都内の大停電について「情報開示しない方がよいのでは」という国会議員の発言に賛否
12日午後に東京都内で発生した停電は、23区を中心に58万軒にも及ぶ大規模なものだった。詳しい原因は調査中だが、埼玉にある変電所付近で老朽化した地下送電ケーブルに何らかの原因で火花が引火した可能性があるとみられている。
この大停電に関連して、ある国会議員の発言が物議を醸している。
今朝、テレビで「埼玉のここで起きた火災によって、こんなに多くのところが停電をした」ということで、地図が出ていた。あれは報道の自由とは言いながら、情報は開示しないほうがよろしいんじゃないかな、という気がしている。日本は島国で、テロ対策でも性善説を唱えてきたが、ここに来て(五輪などで)世界からいろんな方がみえる時には、こうしたものは関係者だけにして、できるだけ隠すべき情報は隠し、開示すべきものは(開示する)、というメリハリをつけていくべきだ(※1)。
自民党所属の参議院議員・山東昭子氏が国会内の囲み取材で語ったものだ。2020年の東京五輪を見据え、テロ対策のためにも重要なインフラ施設は秘匿した方が良いという意味で語ったと解釈できる。一般人が主要な変電所の場所や大動脈のルートまで知る必要があるのかということだろう。この発言についてネット上では
・目の前で起きてる火事をどうやって秘密にしておけるんだろう。メディアがやる前にすでにtwitterで流れているのに
・うわー「防諜」きたわ
・こんなんで情報統制したがるんだから、原発事故なら尚更だろうな
・何でも秘密にしてどこまで独裁的にするつもりか!
・情報が公開されることは民主主義社会の根幹。そんなことも理解せず、戦前回帰の発想
・こんなんだから、北朝鮮のような憲法をつくりたがるのね
・国家安全保障のためには国民の知る権利も制限するということですね
・この意見に噛みついてる人、送電線の位置なんて知ってどうするつもりだろうか?
・報道見てて私もそう思いました。大まかに言って都内に入る電力は3系統の様ですが、これ全部意図的に遮断されたら大パニックになります
・言われてみると確かに。こんなインフラ施設、場所や構造等を詳らかにしたら「狙って下さい」って言っているようなものだ
・確かにテロリストに手段を教えた感じだね
と賛否が分かれている。否定的な人の多くが「事故があった事実および事故原因の秘匿」ととらえて反応している一方、肯定的な人は「重要施設の秘匿」を読み取った上で頷いている。
電気・ガス・水道・通信といったインフラに対するテロ攻撃の脅威は海外でも以前から指摘されている。米国連邦エネルギー規制委員会は2014年、5万5000以上ある変電所のうち、わずか9か所が攻撃されただけで、米国の電力網が1か月以上シャットダウンされる恐れがあるとする報告書をまとめ、重要施設の安全確保のための新基準を設定するよう提示した(※2)。
首都圏の大停電といえば2006年にも、旧江戸川を横断する送電線にクレーン船のクレーンが接触した事故により大停電が発生している。ライフラインがほんの数か所切断されたただけで首都中枢が機能不全に陥る脆弱性は10年前と少しも変わらない。山東議員の発言は我々に、重要なインフラ施設をどう守っていくのかということを含め、安全保障について考えるきっかけを与えてくれていると思うのだが、いかがだろう。
画像とソース:『朝日新聞』および『Twitter』より引用
https://twitter.com/search?vertical=default&q=http%3A%2F%2Fwww.asahi.com%2Farticles%2FASJBF4SY4JBFUTFK007.html[リンク]
※1:http://www.asahi.com/articles/ASJBF4SY4JBFUTFK007.html[リンク]
※2:http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052702304730304579436202106054342[リンク]
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: ろくす) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。