まるで船のなかにいるよう…京阪神にある船を模した喫茶店とは?
足を踏み入れれば、まるで船のなかにいるかのような気分を味わえる――そんな喫茶店が京阪神にあるのをご存知でしょうか。本書『喫茶とインテリア WEST』では、そんな素敵な喫茶店を紹介しています。
まずは大阪から。市内にある”珈琲艇キャビン”は、都会の真ん中にあって港の空気を感じられる喫茶店。1978年、道頓堀川に面したビルの地下で開業したキャビンの店内は、細長い船室のよう。
「店へと下る小ぶりな入口は把手が舵輪(だりん)になっていて、そこからもう船に入っていく気分。地下一階の客席は奥に細長く、ウッディでほの暗いインテリアはキャビン(船室)そのものだ」(本書より)
店内には、いたるところに船のモチーフが散りばめられていますが、そのなかでも、とくに注目すべきは、川に面して設けられた丸い窓。この窓、なんと日立造船から取り寄せた、本物の船舶用なのだそう。
まだ道頓堀川の水位調整ができなかった頃には、台風で水かさが増して窓まで浸かったことも度々あったそうですが、その際にも、この窓のおかげで店内に水が漏ることはなかったのだといいます。
続いて、京都四条通の東端、八坂神社の目の前にあるのは、1969年開業の”ぎおん石 喫茶室”。宝石や鉱石、化石などを扱う”ぎおん石”の二階にある喫茶室です。空間の密度に圧倒されるという店内は、檜の無垢板で覆われ、素材のもつ質量を存分に感じることができるのだといいます。
「壁と天井の全体が、時を経て飴色に艶の出た檜の板で覆い尽くされている。しかも厚みのある無垢の板が湾曲し、束になって踊っているようだ」(本書より)
職人の巧みな技の光る、建築への熱い思いの感じられる喫茶室ですが、このビル全体は、船をモチーフにデザインされているそう。そのため二階の喫茶室は船内、三階の蕎麦屋はデッキを表現しており、ビルの外観は、屋根が空中に持ち上げられた船首のような形をしているのだといいます。
さらに、神戸の喫茶店といえば、必ず名前が挙がるという、1948年開業の”エデン”も、内装全般を船舶・キャビンを作る会社に依頼して制作してもらうほどのこだわりをもった一軒。神戸の港に停泊している客船でコーヒーを飲んでいる気持ちにさせてくれる喫茶店だといいます。
本書では、開店時のインテリアとスピリットを今もなお保ち続ける、関西にある古き良き33の喫茶店と洋食店を写真とともに紹介。個性豊かな喫茶店の写真の数々を眺めていれば、自ずと足を運びその空間のなかに身を置きたくなるはずです。
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