20世紀文学を代表する名作『失われた時を求めて』の誕生秘話とは
2017年から流通がはじまるイギリスの新10ポンド紙幣のモデルに決定している、作家ジェーン・オースティン(1775−1817)。日常の出来事を優れた描写で綴り、イギリスの田舎町に住む中流階級の若い女性が結婚に至るまでを描いた『分別と多感』『高慢と偏見』『エマ』『マンスフィールド・パーク』『ノーサンガー・アベイ』『説得』という6つの長編小説を残し、心理写実主義の先駆けとして知られています。
紙幣には彼女の肖像とともに、ウィンチェスター郊外のチョートンという村にある兄エドワードが所有していたコテージで、オースティンが愛用していた12角形の机もデザインに活かされているそう。ちなみに、オースティン記念館として現在も残っているそのコテージのダイニングルームで、この12角形の机は見ることができるそうです。またこのコテージには、とある特徴が。
書籍『世界の文豪の家』にはこう記されています。
「彼女が生きていた時代はまだ女性が小説を書くことは珍しく、風当たりも強かった。そのため彼女も当初は匿名で作品を発表し、極めて親しい者以外には小説を書いていることすら打ち明けていなかったという。チョートンのコテージには開け閉めするとギィィと軋むドアがあり、訪問客らから正体を隠すのに一役買っていたといわれている」
本書では、世界の文豪たちの創作活動の場であった”家”に注目。豊富な写真とともに、文豪たちがどのような環境で、数々の名作を生み出してきたのかに迫っていきます。
たとえば、20世紀文学の源流とも評される、全7篇からなる『失われた時を求めて』の著者、マルセル・プルースト(1871−1922)。プルーストは、パリのオスマン通りにあるアパルトマンの部屋において、『失われた時を求めて』を執筆する際、執筆に集中するため外部からの光や音を遮断。部屋の窓は厚いカーテンで覆い、壁には防音のためにコルクを張ったといいます。また、幼少期から病弱で喘息に悩まされていたため、塵埃対策にも神経を使っており、掃除も入念にしていたとのこと。このコルクを張った部屋は、現在、パリのカルナヴァレ博物館で再現されているそうです。
『トム・ソーヤーの冒険』『最後の一葉』『赤毛のアン』『誰がために鐘はなる』『風とともに去りぬ』……こうした数々の名作はどのような家のなかから生み出されたのか。その創作現場をのぞいてみたい方は必読の一冊です。
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