敬語、ちゃんと使いこなせてますか?
突然ですが、敬語に関する問題です。
a.「来られる」と「いらっしゃる」—-どちらがより丁寧な言い方でしょう?
b.「お話になられる」と「お話になっていらっしゃる」—-片方は間違い敬語です。どちらか分かりますか?(答えは最後にあります)
尊敬の気持ちや心配りを相手に伝える敬語は”美しい日本語”の代表として、近年再び脚光を浴びつつあります。
文化庁が平成7年度から毎年全国の16歳以上の男女を対象に行っている「国語に関する世論調査」(※)では、「敬語はどうあるべきか」の問いに対して、平成27年度には64%が「伝統的な美しい日本語として大切にされるべき」と回答しています。過去の調査結果を見ると、平成16年度は、同じ問いにそう答えた人は54%、平成9年度には47%ですから、敬語への関心が年を追うごとに高まっていることが分かります。
それでも、「敬語を使いこなしている」と自信を持って言える人はそう多くはなさそうです。敬語はただ丁寧であればいいという訳ではなく、相手や状況に合わせて使い分けなければ、かえって失礼な言い方になってしまうこともあるからです。
敬語の講師として、企業、学校など教育研修の場で幅広く活躍し、書籍『一生使える「敬語の基本」が身につく本』の著者でもある井上明美さんは、「基本を身につけ、ポイントを押さえれば、敬語を使いこなすのは難しくない」と言います。
それでは本書にもとづいて、敬語の「基本ルール」についておさらいしましょう。
「おっしゃる」、「召し上がる」など相手を高めて敬意を表す「尊敬語」と、「伺う」「申し上げる」など自分を低めることで間接的に相手を高める「謙譲語」、「です」、「ます」のように聞き手に対して丁寧に述べる「丁寧語」—-敬語が大きく3タイプに分かれるというのは、国語の時間に習いますが、さらに実際に使う場面から考えると、「謙譲語」の中には、自分の側に関するものごとをへりくだって聞き手に丁重に述べる「参ります」、「弊社」などの「丁重語」が存在します。また、丁寧語の仲間でも、「お酒」、「ご飯」などのように、ものごとを美化して述べる言葉は「美化語」。敬語には「尊敬語」、「謙譲語」、「丁寧語」、「丁重語」、「美化語」の5種類があるというのです。
本書では、「一生使える敬語」の習得をめざして、相づちの打ち方、依頼、謝罪、断り方などシーン別の敬語の言い換えから、手紙・メールの書き方までが取り上げてあり、実践にすぐに役立つ内容になっています。
さらに井上さんはこう綴っています。
「心は見えるものではありませんが、それを使う人の言葉や態度、雰囲気などから心を察することはできます。相手や場面を考慮したふさわしい言葉遣い・敬語は、真に生きた敬語となって一生手放せない、一生ものの宝物となるに違いありません。」
敬語を使いこなせる人は、誰に対しても言葉の使い方が適切で、周囲から信頼され、一目置かれる存在であることが少なくないようです。「できる大人」と呼ばれたいなら、敬語をマスターしてみてはどうでしょう。
【問題の答え】
a. どちらも尊敬語ですが、「いらっしゃる」は来るの「専用の尊敬語」であり、「来られる」は「~れる・~られる」型の尊敬語となります。敬意の度合いで言えば、「いらっしゃる」の方が上です。
b. 間違い敬語は「お話になられる」。これはお話になる(尊敬語)に話される(尊敬語)を重ねたもので、二重敬語と呼ばれる誤用です。一方、「お話になっていらっしゃる」は
「話す」と「いる」の二つの言葉から成り立っているので、それぞれの言葉を尊敬語にしてつなげたものであり、「敬語の連結」と呼ばれる正しい使用法です。
(参考資料)
※平成27年度国語に関する世論調査」(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/2016092101.html
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