「エネルギーを多く使わなくても豊かに生きられる国に」 京大・小出助教が高校生にメッセージ
京都大学原子炉実験所助教で原子力発電の危険性を訴えている小出裕章氏は、2011年11月4日に長野県で高校生に向けた「核=原子力の本質 若い人たちに知って欲しいこと」というテーマの講演を行い、集まった高校生からの質問に答えた。
■核=原子力 技術に平和利用も軍事利用もない
小出氏は講演の中で、日本が原子力発電を推進する本当の理由について、その技術が核兵器として利用されてしまう可能性を指摘した。「Nuclear Development」という言葉には、「核開発」と「原子力開発」という2つの訳語が同居しているが、一般に「原子力開発」の方には平和利用のイメージが定着している。しかし小出氏は
「技術に平和利用も軍事利用もない。あるのは平時利用と戦時利用」
として、「平和利用を標榜して技術を持ってしまえば、いつでも軍事的に使える」とその危険性を示した。
それを受け、高校生から「ほかに原子力が推進される理由はありますか?」との質問が出ると、小出氏は「一番簡単な理由は、電力会社が儲かること。地域独占のため必ず売れる。そして現在の法律では、電力会社は必要経費とは別に、資産の何%という利潤を取っていいことになっている。資産を増やせば利潤が増える。原子力発電所は、1基作れば5000億円という巨大な資産になる。比例計算で儲けが懐に入るので、電力会社はやめられなくなった」と説明した。
■原子力の代わりのエネルギーを供給しようと考えてほしくない
「今はどのような研究をしているのですか?」との質問に対しては、小出氏は福島第1原発やチェルノブイリでの事故における環境汚染の調査などを例に挙げ、「原子力を扱うと、どのようなリスクを私たちが引き受けなければならないかを、事実として皆さんに示したい」と回答。今後の研究についても、「課題は山ほどあって、とても私の手に抱えきれない。もし皆さんの中に原子力に興味を持ってくださる人がいるならば、これからは原子力の負の問題を研究する学問が重要になってくると思うので、できれば若い人たちにもそういった仕事も担ってほしい」と述べた。
また小出氏は、若い人が将来やるべきことについて、「まずは原子力(発電)だけはやめる。そういう方向で政策を作っていってほしい」と語った。しかし、「だからと言って、今までの生活を支えるために、原子力の代わりのエネルギーを供給しようと考えてほしくはない」とも提言。
「今の日本はエネルギーを使いすぎだと私は思っている。都市計画の見直しなどをして、エネルギーをこんなに使わなくても豊かに平和に生きられるような、そういう国を設計してほしい」
と会場の高校生や日本の未来を担う若者へメッセージを送った。
・[ニコニコ生放送] 高校生の質問タイムから視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv68771254?po=news&ref=news#1:14:41
(安田俊亮)
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