思うんです。だからこそ、『もっと気軽に海外を楽しんでほしい』という思いから、“会社員をしながら海外に行く”にこだわっています。僕ならではの旅の方法を参考にしていただき、気軽に海外を楽しむきっかけになれば嬉しいですね」
そのためにも東松さんは現在、毎週末海外に飛び、「働きながら世界一周」に挑戦している。平日はフルに働き、金曜日には海外へ。そして月曜日朝に帰国し、また仕事に向かうという生活。しかし「全然つらくはない」と笑う。
「確かに平日は忙しいですが、現地での気づき、満足度のほうが高いので、疲れが吹き飛んでしまうんです。知らない土地に行けば、当然ながら知らないことばかりですが、だからこそ子どものような気持ちでワクワクできる。『行けた!できた!通じた!』という感動を味わえるのも、海外ならでは。数日間という短期スパンの中で、自身の成長を感じられる機会なんて、日本にいたらそうそうない。このワクワク感を味わいたくて、また海外に足を運んでしまうんです」
※11月4日(金)には後編「働きながら世界一周!“リーマントラベラー”東松さん推薦会社員でも気軽に行ける“週末海外旅行”プラン」を掲載予定です。お楽しみに!
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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