メールやプレゼンも声で作る!ビジネスで大活躍する「音声入力」の極意
検索やアラームセット、日々の記録まで。手がふさがっていてもスマホに話しかけるだけでさまざまな機能が利用できる、音声入力機能が注目を集めています。
今回は、スマホの音声入力のみで書かれたという『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!』(講談社刊)の著者・野口悠紀雄先生に、ビジネスで役立つ音声入力機能についてインタビュー。
野口先生によると、この一、二年で音声入力の認識機能は急激に向上しており、およそ過去10年分の変化があったそうです。日々進化しているという音声入力は、具体的にビジネスシーンでどう活用できるのか?
シーンごとに使えるワザをお伺いしてみました。
メール:音声入力なら、スピード返信で信頼がアップ
音声入力の強みは、ずばり『気軽に文章を書けること』と語る野口先生。まずはビジネス上のやりとりで欠かせない「メール」を作成する際、音声入力はどう役立つのでしょうか。
「特に謝罪のメールや断りのメールなど気の進まない内容であるほど、取り掛かれない人が多いと思います。そういうメールは先延ばしにするほど書きにくくなる、悪循環になってしまいます。 そこで音声入力を利用して、とにかく思いついたことを何でも言ってみましょう。あとは順序を変えて整えればOKなので、文章を打つよりも気楽にメールに取り掛かることができます。」
ただし音声入力の精度が完全ではなく誤変換が発生してしまうため、音声入力をしたメールをそのまま出す、ということはまだ難しいようです。入力した文章の修正は欠かさないようにしましょう。
また気が進まないメールのほか、ついタイミングを逃してしまう簡単なメール返信にも音声入力は有効です。
「時には『メール受け取りました』『承知しました』と、一言のみのメールをしなくてはならないときもあります。それくらいの短文であれば、音声入力でもほぼ誤変換なく入力できるため、より手軽にスピーディーな返信ができます。
あるいは急いでいて手が離せないとき、例えば『あと10分で着きます』と音声入力して、そのままメールで送る、ということもできます」
こまめなメールは信頼関係を築くうえでとても重要です。メール返信に時間がかかってしまう、つい送るのを後回しにしてしまう、という方はぜひ利用してみましょう!
アイデアづくり:音声入力でアイデアをストック
企画書作成やブレインストーミングなどのアイデアが求められるシーンでは、音声入力が大活躍。
野口先生によると、以前は『残す価値があると思うアイデア』のみをメモしていたとのこと。しかし、音声入力を利用すれば思いついたことを内容問わずすぐにメモできる、むしろメモするべきといいます。
「ビジネスで最も音声入力が効果を発揮するのは、メモの機能です。音声入力によって、『ちょっとしたこと』を簡単にメモできるようになりました。歩きながらでも横になったままでもフリーハンドでメモできますし、メモを無くすこともありません。溜まったメモが、そのままアイデアのストックにつながるのです。
例えば『いまからあなたの会社の現状について話してください』と言っても、言葉に詰まってしまう人が多いでしょう。不満などはすぐに言えるかもしれませんが、改善のアイデアは?と問われると、何も言えなくなってしまう。それはつまり、頭の整理ができていないということです。
ですから音声入力を使ったメモを習慣づけると、思いついたアイデアをアウトプットして、ストックしておく訓練になります。」
プレゼン:ツイートをつなぎ合わせて脳内の整理
苦手な人も多い「プレゼンテーション」においては、資料とトーク、どちらにも音声入力は有効。
野口先生によると、プレゼンテーションでは、全体の論理構成が整理され、つじつまが合っているかどうかがとても重要だといいます。
「プレゼンテーションにおいて重要なのは『構造』です。どんな文章であっても、それを構成している基礎の文は1ページにつきだいたい150字程度。つまりツイートの長さとほぼ一緒です。この長さのものは、論理構造などを考えなくても誰でも書くことができるでしょう。 それらの文章を並べていくと、Aの次に B の話が来なければいけないのにBがない、と文章を俯瞰して見ることができます。」
事前にきちんと準備をしていないと、プレゼンテーション本番になって理論の破綻に気づくという可能性があります。そこで、準備段階で音声入力でのメモが効果を発揮するとのこと。
「初めは内容を整理できていなくてもよいですし、一言程度でもよいので、材料となる原稿を作っておく必要があります。その後、順序立てて論理的に内容を構成していくという作業がプレゼンテーションにおいては一番重要です。音声入力は、その材料となる文章作りに大変役立ちます。」
音声入力でのメモストックをもとにアイデアを固めていくと「この話をするためには、この根拠が必要だ」と話の順番が見えてくるとのこと。
また、考えを口頭で述べるプレゼンテーションには「話す訓練」が必要になりますが、これもスマートフォンに話しかけることで「自分の意見には何が足りないか」が明確になります。
そして足りない意見を補填し、話す順序を頭の中で整理すれば、本番でも「いま自分がどの段階の、どの話をしているのか」が明確になり、慌てることなく自信を持って話せるのです。
今日からすぐに使える音声入力講座
実際に、野口先生が日頃から多用している音声入力のデモンストレーションを見せていただきました!
ここで音声入力機能と併せて重要なのが、クラウド機能です。
まず、スマートフォンのGoogleドキュメントアプリに向かって文章を音声で入力します。
ちなみに音声入力のみで、ここまで正確に文章が生成されています。
そしてGoogleドキュメントのクラウド機能によって、パソコン画面に文章がリアルタイムで同期されていきます。
きちんと文章が同期できていることを確認!
こうした使い方をすれば、パソコンから離れているときや外出先で音声入力した文章を後からPCで推敲したり、他人と共有したりということが可能に。
落ち着いてパソコンの前にいる時間が取れない、または体調不良でパソコンの前に座る気力がない…というときに役立ちそうです。
音声入力ならばスマートフォンに向かって喋るだけでOKですからね。
これからのビジネスは「アイデアの価値」が勝負
野口先生によると、特に音声入力を使った「メモ」は、今後ビジネスにおいて特に重要になっていくとのこと。
「音声入力は、日々新しい成果を出さねばならない、研究分野にいる人々にとって大きな変化をもたらしたと思います。もちろん、ビジネスでもアイデアを出すことはとても重要です。 例えば『新しいビジネスモデルを考えてみなさい』と言われても、考えがバラバラとしてまとまらない。または自分が『何もアイデアを持っていない』ということが浮き彫りになる場合があります。
そこで自分の考えを「見える化」することでアイデアを発展させることができ、さらに新たなアイデアが生まれてくるでしょう。」
ビジネスシーンおいて、新しいアイデアを生み出すことは今後非常に大きな経済価値を持つと野口先生は言います。
「UberやAirbnbなどの新たなサービスは大きな経済価値をもたらしました。しかしUberは『スマートフォンでスムーズにタクシーを呼ぶ』というシンプルなアイデアを形にしただけ。まさに『アイデアの価値』が従来よりも増している象徴だと思います。モノが増えている現代では、モノよりも『アイデアをどう生み出していくか』という点が今後ビジネスの中心になっていくと思います。音声入力のビジネスへの影響は、それがもっとも大きいのではないでしょうか。」
野口悠紀雄
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。
伊藤七ゑ
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