この道40年ベテラン不動産屋が明かす絶対にマンションを買わない理由
ベテラン不動産屋が絶対にマンションを買わないとつぶやくわけとは?
「やっぱ地ベタがないとダメだよね」・・・この道40年、今日も事務所のソファーで不動産屋の社長がタバコを薫らしつぶやきます。
テーブルの上には差し掛けの将棋盤、コップの麦茶の氷がカタンと動きました。
相手は20年来の友人、マンションの管理組合の理事をしています。
仕事は隣で事務の子がしっかりやってくれるので安心して昼間から将棋できます。
明らかに安すぎる修繕積立金
国土交通省から公表された調査資料では、多くのマンションの修繕状況を実際に調査し、新築後30年間に必要となる修繕金額を明らかにしています。
その額、月額平均218円/㎡、標準的なファミリータイプの3LDK(80㎡)に換算して月額17,440円です。
さらに機械式駐車場があれば、1台あたり月額8,540円必要です。
各戸1台駐車できるとして計22,680円。毎月この金額を積み立てることが必要なのです。
なお、この調査は平成23年に実施され、昨今建築コストが高騰していることを考えると、物価変動分も考慮した必要な修繕積立金の額は、現在3割増の月額29,484円となります。
さて、マンションに住んでいる皆さん、お住まいのマンションの修繕積立金はいくらですか?月額5千円ですか?月額1万円ですか?全然足りないことに気がついたでしょうか?
将棋盤では「6七角成り」・・・金をとられそうなこの友人は、顔を赤くして盤面を見つめています。
最初から値上げが想定されている修繕積立金
ところでマンションを買うときに、たくさんの資料を渡されたと思いますが、その中に、「修繕積立金のシミュレーション」がついていませんでしたか?
購入当初は月額3千円の修繕積立金かもしれませんが、5年過ぎたくらいから緩やかに上昇していきます。
そして10年、20年、30年と曲線は放物線のように尻上がりになっています。
「ダマされた!」と思うのは早計です。
この資料はマンション販売業者が親切心で残してくれているのです。
「近い将来、修繕積立金が上がるんですよ。買った後はマンションの総会で皆さんで話し合ってくださいね。そのための資料は提供しておきましたよ。」と。
「はい王手」「ちょっとマッタ」「仕方がないねぇ。一手戻してあげるよ。」今度は玉をとられそうな友人は、老骨な不動産屋の親心にすがるのです。
有効な保全措置がない修繕積立金
修繕積立金は管理組合が管理します。
仮に毎月の修繕積立金は5千円として、その金額を払うこと自体、あまり気にしない人も多いでしょう。
しかし一棟40戸分だと毎月20万円、それが1年で240万円、10年すれば2400万。
その大切なみんなお金が、自主管理の名のもと組合の通帳に入っています。
理事長、会計担当者なら「あ~自由に使えたらなぁ~」と思って当然です。
事実、マンションの修繕積立金が横領・持逃げされる事件は今も昔もよくあります。
理事長として失格者だとわかった時点は、既に遅いのです。
うちはマンション管理業者が管理しているから大丈夫と思っているアナタ、それも甘いと言えるでしょう。
マンション管理業者が多くのマンションから集めた修繕積立金だって、同じ危険性があるのです。
友人は、不動産屋に歩も香車も飛車も角も全部とられちゃいました。最後に残った玉も丸裸。
この道40年、ベテラン不動産屋は知っています。
マンションは買ってはいけない。
こんな冗談はゲームの上だけにしたいものだと。
(中山 聡/一級建築士・不動産鑑定士)
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