「今後の津波防災教育に”釜石の奇跡”を活かして」
東北地方の太平洋側を中心に、未曾有の津波被害をもたらした東日本大震災。それを受けて、今年6月に制定された『津波対策の推進に関する法律』により、毎年11月5日は『津波防災の日』と定められた。2011年11月5日の内閣府(防災担当)主催「津波防災の日シンポジウム2011 東日本大震災から学ぶ~大災害をいかに生き延びるか~」では、津波防災に関する行政や教育機関の取り組みに関して、パネルディスカッション形式で報告や議論が行われた。
■防災教育にはコミュニケーションが不可欠
岩手県釜石市の防災・危機管理アドバイザーを2004年より務め、同市の小中学生の津波防災教育を指導した片田敏孝氏(群馬大学大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻教授・広域首都圏防災研究センター長)によると、津波防災教育プログラムを作成する上での自身の考え方について、
「子どもたちに(津波防災の)知識を与えるだけでなく、主体的に自分で考え、行動を取る姿勢を与えるということ。防災教育とは人(の意識)を変える行為。全身全霊で向かおうとしているのか、こちらの姿勢もすごく問われる。ビジネスライクなやり方では(津波防災教育は)伝わらない」
と述べ、「教える」とか「教わる」ではなく、立場の違いを超えた、真摯なコミュニケーションが重要であると説いた。
■学校教育の課程に、津波防災教育を組み込むべき
片田氏から津波防災教育について指導を受けていた齋藤真氏(釜石東中学校教諭)は、東日本大震災発生直後、適切な判断と行動によって、市内14の小中学校にいた約3000人の児童・生徒が大津波からの避難に成功した、「釜石の奇跡」と呼ばれる自身の体験に触れ、
「今後の津波防災教育について、本校の(釜石の奇跡に至る)一連の流れを、ぜひ教育課程に盛り込んでほしい。例えば、道徳の教材として、私たちの取り組みを(授業内容に)組み込んで頂くなど、私たちの経験が生きればと思う」
と日本の学校教育課程に津波防災教育の導入を訴えさらに今回の経験をさまざまな媒体(絵本の製作やテレビによる報道など)で伝え続けていきたいと語った。
■防災担当課だけが、防災の仕事をするわけではない
また、「地方自治体の防災担当課に求められることは何か?」との質問が会場から寄せられると、防災・危機管理の専門家として片田氏は、
「地方自治体の防災担当課は、防災のすべてを司るところではない。(役所、役場の)すべての部署に『防災』の仕事が出てくる。つまり、平常モードの仕事と、災害モードの仕事があるということ。防災担当課が防災をすべてやろうと考えるのは間違い」
と答え、地方自治体のすべての部署において、常に危機管理への意識とその備えが必要であると説いた。その上で、「地域全体、役所全体、みんなで(災害に)備えるということが防災の基本である」と総括した。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「片田教授が防災教育について語る」部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv67690862?po=news&ref=rews#2:55:30
(内田智隆)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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