家族や夫婦も大切だけど自分も大切。依存から自立がキーワード
博報堂生活総合研究所(以下、博報堂生活総研)では、定点観測型のアンケート調査「生活定点」を2年ごとに実施している。2016年調査では、生活者に「この先は良くも悪くもならない」という認識が広がっていることが分かったという。そんな時代、住まいには何が求められるのだろう?【今週の住活トピック】
「生活定点」調査2016年を公表/博報堂生活総合研究所
家族や夫婦も大切だけど、自分も大切!?
2016年調査の大きな特徴は、日本の「失われた20年」という激動の時代を経て、2010年前後から生活者は、「社会や時代に必要以上に熱く怒りを感じることも、悲観して冷え込むこともなく、現状を静かに受け止め、身の周りに幸せを感じながら暮らしている」様子が浮かび上がったという。
具体的に、次の4つの特徴を提示している。
(1)公より私 「社会より個人生活の幸せをまず確保」
(2)先より今 「今の充実を大切にする」
(3)期待より現実 「愛よりお金。確実に役に立つものを重視」
(4)依存より自立 「依存しないことで、お互いの幸せを確保」
調査結果を待たなくても、今の世相を表しているとうなずける特徴だが、分かりづらいのは(4)の「依存より自立」についてだ。「休日はできるだけ家族と一緒に過ごしたいと思う」や「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」という項目で前回よりポイントを落としているからだという。
「家族や夫婦は、一緒にいなければならない」という考えが弱くなり、より「自分」を重視する流れになっているということだろう。住まいについても、押さえておきたい特徴だ。
女性が支持する「住まいの安全」、下がり続ける「家族一緒のスペースの充実」
細かい調査結果が、同生活総研の「生活定点 1992-2016」に公開されている。注目したのは、カテゴリー5の「住」について。「住」に関する質問は2つなので、それぞれを詳しく見ていこう。
「あなたの住生活にあてはまるものを教えてください」という問いに対して、ベスト10を抜粋すると次のようになった。【画像1】Q「あなたの住生活にあてはまるものを教えてください」(出典:博報堂生活総研「生活定点」調査より上位10を抜粋)
1番目の「住むなら一戸建ての方がよいと思う」(63.7%)は、調査ごとに下がり続け、2016年調査では過去最低となった。むしろ注目したいのは、2番目の「住まいは安全であることが第一だと思う」(60.1%)だ。全体の割合はほぼ横ばいであまり変化がないが、常に女性のほうが高い結果になっており、2016年は7ポイントの差があった。
女性のほうが家にいる時間が長かったり、在宅する家族を心配する気持ちが強かったりということもあるのだろう。3番目の「木の床(フローリング)が好き」(51.3%)と4番目の「住まいのダニ、ホコリ、カビなどが大変気になる方だ」(40.0%)もほぼ横ばいであるが、やはり女性のほうが高い結果を示していることからも、それがうかがえる。【画像2】「住まいは安全であることが第一だと思う」男女別推移(出典:博報堂生活総研「生活定点」調査より転載)
一方、9番目の「自分で家や家具などの修理、修繕をする方だ」(27.0%)については、こちらも横ばいではあるが、男性のほうが常に高く、2016年調査では女性と約13ポイント差があった。年代別では、特に20代が低い点が気になるところだ。実家や賃貸が多くて、自分の家ではないという意識なのだろうか。
男性はインターネット環境を重視。女性はセキュリティを重視
次の質問、「家の設備や機器の中で、充実させたいものは何ですか?」のベスト10を抜粋すると次のようになった。
【画像3】Q「家の設備や機器の中で、充実させたいものは何ですか?」(出典:博報堂生活総研「生活定点」調査より上位10を抜粋)
1番目の「無線LAN(無線でインターネットやメール)ができる通信設備」(48.8%)や5番目の「ブロードバンド環境(ADSL・光ファイバーなど)」(33.1%)はインターネット社会を反映した結果だ。若い世代ほど高い数値を示していて、男性が女性より強く求めているのが特徴。特に「無線LAN」は急上昇しており、ほぼ横ばいの「ブロードバンド」より今の時代にニーズが強いのだろう。
注目したいのは、2番目の「防犯、防災などのセキュリティ設備」(48.0%)。ほぼ横ばいで推移しているが、男女別にみると女性にセキュリティ重視の傾向がうかがえる。女性の方が、防犯や防災の安全性を気にすることがこの結果からもうかがえる。【画像4】「防犯、防災などのセキュリティ設備を充実させたい」男女別推移(出典:博報堂生活総研「生活定点」調査より転載)
インターネット社会に対応することは当然としても、女性を中心として基本的な住まいの安全については依然として強く求められている。一方で、「依存より自立」という、家族や夫婦は一緒にいなければならないという固定観念も薄れつつあるので、住まいにおける家族の居場所なども、今後は工夫していかなければならないだろう。●参考
・博報堂生活総合研究所「生活定点 1992-2016」
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/10/119366_main.jpg
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