国土交通省が低所得者向けに空き家を活用 家賃を一部補助へ

国土交通省が低所得者向けに空き家を活用 家賃を一部補助へ

低所得者向け住宅支援策の一環として空き家を活用する制度導入へ

国土交通省の統計によると現在の日本国内における空き家は約880万戸あると言われております。
このような現状において、国土交通省は低所得者向け住宅支援策の一環として、空き家を活用する制度を導入することになりました。
この施策は、補助金を出してでも空き家を減らせば、住宅ストックの活用になると考えたのだろうと思われます。
ここでまず空き家と言われるものがどのような家であったのかについて国土交通省のデータを紐解いて見ましょう。

このデータの通り、空き家の約半数が賃貸用住宅で、残りの大半はその他住宅という、いわゆる遠隔地や引き取り手の無い老朽家屋等が含まれていると思われます。

生活困窮の低所得者は制度を利用できない可能性が高い

もう一つの視点である『低所得者』に関してですが、低所得者の定義があいまいであるため、年収200万円以下の人数は国税庁の統計で約1000万人、しかし、その大半は女性であることもあり、パートや短時間勤務の方も当然含まれているのでその全てが一概に生活に困窮している低所得者というわけではありません。

ただ、何かのきっかけで失業、長期で所得が無い状態になると賃借している住居からの退去、それに伴い求職が困難になるという負のスパイラルに陥りやすくなります。

そういった人々のために、公的な支援もありますが似たような窓口が複数あり、また手続きが複雑すぎて一般にはよく知られておりません。

またそもそも低所得者の人たちはどこに住んでいるのかというと、住宅の入居審査の必要の無いレンタルルームやネットカフェ、友人宅等で寝泊りを強いられていることが多いようです。
実際に、ネットカフェ等に寝泊りをしている人たちは入居の際の審査や求職の際の面接をパスすることが非常に難しくなります。
したがって、たとえ家賃を補助したとしても本来の低所得者は利用できない可能性が高いことが予想されます。

今回の施策だけでは空き家の解消につながらないと予測

『空き家』を解消するというポイントだけであれば、国の成長率とも相関性のある起業を促すべくオフィスへの転用を認める、またソーシャルアントレプレナーなどに向けたコミュニティスペースとしての活用など、住宅以外の用途への転用に向けての補助金を活用した方がより補助金が活きるのではと思います。

また一方で『低所得者』に向けた住宅の提供というのであれば、安易な補助でなく上記公的なサポートの衆知や、貸主の審査や家賃保証といった、入居以前の問題にフォーカスした方が補助金も活きて参ります。
同時に現在の借地借家法であれば、借主の立場が強い為、貸主は入居者に対して審査等で非常にシビアになっております。
ですので、その補助金を借主に対しては信用の補助、貸主に対しては夜逃げや残地物に対しての撤去費用を負担するといった部分での補助がより良い資金の使い方になると思います。

結論として、現在の施策は単なる移転を促すのみで、空き家の解消に至らないのではと思われます。
したがって、単純な補助にしてしまうのではなく貸主・借主の入居前・入居中・入居後の問題をクリアにするためにその資金を有効に活用するほうが、より国としての活力に繋がるのではないかと考えます。

(今西 頼久/不動産コンサルタント)

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